魔族という存在について
エリアナ女王国でも初期は問題になりはしたが、僕や僕の子供の眷属化することで溶け込んで行った『魔族』達。やはり、人間族は外観での忌避や差別が強いのは言うまでもないが、力による恐怖心も強いようだ。それが自分達に降りかからず、共存を望むと言うなら現金なことに掌返して友好的になるんだけどね。
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最初に茨の道を歩んだ種族の1つが『鬼族』だ。僕が雑多な角を頭部に持つ人型種をまとめただけの統一感のない種族。今では僕の子、シェイドの眷属となった皆、元々魔物と混同されていた『鬼族』の殆どが人と何ら変わらない外観を手に入れたので差別はない。ただ、区別はしている。『鬼族』と僕がまとめた初期移入の魔族は明らかな体格差があり、住居の差や仕事における向き不向きが顕著だったからだ。それに比して食事量や衣服の大きさなど、今でもいろいろ考えることは多い。
忘れてはいけないもう1つの種族、『虫魔族』。虫魔族はこれすらかなり大雑把な括りで、本当は獣人族レベルでモデルの数がある。彼らもイオの眷属化により、殆どの者が人と変わらない姿を得た。一部変化の弱い種族も居るので、全てが受け入れられていない現状はある。だが、元々保守的な性格の彼らはとくに気にしていない。部族単位での付き合いやその程度でも問題ないのだと言う。
「にしても増えたね。魔族」
「ですな~。おいらもここまで増えるた~おもわなんで~」
隣で話しているのは『鬼ヶ島』の現地住民。現在僕は人間の領域との最前線である『鬼ヶ島』に居る。最初、ここの管理を任せたアポロンもこちらとの種族的摩擦を警戒して、アイツらしからぬ慎重な扱いだった。しかし、それは杞憂の一言に沈んだ。
僕らの領地に『鬼族』と大別して呼ばれる魔族の存在が居ることを知った『鬼ヶ島』の住民は、逆に積極的な交流を望んだのだ。シンパシーのような物なのだろうか? 僕にはよくわからなかったが、鬼族が交流を持ったことを皮切りに、ドワーフやエルフ、獣人族……他地方からたぶん『鬼族?』だろう移入種族が鬼ヶ島へ続々と集まったのだ。
牛頭で人間の体と言うのは変わらないのだが、牛頭族よりも人間味の強いミノタウロスなどがその代表である。獣人族とも括れそうなのだけど、彼らはどちらかと言うと鬼ヶ島を好んで移入先にしている。もちろん、『豊穣の迷宮』で牧歌的に過ごす者もいるけどね。他にも雑多な『魔族』と呼ばれる種族が移入して来て、現在も急ピッチで地下に居住区画を造成しているようだ。ここはアポロンに任せておけば問題ない。
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そして、第二期組となるのだろうか? 今では僕の眷属となった二種族が様々な場所に住んでいる。本来固まって住んでいるんだろうけど、仕事の都合上その方が便利であるからだ。それに元来は迫害から逃れる意味でかたまって奥地に住んでいただけで、コミュニティがばらけても問題はない種族なのだろう。
先に移入したのが『淫魔族』だ。男性がインキュバス、女性がサキュバス。夢魔とも呼ばれ、悪夢を食べることもあると言うが。そういう不安定な生活などよりは安定した生活を送れる現在の生活を気に入ってくれているらしい。淫魔というといろいろな書物に『悪魔』として記されるがれっきとした人型種族で、魔素との親和性が多少強い程度。それならば魔人の方がよほど悪魔に近い。淫魔は戦闘には適さず、魔法は得意ではあるが細かい制御が得意なだけ。大規模な魔法は苦手だ。魔素の吸入量もしれている。なのでメインの仕事はハウスキーパーやウエイトレス、ダンサーや商店の売り子など。あと少数ではあるが魔道具工房に居たり、調剤所にも居る。
それから数名の実力者は僕の専属暗部として活動してくれており、主に裏黒い情報の収集とまとめをしてくれているある意味万能種族だ。性欲が強いのは難点だけど。
「それにしても淫魔ってこんなに居たんだ……」
「人族の迫害を受けていただけで、総数はそれなりに居ますよ。それでも人族や獣人種の10分の1にも満たないでしょうが。ここは住みよいので自然と集まるんです」
今はサキュバス族の僕の妻でもあるセレナーデに近況を聞いていた。セレナーデは気配遮断が得意な娘で、斥候職と事務を兼業してもらっている。今日はそのどちらでもなく、最近移入が多く多忙な母親のオフィリアの代理で僕にいろいろ話してくれているのだ。
そのセレナーデが説明を終えると、一緒にいたもう一つの移入種族の娘が頭を下げる。ここからは彼女の番だからね。
第三期移入の魔族となるのか? 吸血鬼族だ。彼女らは古来から人族と険悪。理由はいろいろあるが、一部の傲慢な者がやらかした結果らしい。その中でも穏健な吸血鬼がここに次々と移入している。その案内役は最初に移入したカサブランカ一族のアリアだ。
吸血鬼は……うん。その……思っていた種族とほぼほぼ真逆だった。一緒に居るサキュバスのセレナーデはけっこう露出の多い、ピンク地に赤のレースがあしらわれたドレスワンピースで華やかな印象なのだけど……。アリアは『ザ・作業着』という服装だ。最初の挨拶の時は深窓の令嬢感があふれていた吸血鬼姉妹は全員こんな感じ。というか、吸血鬼の全員が基本的には農業用のツナギ姿に麦わら帽子、ゴム長靴という『ザ・農家』って感じの種族だった。
「今日も絶好調だな。アリア」
「うん。今日もトマトたっぷりのスープを食べたからね。元気いっぱい」
吸血鬼も塁に漏れず次々に移入が見られるのだが、移入当日はきっちりした燕尾服やドレス姿なのに、次の日には作業着に着替えるんだよね。主業務が農業。6割方トマトとワイン用のブドウだけど。他の作物も凄く上手に作るし、ハーフフットと仲が良く交流があるらしくて、最近はよく一緒なのを見る。で、今回僕が改めて魔族を見て回っているのには理由があるんだ。
これまでの種族の皆が穏健で、主産業と言うか業務が戦闘から離れた種族だったんだけどね。今回移入してきた種族がガチの戦闘種族だったから、ちょっと扱いに困ったんだよ。しかも複数族で纏まりもない感じ。それで仲介役に元々居る魔族で代表ができる全員に声をかけたんだ。結果は全種族交流なし。こういう散々たる結果に終わった訳だけど。……まぁ、龍族の皆曰く、僕が居ればどの種族も従属するだろうから気にするなとのこと。
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新加入で一番数が居たのが『悪魔族』だ。
御伽噺に出て来るようなおどろおどろしい見た目の者はおらず、どちらかと言うと蝙蝠の翼が生えた人間と言った方がしっくりくる外観。あと頭に統一感のない角がある。一角だったり、巻角だったりと雑多。全員が見た目の違う鎧を装備しており、各部族間でも口論になるくらいに血気盛ん。『鬼族』や『虫魔族』くらいモデル差があり、種族の組成も異なる。代表的なのが『グレムリン族』小型の悪魔族で身長も人の子供より少し小さい。全員が軽鎧に三又鉾をもっている。次が『悪魔族』、『大悪魔族』などでこの3種族が多い。皆疲弊しているから、人間と何かあったんだろう。
そして、ここからがちょっと変わった種族。
『石像悪魔族』まさか生きてる種族にそんなのが居るとは思わなかった。ホントに驚いてる。『古代悪魔族』で括り的には神代龍族と似た感じの古い血統の悪魔族らしい。最後……これはマジで驚いた。一応謁見の間に全員女王が居るから跪いてくれているけど、まさかの種族『魔王族』がいらっしゃったよ。
古代悪魔族の中でもとても強い力を持ち、神より直接生み出された種族とも言われている。人間族からは邪神の使途と言われ目の敵にされており、攻撃にさらされているとも聞く。鑑定でちゃんと調べたけど、善悪で言うなら『善』だね。
特に世界征服とか人類抹殺とかの面白おかしいイベントは無いみたい。それから各族で喧嘩はしているが、一様に全員がビビりまくってる。たぶん、僕がいつもよりも魔素の漏出を抑えていないからだと思うけど。魔王さんはさすが。この程度ではまだ大丈夫っぽい。その後ろのお姫様もね。
「魔王殿、楽にしてくれ」
「うむ、ありがたい。では自己紹介させてもらえるかな?」
「お願いする」
魔王さんはまだ余裕があるからだろうけど、僕に威圧できるくらいには元気だね。なら、後ろで僕にメンチ切ってる女の子への脅しも兼ねてちょいと意地悪するか。
僕が魔素の漏出を強めると、徐々に魔王さんの表情に変化が出る。最初は冷や汗、次が脂汗、青くなり、今では気を保つので精一杯なんじゃないかな? 後ろではお姫様が真っ白な表情でガタガタと震えているし。ちょっと虐め過ぎたか。魔素の漏出を止めて彼らにかかっていたプレッシャーを解く。言うてこれは『漏出』を抑えているだけ。通常、魔物は体内で使いきれない魔素を無意識に排出するように体ができている。そうしないと魔素内包量が直ぐに満杯になって体に悪影響が出るから。それは僕ら魔人も同じ。ただ、魔人と魔物の大きな違いはその桁違いな魔素内包量だ。単純な比較はできない。個体差が大きすぎて。近接戦特化の魔人なら魔素の内包量は魔物の数十倍。魔法や術戦闘特化なら数千倍から数万倍とかも居る。ヨルムンガンドが高位魔物の地竜の数億倍だ。僕はそのヨルムンガンドより少し高い。
その僕が魔素を解き放って『放出』すれば並の魔物ならプチッと潰せる。
今目の前でギリギリ意識を保っていた魔王さんくらいなら、本当に赤子の手を捻る感覚で押しつぶせる。確かに『魔を統べる者』というだけあってかなり耐えたと思うけど、僕や僕の子共達を相手にすればその程度の存在という事だ。
「それでは魔王殿。ご挨拶願えるか?」
「は、はい。わたくしはメルモンロゼ・メッサーリア=デーモンロード。後ろはわたくしの娘、ミゼラでございます」
後ろに居る各族の族長は気づいてたね。僕が魔王さんを力で圧倒したことに。ほとんどが顔を真っ白にしてびくびくしている。一部血気盛んな連中が魔王さんの態度の急変を訝しんでいるが、アレだけ濃い魔素を感知できないなら実力はたかが知れている。龍族の皆がいう事は正しかったようだ。さて、どうしたもんかね。
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・成長記録→経過
クロ
オス 生後170日~175日
主人 エリアナ・ファンテール
身長130㎝
全長17㎝……身長12㎝
取得称号
~省略~
取得スキル
~省略~
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