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立場と繋がりという考え方

 は~い僕です。クロで~す。

 昨晩は気持ちのいい蜥蜴サイズの僕専用風呂に長湯してしまった。僕サイズのキングベッドでよく眠れました。僕専用の個室の扉のチャイムが鳴ったので、ヴュッカが来たのだと解り直ぐに向かう。寝過ごしてはなさそうだ。高級ホテルのスイートルームの奥の奥にある僕のスペースから出て来た。そこで目線を下げたヴュッカの目の前で僕は人化。危うくスカートの中を除くことになるところだったぜ。別に嫁さんだからいいのか? ……とも思うが、外と中での分別は必要なことである。

 そのままヴュッカに連れられて朝のカフェラウンジへ向かう。今回の朝食は人数が確定しているので普通に決まったメニューが人数分用意されていた。そして、既に3姫姉妹と使用人の皆さんが揃っている。……朝早いのね。

 そこで恐ろしい事を提案された。

 ある意味『トラマンタ帝国』のロゼリア皇帝よりもめんどくさい提案だった。しかもかなり本気度が高いので、下手な発言はそのまま本決まりとなりかねない。ここで勝手に決めたくないので、とりあえずは観光を優先し首輪をつけられるのは回避。これまで通り、判断は国家の中枢の皆さんに任せることにした。これは丸投げだろう。たまにはいい気がする。僕のウエイトを考えるとこれくらいが当然な気もするのだ。


「それでは、お気をつけて~」


 ヴュッカやイレーヌ、ユーリアなどの送り出しを受け、僕らは爆走魔道列車に乗って『蛇神神殿の迷宮都市』へ向かう。ここは一番疲れる。今回は男性が居ないので女性の買い物に付き合わねばならないという、地獄のような時間が待っているのだ。……僕、買い物は即決即断なので、長い時間を吟味されたり梯子するのはあまり好まないのです。

 到着。爆走トロッコの頃と比べると魔道具の機関部がより強化されていて、重量があるくせにパワーがあるので快適性も速度も上がっている。その爆走魔道列車から降りると、ヴュッカが連絡しといてくれたらしいクォアとリャエドが一礼。年齢のことを言っても特に怒らない2人。自覚があるというか、娘すら1000歳を超えており年齢の概念が薄いのかもしれない。僕の妻の母でもあるが僕の妻でもある2人だ。

 その2人に僕は逃がしてもらい。一日中ワーテルローに癒されることになる。蜥蜴姿で一日中彼らとのんびり昼寝。たまにはいいね。気持ちいいのでzzzz…………。


 ~=~


 僕が牧場で長い昼寝を始めたころ。爆走魔道列車から、とある親子が下車した。

 どちらも童顔ではあるが、娘と母親が最近では逆にみられる親子である。エリアナとセリアナだ。その目的は何の気なしにイレーヌが提案した、『結婚同盟』という国家間ではよく行われる政治的な物ごとを話し合うためである。最近でこそ、クロは妻を増やすことを否定しなくなったが、それでもあまりいい顔をしないのは変わらない。その点を鑑みて、一応セリアナやエリアナが中心になり妻候補の女性の厳正な審査と吟味は行われるのだ。

 包み隠さず言うならば、セリアナが妻を選別していなければ今頃彼は間違いなく、国中の女性と関係を持っていてもおかしくなかった。これは間違いない。

 そういう意味では救世主でもあるセリアナなのだが、反面セリアナはクロにとっては天敵である。この人は妻を増やすことには賛成なのだ。正しい分量という物は何にでもあり、クロの精神的にはあまり増やして欲しくない妻でも、彼女らからすれば援軍はいくらあっても足りないのである。確かに所かまわず関係を持たれては困るのだが、クロの場合はその事情も少し変わるのだ。

 セリアナが調べた限りで類を見ない生物である小さな蜥蜴の姿をした魔人は、この世界の中で明らかに飛びぬけている。なのでこの世界基準に合わせてもらう事も、少しずつ慣らしていこうとしているのだ。


「お初にお目にかかります。私が国王のエリアナです」

「私はエリアナの母で法務長官のセリアナです。この国は少々異色な政治形態をしていますので、文化の違いに戸惑われるかと思います。その都度ご説明しますのでよろしくお願いいたします」


 3姫姉妹が最初に戸惑ったのは、皇后という位置にあるだろう人物が法務長官をしている事。そして、蓋を開けてみればその法務長官も王女の肩書を持ち、クロの寵愛を受ける存在の1人だった。なお妊娠中。

 これまでの政治形態や文化の概念が全く通用しない。完全に新しい国との出会いに、3姫姉妹は終始当惑に追われた。仕方ないだろうとは思うのだが、3姫姉妹は最後まで理解しきることは難しかった。そもそも女王が複数いるという段階でもう理解が追いつかない。ならエリアナは女帝では? と、思えばエリアナは確かに女王のまとめ役ではあるが、政治決定の順位としては他の女王と等列なのだという。この国で飛び出ているのは、その象徴であり、絶対的な力を持ちながら……超マイペースな魔人クロだけだったのだ。

 これはクロ自身もよく理解していないが、クロの意見を修正する位置に女王が居る。そして、女王は全体の運営方針を持ち寄り話し合い決める立場にある。その意見を最終的にクロが受け入れるか入れないかで、現在のこの国は回っているのだ。実務を回している末端の管理官の最上位にクロはいるが、彼は超マイペース。本当に必要とされるタイミングでないと彼は口を出さない。これがこの国が独裁とならず、かと言って議会制の派閥から来る捻じれや腐敗を生まない構造だった。しかし、この議会集権とでもいうのか? この政治形態はクロという特殊な存在が居る故に生きる政治である。いつまで続くかはわからない。

 3姫姉妹はそれをセリアナに問う。


「その時の為の備えもしてありますよ。彼は人の文化を否定はしないのです。人は愚かでもある。愚かでない人は人ではない。どこかで破綻する。その為に彼が居なくなって、新たな形にシフトし易い政治を彼は目指しています」


 3姫姉妹はその言葉に興味を持った。セリアナは某国の滅びを予見した存在と、実際に滅んだ国のことを話す。彼女が元王族である事、滅んだ国がどうして滅んだのかを。避けられない事というのは何にでもあるのだ。なので、それを踏まえた上で考えて欲しいと、セリアナは真剣に3人の姫に伝える。

 人が集まる以上どうしても人の上に立ち、導かねばならない存在は出て来る。それが担がれてなのか、自ら登り上がるのかはわからない。……が、そういう者が居なければ社会性のある生物のコミュニティに将来性はない。不変の物は存在しないのである。クロや魔人は土地に繋がりほとんど無限の命を得ているが、それは土地に結びついて、土地が生きている前提であるのだ。土地が死んでしまえば彼らはまた新たな糧を得る場所を探して、何かしらの変化をするのだ。生きるために。それだけ長きを生きる魔人は土地と共に果てる者の方が多くはあるらしいが。そうやって不毛の地になっている土地もこの世界にはたくさんある。

 3姫姉妹はあくまで海を渡った先にある『サーガ王国』の姫である。

 この国に所属している訳でもないので、セリアナもそこまできつくは語らない。元々は王族に名を連ねていた女性として、その役目を持たねばならないこと。そこを見つめさせる程度の言葉を選んで、問うているに過ぎない。

 見た目こそ幼いが28歳のセリアナは既にいろいろな物を見て来た。美しい者はもちろん醜く見るに堪えない物も数多く。見たくなくとも見ねばならないのだと、セリアナは優しいのでまだその意識の薄い平和な国に生まれた姫達をさとしているのだろう。


「セリアナ様は……その、クロ様とのお子は次代の王族に推挙するのですか?」

「……この国の政治形態ではそれは好ましくないですね。私が推挙することはないでしょう。やりたいならば、本人が目指すならば、背を押す程度はするでしょうけどね」


 クリスティーナ姫の問う言葉にセリアナは自分の腹部をなでながら、優しい声色で告げる。案内もしながらなのでそこまで深くは互いに問いあう事はないが、王族に限らず立場のあった女性の覚悟に関してを話し合っているのだ。

 まぁ、それに関係ない事を話す場合ももちろんある。

 何組か居るのだが親子で同じ男性を夫にしている例がある事など。これは純粋な質問だと思われる。また、複数の妻を持つ男性が居る例は散見しているが、これほどまでの規模は珍しい。それに関してジェラシーというか嫉妬や贔屓などの不和はないのかなど。世間話の範囲としては少し違うが、比較的重くない会話も続く。全く関係ない会話をする場合もある。

 蛇魔人のリャエドは武人でもある。剣を佩いているロッテンハイマー姫は彼女と剣技のことについて熱く語り合っていることの方が多い。クォアにしても経済や商売、小集団の統率や運用に関して詳しい。カルカッテ姫はそちらの方が興味深いようである。しっかりと国の先を見据えるというよりは、我が道の歩む先を押し進まんとする気概にあふれた会話の内容であった。


「あなた方はまだ10代でしょう? ならもう少しは考える時間はあると思うわ。お父上様ともちゃんと話すことを勧めます。身分もあり、義務もあるけれど……。やりたいことをやれる事に変えて行けるかはあなた次第。国の未来ばかり見据えずに『自分』と『周囲』、そして、さらに視野を広げて『自分達』と『国家』の未来に結びつけることを勧めるわ」


 見た目はロリであるが、セリアナは間違いなくいろいろな物を見て来た元王女であり、公爵夫人であった女性だ。才気煥発で既に賢王と言われて差し支えないエリアナよりも、経験や歩んで来る中で拾ってきた物の重さとしては段違いだ。

 それは行動や言葉の一つ一つに重さを乗せ、その言葉は次代へつなぐ上で重要な鍵となって行く。それが例え他国の姫だとしても、彼女はそれを惜しみなく伝える。自分の娘の未来が明るくなりうるからだ。この明晰な頭脳を持つ法務長官との繋がりは、密かに決意を固めていた長女姫、クリスティーナの道を導いていた。


 ~=~


・成長記録→経過

クロ

オス 生後180日~185日

主人 エリアナ・ファンテール

身長130㎝

全長17㎝……身長12㎝

取得称号

~省略~


取得スキル

~省略~


 ~=~

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