本日も観光客の応対
いろいろと問題にも見舞われ、疲れ切った上で僕の屋敷に同伴人魚も含めて全員を招待。エルン率いる家精霊部隊に出迎えられて全員がビックリ。迷宮の中にこれだけの邸宅があることもそうだけど、この設備と客室の多さに驚いている。
実は家は前日に増築しておいてもらった。建築ジャンキーのエリアナが嬉々として作り上げた。
正面の庭園はとくに変化……してるね。ガーデンメイズがめっちゃ広くなってるし、オリハルコンの木の公園も噴水とせせらぎが追加されてる。あと遊具がいくつか。その上で、中心をとおる馬車を通せるほど太い道……って言うか馬車の昇降を考えた造りなんだろうね。でも、馬車でここに来ることはないと思うよ。その上でH型の巨大な屋敷の左右に渡し廊下を伸ばし、正面向かって左側に僕の個人施設。工房とか私室、寝室とかだね。小さめのロ型の屋敷だ。
本日のゲストは向かって右側にあるH型の本館より一回り小さめな同じ形式の建物へ案内する。客間ならぬ来客館だ。来客の全員が驚いていたよ。客1人に付き一施設。しかも4室構え。正面にリビング兼応接室。ファミリーバスと綺麗なトイレ、化粧室付き。自分で料理したいゲスト用にキッチンダイニング。最後に天蓋付きのキングベッドがある寝室。一応ファミリー仕様。
「何かウチの妻が拘ったみたいですね」
「奥方様が?」
「えぇ、正妻になるんですけどね。あの子は建築大好きなんですよ。拘りぬくので、ちょっとめんどくさいところがあるんです。まぁ、いろいろお楽しみください」
この館の食事は基本的にバイキングというか立食形式だ。いつも全員が居るとは限らないことと、人数が多すぎてテーブルと椅子の用意が面倒だから。一応、お年寄り用の席は用意されているが基本は椅子の用意はなく、テーブルに料理を運ぶ会食形式に最近なった。あと、僕用の超ミニテーブルだけある。目立たないところに僕が勝手に作っておいたんだよ。実はこういう施設、この屋敷のあちこちにある。僕が棲みやすいように作ってあるのだ。エリアナも気づいているけど、その辺は無視してくれている。むしろそれをどこに追加されるかが面白いようで、よく探している風景がみうけられた。
食事はこの土地では凄く美味しいと理解してくれているので、皆凄く食いつきはいい。酒もね。特にティガーはカサブランカにワインのことを物凄く聞いている。ティガーは赤ワインが大好きらしい。売って欲しいらしいが……。アレは確かボトルが白金貨で10枚が相場のだね。さすがにお目は高いが、たぶん君の年俸では買えないでしょ。なのでカサブランカに正直に金額を伝えさせ、僕とよしみを繋げばお買い得かもよ? と上手く乗せる。その隣で乗せられている友人をジト目で見ているエイズミー伯爵。彼も人魚の現地妻に纏わりつかれているので、もう逃げられないけどね。
「トラマンタの人は上手くこちらについてくれそう?」
「そうだね~。国だから全てをまとめては無理だろうけど。一部の人でもこうやって交流できるならいいんじゃない?」
「そうかもね~」
こんな感じで特に大きな問題もなく……はなかったっぽい。トラマンタの女性4名が僕の大寝室に押し掛けようとして、エルンの部下に拿捕されたという事件はあったようだ。あと、さっそく例の薬を使ったらしく、ティガーとエイズミーが一回りムッキムキになっていて驚いた。確かに彼らは有用なスキル構成だし、元から軍人気質でガタイもいい。薬の副作用すら乗り越えてらっしゃる。ヨルムンガンドに教えてやろ。良い被検体ができたと。ついでに現地妻の皆もツヤツヤになってるし、いい事づくめじゃないか。
こんな感じで『トラマンタ帝国』の代表観光客の皆さんは、僕が再び案内して『トラマンタ帝国』の帝都に帰還。この後、彼らが持ち込んだ物で一悶着も二悶着もあった後に、シェイドの管轄する旧グランデールから街道を通す計画が持ち上がることとなる。『トラマンタ帝国』との付き合いはこれからも長くなるのだった。共栄は実にいい事だ。
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そこで問題にはならないのだけど、『トラマンタ帝国』から情報が行き、僕が『サーガ王国』に招待された。行こうとしていたので、お土産と遅くなったお詫びの品も合わせて持参。王都フォートサーガにて歓待を受けております。王様に凄く気に入られた。今度の王様は40代のダンディズムあふれるおじさんだった。感じ的にはガトールさんとベルトールさんの中間。ナイスミドルと言った感じの落ち着いて腰の据わった名君である。最初は僕が魔人であることと。僕の外観と蜥蜴姿に困惑していた。けれど、僕の魔素反応を宮廷魔術師のご老人から言われてちゃんと認めてもらった。
それから僕が手渡したカサブランカ一族作の赤と白、ロゼの海底高圧下の醸造でかなり早く熟成したワインはかなり気に入ってくれたようだ。それをお土産にしたこともとても大きい。このワインワンセットで戦争が起きるかもしれないような物なんだとか……。『トラマンタ帝国』に先に向かった理由に関しても説明した。たまたま大暴走の関係で関わって、戦争の後処理を行ったからである。交戦は無くとも、近くで軍事行動をされたのだ。これからの付き合いを皇帝と話さねばならないのは当たり前なのである。その外交関係の職務を女王の夫自ら行う所を、かなり気に入ってくれたと言うのもあった。
そこで僕から提案。『トラマンタ帝国』からの使節と同じようにお試しの観光などどうだろうか? ということである。僕らは別に鎖国をしている訳ではない。良好なお付き合いができるならばそれに越したことはないのだ。それは『サーガ王国』の国王様も同じ見識らしく、貿易や交易に入る前に双方見ておくべきであると。まぁ、僕は既にここの観光は終えてるんですけどね。蜥蜴姿でささささ~っと。
「貴殿が魔人であるという事をつい忘れてしまう。その幼い姿は擬態なのかな?」
「いいえ、これは龍族や魔人の行う人化の術です。僕の人としての姿はこの姿なのです」
「ほほう……。となると、貴国には複数の魔人がいるのであるか……。恐ろしくもあるが、心強い隣人なのかもしれぬ」
話を聞いてみると、この『サーガ王国』はさらに奥地に存在する『バール魔王国』という悪魔族の国家に攻撃されているという。現サーガ国王、ジンベック国王のお爺様の代からとのこと。苦々しい表情だ。僕らと交友を必ずしも得られるとは考えない。リスクテイクというか、考えのまとめ方がとても上手い。そして、格上であろう戦力を持つ僕らに消して怖気づかない気迫。いいね~。気に入りました。お気にいりましたよ~。
ジンベック国王により選ばれた使節団という名の観光客を、再び騎竜ゴーレム4姉妹を動員して15名の全員女性の使節団を連れて行った。
使節団の構成は三チームからなる。リーダーは全員姫様らしい。……ジンベックのヤツやりやがったな。まぁいいや。僕が靡かなければいいんだよ。まず第一王女のクリスティーナ姫。一番堂々としていて視野が広く、頭の回転がいい美姫だ。次が第二王女のロッテンハイマー姫。溌剌としてまっすぐな姫。騎士団に務めているらしく、考え方は軍属寄りだ。不思議ちゃん感のある第三王女がカルカッテ姫。財務系や貿易、交易を担当しているんだろう。早いとこ観光を始めるため、『王祖の迷宮』のエリアナ王城の応接室で例により面会。10歳の女王に面食らった感じはあるが、ポーカーフェイスが凄い。『トラマンタ帝国』の時はまだ総立ち切らない人材をいきなり登用した感じだったからね。こちらは社交界で鍛えられた鉄面皮が揃い踏みってわけだ。
そのまま僕が応対して同様の見学コースを辿る。
時を経るにしたがって地が出始めた。最初に暴発したのはロッテンハイマー姫。複数の魔人が居ることは事前の情報として挙がっていたのだろうが、いきなりスルトが登場したからね。こちらも隠す気はないので、全面的に押し出していく。
「この子は僕の眷属であり娘のスルトです。ここ『豊穣の迷宮』の総支配人的な立ち位置にあるだけでなく、職人……最終防衛戦力でもあります」
「う~い。スルトだぞ。じゃ、観光農園からいこか~」
慣れが出て来たのか、スルトもするすると観光客メンバーを案内する。以前のトラマンタ組が最初だから、そりゃ二回目の方が回し易いはずだ。スルトはなんだかんだと勤勉で真面目な性格、物凄く実直にクオリティを求めるからね。いきなりカサブランカ一族を応対に出すのは反則な気もするが、姫様達は何とか顔面崩壊とまではいかずに『豊穣の迷宮』を乗り切った。
工芸方面に興味がないというか、知識不足が多かったこともありウケはそれ程良くなかった気はする。それでも財務関係に触るカルカッテ姫は、最後の方には顔が蒼白だった。彼女にはここで使われている素材の値段が解るみたいだからね。この国の強みというか、浮世離れしたところが伝説級のいろいろが普通に日常に溶け込んでるところだ。それ故に他国を寛容に受け入れられるところはあるし、余裕をもって接することができている。そういう所を僕らも見つけて、対外との摩擦を減らすように調節しなくちゃいけない。そのテストケースであるからね。活用させてもらいましょうか。
「お姉様、この国はおかしいです」
「それは解っています。ですが、精神を保つためにもあまり過大に受け取らず、『そういう物だ』と流しましょう。そうしなければ持ちません」
「そうであるな。ミスリルの剣が量産できるだと? くそっ……うらやましすぎる」
対外的なポーカーフェイスはできているみたいだけど、もう徐々に崩れ始めているね。今回は昼頃からここに来たので、今日は『豊穣の迷宮』の宿泊施設。スルト温泉のVIP施設に宿泊してもらう。別に『水源の迷宮』に移動してもいいんだけど、時間が凄く微妙なので。
僕も半日応対し、仕事をする。
アポロン組に連絡を飛ばし、隠密哨戒艇と無人偵察ゴーレムを打ち上げてもらい『バール魔王国』の臨海戦力を調査してもらう。あまりに『サーガ王国』が劣勢の場合は、地味な嫌がらせで加勢してやって欲しいので。敵船の船底にでも穴開けといて。
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・成長記録→経過
クロ
オス 生後175日~180日
主人 エリアナ・ファンテール
身長130㎝
全長17㎝……身長12㎝
取得称号
~省略~
取得スキル
~省略~
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