トラマンタ帝国と近隣の事情
どうも~。女帝に縫い包み扱いされているクロで~す。
苦笑いのエイズミー。エイズミー・ローベント伯爵となった、エイズミーは元斥候兵の人族。人族には珍しく、先天性の優良スキルが3個もあり、それから伸びる技巧系スキルの数も凄い数だ。さすがは生え抜きのたたき上げと言った感じだね。その隣で変な物を見るような眼をしているティガー将軍。彼ももかなりいいスキル構成で先天性優良スキルも多く、武技に傾倒している傾向はある。将軍職を任されるだけあり統率能力に長けている。たぶん、頑張ればジョゼフィーヌと張れるんじゃないだろうか?
で、近況報告としてはやはり『アルジャレド通商連合国』が鬱陶しいという。
この国は内陸国であるので塩は岩塩鉱床に依存している。それで間に合ってはいるが、鉱床は無限ではない。海が隣接していない状況は苦しく。できればアルジャレドというあくどい爺商人の蔓延る元老会は即刻解散を願いたいほどらしい。長い事争いはなかったようではあるが、ついに『グマンナ首長連邦』と開戦。『グマンナ首長連邦』は蛮族の国とも言われ、戦い方が猟奇的だ。うん。知ってる。それゆえにアルジャレドは苦戦しているらしい。普通の行軍では数で圧さねばならないのに、あの独特の環境に負けて兵が万全とはならないからとのこと。『トラマンタ帝国』と『グマンナ首長連邦』の間には人類未踏の大森林があり、そこから帰った者はおらず、どちらも関わったことはないそうな。……あれ、あそこは『グマンナ首長連邦』の領地じゃないんだね。
「えぇ、あの森は我々人間ではどうにもなりません」
「それは我々獣人でも同じだ。臭いも気配も段違いに危険だと解る。近づかない方が身のためだろう」
「ふ~ん。ちょっと見て来ようか?」
「ま、まぁ、魔人のクロ殿だからな。無事に帰還されるだろうが今はこちらの話をしよう」
そうだね。戦話の近況から流れた『グマンナ首長連邦』近郊の話から逸れたんだっけ?
そういう理由とこの『トラマンタ帝国』と『アルジャレド通商連合国』の国境には古くに活動は停止しているが火山があり、今でも危険地帯であることは変わらないので、行軍ルートにはないとのこと。つまり、現状で火の粉を被るとしたら海戦になる『サーガ王国』だけか。
『サーガ王国』との取引はこの国は無いらしい。国境への侵入を硬くなに拒む『グマンナ首長連邦』の壁があるうえ、あちらの国はあまりめぼしい産物も無いらしいので。なら、『サーガ王国』の王族とも繋がりを持たなくちゃいけないな。一応伝書鳩通信はできているらしい。『グマンナ首長連邦』でもさすがに情報は欲しいらしく、完全に情報通信や意見交換を絶って居る訳ではないとのこと。領域の侵害を拒むだけで、話し合いにはちゃんと応じるらしい。国境をまたいで両陣営が並んでの青空会合は何度かあったんだって。
なんか面倒なことだね。
とりあえず、魔道具の説明に入る。この魔道具のアクセス権は僕との繋がりのある者に限られている。現状ではエイズミー伯爵、ティガー将軍、ロゼリア皇帝だけだ。皇帝の執務室にでも置いといてもらって、公的な話の時は今机の上にある大きな通話魔道具を用いて欲しい。それとは別に、ロゼリアにも私用の通信魔道具を渡しておく。この魔道具は音声通信ではなく、文字通信なので個人でも持つことが可能だ。卓上の音声通信魔道具はかなり必要な魔力が大きいので、人族では使えないのだ。僕らならデカくて手持ちしにくい事を除けば、割と扱いやすい。念話魔法より距離も長く飛ぶ。
「のう、クロ殿。貴殿はほんに魔人なのか?」
「そうですね。種族としては魔人で間違いないと思います。ただ、他の魔人とは比べ物にならない程に強いらしいですが」
「ふむ……。ならば、魔人は皆貴殿の様に可愛らしいのか?」
「……それは異なりますよ。僕の眷属は男女問わずに幼い外観ですが、大人びた魔人ももちろんいます」
「ほうほう……。ならば、クロ殿の女子の好みはどうじゃ? 見目は……良いに限るじゃろうが、豊満がよいか、細身がよいか……」
これ完全に政略結婚の流れじゃないかな……。なので先手を打つ。僕の妻が『いつの間にか』100人超えていた事。まだ増える予定がある事。見た目よりは僕とちゃんと話し合える妻を選ぶ事などを先に告げる。先に呆れを超えて虚無の表情をしたのが男性2人。エイズミー伯爵とティガー将軍だ。エイズミー伯爵は現在30歳未婚。いきなり平民出の軍人から貴族なのだ。仕方がない。ティガー将軍は男爵家の5男で、現在30歳の独身。実力だけでここまでのし上がってきた生粋の叩き上げ。ちなみに、2人は同期入隊らしい。二等兵時代からの付き合いで、今現在は道が違ってしまったのだろうが、仲は良いらしい。
三十路男達は何を考えたか判らないが、いろいろ知っているのだろう。僕に哀れみの視線を向けてくる。そんなに悲観する様なことも無いけどね。
そして、その部屋に控えていたメイドさんすら、驚愕から抑えにかかる発言が飛び出す。僕の妻、新たな妻として立候補したいと言い出した。ありがとうメイドさん。違った。……止めてくれた訳じゃないらしい。皇帝が身を差し出す必要はないので、貴族の名家から出せばいいと言う。自分が行くからと……。
僕は目の前の2人に救いを求めたが、2人は頭を振るばかりで目が虚無に満ちている。なんだろう。彼らは女性に酷い目に遭わされたりしたのだろうか? 諦めて貰えるかは分からないが、蜥蜴の姿に戻りローテーブルの上に立つ。……あ、ヘタこいたみたいだ。
「きゃ、きゃ、きゃ、きゃわいぃぃぃぃぃぃぃぃ!!!!」
先程から完全に本性をさらけ出していた皇帝はいいとして、お目付け役っぽい3人のメイドさん達まで殺到してきたので思わず男性側に逃げた。そしたら今度は2人からかなり警戒された。……まぁ2人とももと軍属と現役軍人だもんね。それが正常か。
とりあえず、僕は元にもどる。今のが僕の本当の姿で、人間の姿は魔人としての能力的側面だと説明。
人間の姿の方が付き合いやすいとティガー将軍は素直に教えてくれたので、人の姿に戻っている。それにまだ今日ここに来た目的が一つ終わっていない。僕がここに来ていることで判るように、『トラマンタ帝国』は友好的?に歓迎してくれていると思われる。畏怖が多いとも思うけれど、腫物扱いで崇め奉られているという事もないので僕もやり易かった。それとエイズミー伯爵には理性的に僕らの中継をしてくれたお礼という意味と、……大使という意味も混ぜて1日観光してもらおうと考えている。
依然として僕らの本拠地『エリアナ女王国』の本土は対外貿易や交易は一切ない。『アルジャレド通商連合国』が今のところ一番近い隣国ではあるが、あまり通称面で良くない影響があったことも関係している。その上で『トラマンタ帝国』の大使として人選は任せるが、貿易や交流を考える使者を数名選び、1日の滞在をしてほしいのだ。
機密エリアに入ってもいいけど、心臓がいくつあっても足りないだけなので、思い切っていくつかは解禁するつもりでいる。現状の『トラマンタ帝国』ではどうあがいても『エリアナ女王国』と喧嘩をすれば怪我が増えるだけに終わる。
「観光だけでもいいですし、そういう詰めた話……軍事同盟の話をしてもかまいません。こちらは未だにどの国とも密な関係にはないので、より取り見取りですから」
「ほ、ほう……。本当に観光目的だけでもいいのか?」
「構いませんよ。エイズミー伯は元軍属でしょうから問題なくとも、一般人には刺激の強すぎる産業も少なからずあるので」
「わ、解った。今回は私とこのティガーだけではダメだろうか? 要人を入れるにしても先に下見だけはしたいんだ」
この人まだ自分が斥候兵の隊長だった時の癖が抜けてないね。貴方も既に上位貴族の仲間入りをしているんだけど。となりのティガー将軍からすぐさま訂正が入る。現在のエイズミー伯爵は軍属ではなくなったが、斥候や暗部の総指揮官待遇として『軍閥』に属する上級貴族だという。そこにロゼリア皇帝からも注釈が入る。ティガー将軍も今回の戦略的撤退における明晰な判断能力と、エイズミー伯との関係性を鑑み同じ伯爵になるとの事。寝耳に水のことにティガー将軍も目がまん丸だ。
度重なる緊急の移動や移籍、昇進で少々バタついて手続きが遅くなっているらしい。実際、今回の件で少しでも判断に詰まっていたならば、軍が大損害を受けたかもしれないことは言うまでもなかった。その上でティガー将軍の判断はこれ程なく迅速で、追いつかれた後詰の部隊に単騎で駆け付け、何頭もの魔物を倒したという。お~、やるね~。
確かに普通の人間種の実績としては凄まじい勇猛さだと思う。英雄として祭り上げてもいいくらいには強いだろうね。
皇帝からの直接の好評に、感涙といった感じのティガー将軍。見た目通りの体育会系な正直男って感じだ。まっすぐ実直で真面目な将校といった感じだもん。その裏ではエイズミー伯爵が大暴走の行方を追い、自軍に被害が出ないように終息までを見届けた。通常の士官ではそのような判断はしない。おかげでアルジャレド軍の被害状況や、蛟との交友までもが得られた。そして、その蛟からエイズミー伯爵が賜った物というのがこの国では波乱を呼んだ。これで彼が英雄視されてもおかしくない証拠ができあがってしまう事になる。
「あ~、やはりオリハルコンは伝説上の金属ですからね」
「その口ぶりではクロ殿は生成方法をご存知なのか?!」
「知っているもなにも、そのオリハルコンのインゴットを作ったのは僕ですから」
「「「はい?」」」
「それも含めて……皇帝もお忍びでどうでしょうか? ここに来ていることである程度理解していただけているかと思いますが、僕はエリアナ女王国の外務担当官のような物です。僕の一存で3人と護衛の10数人くらいなら観光くらいは問題ないです」
その場で一番早く食いついたのはまさかの皇帝だった。メイドが止めようとするが、オリハルコンの製法のことや先進的な文化を見なくてはいけないと頑として受け入れない。結果的に来る人数は皇帝とその護衛兼侍従の戦闘メイドが3名。エイズミー伯爵と部下3名。ティガー将軍と部下3名の計12名だ。
僕はその場で眷属の4機の疑似人間型生命体を転送。目の前に跪いた状態で現れた4人に多少警戒はあったが、僕の眷属と言って受け入れてもらった。明日の早朝から飛ぶ。先に全員に吐き戻し袋を手渡すのを忘れないようにしておこう。
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・成長記録→経過
クロ
オス 生後175日~180日
主人 エリアナ・ファンテール
身長130㎝
全長17㎝……身長12㎝
取得称号
~省略~
取得スキル
~省略~
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