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罪には然るべき罰を

 あんまり気分はよくなかったんだけどね~。どうも~今日は元気のないクロです。

 なんでもセリアナさんは昔も少し法務関連に触れていて、その頃は『冷血姫』などと呼ばれていたらしい。『法の番人』と呼ばれるに至ったのもその後で、地頭というか…魔人も驚く超記憶能力に、回転の速い頭で弄する策は並みの者では覆せない。そのことから一時期を置いて、セリアナさんは法務系の場所から遠ざけられたらしい。あまりにも厳しすぎて、切り捨てすぎる。国を回すことが難しくなるのだ。

 そのセリアナさんだが、彼女も成長したと言うかいろいろな事、人を見て来たことで変化があったんだろう。

 別に僕は悪魔族の彼らが死のうが生きようがそれほど気になどしない。どちらかと言うとエリアナのストレスになる方が深刻なので、僕はそういう策を練っていた。人死にを嫌うというか、自分の国でそういう事が起きるという事を今回は体験できた。それでいいんだ。必ず殺さなくてもいい。

 セリアナさんもその辺りを汲んでくれたのと、僕が持ち出した労役囚人刑の内容に魅力を感じてくれたんだと思う。利害の一致は大切なんでね。


「でも、クロちゃんからあんな提案が出るなんて思わなかったわ~」

「そうですか?」

「えぇ、悪魔族の労役を戦時労役に使うなんて。確かに今の状況ではお誂え向きよね~」

「それだけじゃないでしょ? 一応倫理の範囲を守ってきたので、開発が難航している試薬の検体だとか、僕や魔人、一部の龍族、魔族の本格的な訓練相手とか。通常の人族ではあまりにも酷ですが、彼らなら十分でしょう」


 他にもいろいろあるけれど事細かに上げているときりがないので。

 悪魔族の皆もメッサーリアへの監督不行き届きと言う件について問われると、自分の行いが回りまわって返って来たのだと一応理解してくれたらしいからね。全員が全員理解した訳ではないようなので、その内何人かいなくなる可能性は高いけど。とりあえず、元魔王メッサーリア含めた然るべき立場の悪魔族を中心に、労役囚人刑のチョーカーが付けられて就労に従事中。

 やったことがやったことなので、それなりに厳しいことでもやってもらう。それが罪に対する罰なのである。規律ある場所には必ず存在するものだ。


 ~=~


 あまりにも暗い話をしていてもしょうがない。そんな時に僕の所に『トラマンタ帝国』のエイズミー伯爵から連絡があり、繋ぎを取って欲しいと言っておいたティガー将軍との繋ぎが取れたとのことで。スミオに乗って『トラマンタ帝国』のこちら側の外縁都市、『アザル・ダマカサン』という要塞都市で集まった。そうそう、この獣味の強い強面のおっさんだった。間違いない。

 獣人族はその個々人によって大きく外観が異なる。

 ティガー将軍は物凄く毛深いタイプで、手足が人に近いことを除いてはほとんど獣の形質というタイプだ。人族至上主義国家では見られないタイプの獣人で、彼のような獣人が居るとなると『トラマンタ帝国』はそういう所にも一応の理解が見られるのだろう。

 僕が居ると知るやVIP席で跪く2人だけど、別に今日は一私人として来ている。こういう例を出すのはどうかと思うが、隣家の友達の家に遊びに来た間隔だ。確かに政治向きな話もしなくてはならないので、完全に公人の羽織を脱ぐことは叶わないけれども。


「二人とも、お久しぶりですね。楽にしてください。あまり騒ぐと逆に怪しいので」

「そ、そうですな」

「お気遣い痛み入る」

「そちらも我々との付き合いで少なからず変化が起きた事でしょう。僕は明確に敵対されるまでは傍観、交信のスタンスは崩さないつもりです。……公のお話はここまでにしましょう。できれば、トラマンタの事と言うよりは、その周辺事情を知りたいんです」


 エイズミー伯爵は先日まで斥候部隊の隊長で、ツェーヴェがたまたま繋ぎに使ったせいで専属の国交大使にされたようだ。荷が重そうで気の毒ではあるが、こういう慣れてない相手の方が僕としてはやりやすいので放置。ティガー将軍に関しても似たような物で、これまでよりも大きな範囲を指揮させられるように配置換えが起きたらしい。簡単に言うと、将軍にも上中下とあり、その下から上に急な昇進を果たしたことになる。やっかみも多いだろうが、事実この人は優秀だし、僕には使いやすい存在なのである。こちらも放置。

 まずはエイズミー伯爵に先日の事を聞いておく、『僕が聴ける個人的なお願いを聞くぞ』というヤツだ。

 彼も考えていてくれたようで、僕とのつなぎ役の者を数人、『大使館職員』として受け入れて欲しいという事だ。……それは個人的なことではないし、どの道やる事なので次。……などと何度も聞くのだが、公人の考えがどうしても抜けないので、例を出した。上手い飯が食べたいとか、魔道具が欲しいとか、酒が欲しいとか。エイズミー伯爵ではなく、ティガー将軍の方が酒に覿面に反応したが、今はエイズミー伯爵のことだから。

 まぁ、立場もあるのでそう簡単でもないか。賄賂もらったとかで彼の首が飛ぶのも本意じゃない。なので、こういう提案をしてみた。機密エリアは無理であるが、ウチの入れる場所の観光をしてはどうかという事だ。あまり多くを連れてこられても困るが、大使館を作る場所の相談などもしなくてはならないし。あと、ティガー将軍にもエイズミー伯爵と同じ魔道具を手渡し、それよりもかなり仰々しい大ぶりな魔道具を机の上に置く。


「こ、これは?」

「そちらの帝国にプレゼント。君達は比較的理解が早いからね。これから君達の国の忌地……魔境を僕ら魔人が占拠してしまうと思う。その国土分の補填かな? 任命制の皇帝だから、国家へのプレゼントさ。本格的な通話魔道具」

「わ、解りました。大使としてしかと……」

「いや、僕も行くよ。これは僕が居た方がいいと思う。エイズミー伯爵とティガー将軍の立場をしっかりとしておく必要もあるでしょ? 間者扱いされては立つ瀬もないだろうし」


 ビビッて居るような、ホッとしているような2人と今日は飲み明かした。僕はジュースだけど。僕のことは気にせず飲んで欲しいと言っておいたので、べろんべろんになるまで飲みに飲んでいた。そりゃ一隊の隊長から伯爵は異例過ぎるし、軍みたいな凝り固まった場所での急な昇進で波風は大きかっただろうて……。その2人の愚痴飲みの原因である僕が慰めるというカオスな状況ではあるけど、その晩は高級な宿に2人を放り込み。僕も宿でスミオとツインルームを取って就寝。

 翌日、いきなりアポが取れる物なのかと思って、『日を改めようか?』と言ったが、2人はそのことは大丈夫と言うのでエイズミー伯爵の後ろをいつもの服装のままついて行く。途中でボディチェックされるのかと思いきや持ち物検査すらなく。黒い外套を纏う不審な子供がそのまま宮殿に通された。……凄く笊だな。

 僕の表情から察したのか、ティガー将軍が小声で教えてくれた。

 魔人に不審がってるそぶりでも見せて、敵対されるなんてなれば国が傾く。『トラマンタ帝国』は嘘かホント化は知らないけれど、1000年以上前に魔人の暴走を神獣が抑えたという伝説があるらしいし。僕はその蛟の関係者である上、それよりも上位の魔人である。それだから『トラマンタ帝国』としては下手な態度には出られないという事だ。それに魔人が本当に国に害意があるならこんなところには来ないだろうしね。


「中に入ります。私とティガー将軍は皇帝の御前ですので跪きますが、クロ殿はそのままで。儀礼的な物なので直ぐに実務形式の話し合いになるように取り計らいます」


 エイズミー伯爵からのよくわからない指示にとりあえず頷いた。それは中に入ってよくわかった。そういう事か、普通より一段高いところに居るはずの皇帝が、玉座に座らずに跪いて頭を垂れてますね。で、僕の身長が足りないので、即席のお立ち台が用意されました。

 そこから本当に儀礼的な挨拶を10分程行うと、僕がこういった無駄に遜り過ぎる態度を嫌う事を説明。普通の謁見の状態に戻り、僕から例の魔道具を送ることをエイズミー伯爵に伝えてもらう。また、これは僕のアドリブだけど、2人はたまたま関わりが強いだけでエリアナ女王国とは繋がってないということをかなり遠回しに伝えた。2人を貶めたバカが出たら、国交に差し障りが出るだろう。つまり僕が動くぞ? という脅し付きで。

 そこからは一度解散し、応接間で今代の皇帝……女帝との直接会話が始まる。普通は皇帝との直答なんてほとんどの身分の人間には一生ないことだ。まぁ、言っちゃえば、僕も向こうでは象徴なんでそれに類する存在?なんだとおもうけど。割と普通に蜥蜴姿で街を闊歩している象徴ですけどね。割とその辺をてってけて~っと動いているので、珍しいとも言えないはずなんだけど。


「クロ殿で相違ないな? 自己紹介が遅れて申し訳ない。私はロゼリアという」

「ロゼリアさんでいいの? 皇帝陛下にかなりフランクな接し方になっちゃう気もするんだけど」

「それは問題ありません。この国は皇帝一族は存在していません。種族毎の持ち回りのような物なので、半ばそのような物ではありますが。ロゼリア様は人族の皇帝家の中でも理解の深いお方ですので」

「ありがと。まぁ、それならいいんだけど。……、ねぇロゼリアさん、近いんだけど」


 うん。ロゼリアはまだ20代半ばという女性だ。その20代中盤程の女性は僕へ詰め寄り、物欲しげに僕自身へ手を伸ばしている。魔道具ではなく。魔道具の方は完全に忘れてる顔だ。こういう扱いは慣れているので、あまりにも変なことさえされないなら受け入れているが、まさか皇帝の膝の上に座る事になるとは。130㎝はあるからそれなりに大きいと思うんだけど、そんな事は関係ないとばかりに僕を抱っこするロゼリア。

 話にならないので、エイズミー伯爵とティガー将軍と政治向きな話へ舵を切る。


 ~=~


・成長記録→経過

クロ

オス 生後175日~180日

主人 エリアナ・ファンテール

身長130㎝

全長17㎝……身長12㎝

取得称号

~省略~


取得スキル

~省略~


 ~=~

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