表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
159/322

トラマンタ帝国からの観光客

 その12名には身分を隠すことを推奨。まずは『王祖の迷宮』の会談エリアでエリアナ、セリアナ親子に面会する。女王が10歳の少女であるにも関わらず、一分の隙もないという事に恐怖を覚えたのはエイズミーだった。彼はそういう感覚に長けている。長年に渡り斥候や暗部としての職務についていた彼の勘は正しい。目の前に居る10歳の子供はただの子供ではない。数多の迷宮を治める類まれなる才媛である。ちなみに、最近よくある地雷を踏み抜いたのはロゼリア皇帝。エリアナとセリアナさんを姉妹と間違えた上、エリアナとセリアナさんを自己紹介される瞬間まで逆だと考えていた。

 女王親子との面会は流す程度の物だ。

 単純にこの人達を入れるけどいい? という形式的な業務である。移入が多いとは言え、異物を入れて問題を起こすことは好まれない。いくら外交業務を一挙に請け負う僕だとしてもこの手順は欠かせないのだ。そして、三人は驚きの連続である。最初に移動した爆走魔道列車を始め、既に魔道具の世代が数世代違うからだ。また、使われている素材に関しても、希少な鉱物が惜しみなく使われている。この国の底は全く見えないと、政治屋のロゼリアは驚嘆していた。

 その上で最初の場所。『豊穣の迷宮』ではいきなり魔人に出迎えられた。エイズミーは恐怖したが、相手の魔人は何事もなく飄々としているので、自分もその態度は表に出すわけにはいかないと歯を食いしばる。そもそもその魔人スルトはそんな細かいことはどうでもよかった。早く僕とお客に自分達の畑と工場を見てもらう事が重要だったからだ。


「この区画は観光農園。観光客に入場時だったり、係員に言って袋を買う。そこからは好きな物を詰め放題。持ち帰るのは構わないけど、ここで食べるののを勧める。新鮮な方が美味しい」


 今回の僕のお客全員がスルトに言われた通りにここで食べて行った。ただ、今回はいろいろサンプルを持って帰ってもらわねばいけないので、借用品としてレンタルの魔法の袋を貸し出した。作物を全て一種類ずつは詰め込ませる。まだ僕がその作業をしているので気づいていないけど、容量無限の物だよ。

 そのまま観光農園から研究棟をサラッと見学。見ても理解はできないけど、先進的な作物の研究をしていることは理解してもらえた。そのままスルトの案内で地下に続く洞穴へと向かう。これぞ天然の迷宮かと、エイズミーとティガーは楽しそうだが女性陣は少し怖がっている。……が、直ぐにその表情が全員変わる。ここの鍛冶師の使う道具は、素人が見ても解るくらいには高品質だからね。エルフの血を引いているハーフエルフのロゼリアには顕著に分ったはずだ。目の前に現れた追加の管理者の異常さに。随伴している部下や侍従の皆さん以外は気づいたか。ハイエルフのカレッサ。龍族のステンとクリス。ドワーフのゴードンさん。これだけ雑多な種族が入り乱れる土地はここ以外ないだろうし。

 『トラマンタ帝国』も多人種国家ではあるが、7割強は人族かハーフである。ここに居るのは純粋に伝説級の種族が多すぎるのだ。それから女性陣の目を奪ったのは、ステンとクリスの付けている彫金とカッティングジュエルの宝飾品型の魔道具だろう。宝飾品はその者の富と権威を表す直接的な物品。光物は多くの女性から人気の商品だし。

 それから男性陣はミスリルの包丁や工具に目を奪われている。ミスリルというと普通は名剣とか名のある武器、高級な魔道具に使われる素材。それを工具や調理器具に? と驚きが突き抜けている。アレは竜の解体包丁と骨の加工道具だからだよ。


「ここはスルやゴードン、カレッサ、ステン、クリスが管轄する工芸部門。細かく分ければいろいろあるけど、インゴッド造りなんか見ても解んないだろうし、見栄えも良くない。どうせならそのインゴットから造られる製品を見た方が面白い。製法はちゃんと教えるけど……普通に無理。ここ限定」


 スルトの言う通りなんだよね。まずミスリル7に対し、アダマンタイト2、ゼロフィムという魔石由来のかなり希少な触媒を1混合する段階で難しい。7kg:2㎏:1㎏という対比で混ぜても、重量は10㎏なのに体積比が10分の1くらいの量しかオリハルコンが手に入らない。……という錬金の実演を僕がしたところで、皆さん真っ青だった。それだけのミスリルにアダマンタイトを買うとなると、国が破産してもおかしくないからだ。ここは産出国だからできる。ゼロフィムだけはどうしても希少なので、僕やマタギ班が動員されて頑張るけど、なかなか集まらない。

 その希少なオリハルコンのインゴットをポンと渡されたエイズミーは蒼白の表情である。

 そのエイズミーの困惑など無視し、スルトは今日の見学のお土産として男女別に何か小さな物を手渡していた。あぁ、髪飾りと短剣ね。全部ミスリル製にしたのは気遣いだと思う。オリハルコンの実験の時、スルトが皆さんの表情を見てドン引きしていたし。

 それから魔道具製作の現場を見ても、皆さん絶叫を抑えるような表情をしている。魔道具の工具という概念がまずほとんどないからね。アレはいいよ~。精密だし、魔力さえ充填すればあとは整備師の力量次第で半永久的に使い続けられるから。


「ここはこんな物だね。坑道は遭難する恐れがあるからお客さんには開放してない。じゃ、また来てね」


 ~=~


 手を振るスルトや管理者の皆の送り出しを背に、『水源の迷宮』へ向かう。お1人様、物凄く顔が青い人が居る。水が苦手で泳げないらしいティガーだ。唯一の弱点らしい。風呂も苦手でシャワーも最低限らしい。……今日はあそこに泊まるから、その意識は変わると思うけどね。

 そして、『水源の迷宮』ではいきなりヴュッカとイレーヌ、ユーリアの出迎えだった。

 今回は軍属の皆さんも居るのでそれも加味してのことだろう。ヴュッカの独特な歌詠唱で水中適応の魔法をかけてもらう。この魔法は術者が解除しない限り効果が続くので安心だ。普通のお客さんはここで適応化薬を購入して、時間制限付きで入ってもらうがVIP待遇の皆さんは別である。意気揚々と水の門をくぐる女性陣と、それを慌てて追いかけるエイズミーと部下三名。その後ろでティガーを心配そうに見つめる武官達を先に行かせたが、踏ん切りの付かないティガーを左右からまだ未婚のスキュラと人魚が腕を抱く。デレっとした瞬間を見逃さず、2人と共にティガーは水の門へ突っ込まされた。


「おがばばばばば?! ……んえお? 呼吸ができる?」

「大丈夫ですよ。ふふふ。お客さんのように泳げないお方には、私達が手取り足取りお相手しますので♡」

「本日はよろしくお願いいたします」


 ティガーだけではなく、先に入った数人も似た感じの反応をテンポよくこなしたらしい。今回は本来ならば使われない水中の蛇龍、レイクサーペントを騎竜として水中の籠を引いてもらう。まず、高所から下方を見てもらう。これはVIP限定の観光様式だ。普通の観光客はここまで来れない。その上で、もう夕方に差し掛かっているので、今日は僕が王族が客を歓待する用の私設へ案内する。一応国王待遇なんでね。

 そこで女性と男性に別々の案内パンフレットを手渡す。まぁ、ヴュッカからの入れ知恵であるのだけど。

 食事も陸の物だけを見てもらうのはアレなので、全体量をかなり少なめにして水中限定の食事も堪能してもらう。意外と美味しいでしょ? ティガー含めた軍人の皆さんは食事よりも酒の質に驚嘆。エイズミーは元が貧民街の出身とのことで食事の違いを噎び泣きながら噛み締めている。暗部や斥候職の皆さんは彼が育てた生え抜きも多いらしく、似た感じの反応だ。顔色を変えなかったのはロゼリアだけだが、ロゼリアもかなり食事の品質は高いと感じているようで表情は明るい。

 また、食事中のパフォーマンスも気に入られた。ノスタルジックな薄暗がりな雰囲気に合わせゆったりとしたバックミュージックはもちろん、合間に入るダンサーによるパフォーマンスはかなりうけた。とくに男性陣に。一部は骨抜き状態だった。美人が多いからね。ダンサー集団は……。運が良ければこのあと会うと思うよ。どういう目に遭うかはその人次第だが。


「ここからは完全に男女別です。今日のリゾートスパは貸し切りですので気兼ねなくご利用ください。その後は外出の際は護衛のスキュラが付きますが、ご用命とあれば個人の指定も可能です」


 ヴュッカの応対の後、僕もついでに男湯で風呂を済ます。やはりティガーが二の脚を踏んだが、酒を飲みながら入れる風呂があると僕が指さす。……と、そっちに意気揚々と歩いて行った。現金なヤツめ。他の男性陣は全員普通にリゾートスパを堪能。その後、パンフレットに別出入口が設けられていて、そちらが順路になっていることをいぶかしんだけれど……。ダンサーにハートを撃ち抜かれていた軍人さんは思わぬ再開をして、人魚の彼女にどこかしらへ連れていかれた。……あれは朝帰りコースだな。

 エイズミーは呆れている僕に説明を求めて来たが、その前にエイズミー自身も人魚の美女達三人に両脇と背中を抑えられ、連れていかれた。僕は続けてヴュッカに女性陣をどこへ案内したかと、男性陣にあまりにも変なことをしないようにだけ釘を刺しておく。

 人魚族の唯一の難点がここだ。

 人魚族は男性出生率が異常なほど低く、繁殖の際にほとんどの人魚は陸の男性に伴侶を求める。つまり人魚の悲恋の殆どは人魚の生態が関係しているのだ。そして、人魚の最大の問題点は色濃いに燃え上がり、凄く執着すること。浮気しないことはいい事とも取れるんだが、愛が非常に重い。たぶん、彼らはいい繁殖相手として連れていかれたのだ。人魚とは元来そういう生き物だからね。それから個体にもよるけどそれなりに好色であることも確認が取れている。

 翌日。男性陣の全員がげっそりし、女性陣の全員が肌艶が良くなっていた。あ~、魔法薬のアロママッサージに行ったんだもんね。あそこも人気だよね~。僕はイレーヌやユーリアの相手で大変だったよ。疲れた。


 ~=~


・成長記録→経過

クロ

オス 生後175日~180日

主人 エリアナ・ファンテール

身長130㎝

全長17㎝……身長12㎝

取得称号

~省略~


取得スキル

~省略~


 ~=~

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ