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ツェーヴェの実力

 この『魔の森』という土地は何らかの要因で魔素が滞留する土地柄から、外部で出る魔物や魔獣と比べると非常に危険度が高い。その為に基本的に人間は近寄らないのだけど、ここ最近はその人間の接近が多発している。

 それもそのはず。ツェーヴェの情報がエリアナとリリアさんの零落後のゴタゴタとかみ合い確証を得た。この魔の森に道を作る作戦の第一段階に着手しているらしい。冒険者を雇い、浅層部から中層の間を探索させているらしい。けれどそれ以上冒険者が侵入していない。……というか、できないんだろう。僕も新スキルの試しも兼ねて最近はツェーヴェの『森の主』の権能と合わせて整合性を優先している。今ではエリアナの迷宮もあるし、スルトもいるのだ。簡単にここを見つけられるわけにはいかない。迷宮は人間からすれば、莫大な利益を生み出す資源の宝庫。ここが割れれば土足で踏み入る人間が増えることになる。僕らの住環境が悪化することは目に見えており、それを許容するつもりは一切ない。

 特に、森の中で悪事を働く者は僕で処理してきた。けれど、今回はツェーヴェに退くように言われ帰還。


「お帰りなさい、クロ。今回のは強そうじゃなかったかしら?」

(うん。これまでの雑魚とは雲泥の差だった。オーラが違う)

「そうね。たぶん、上級冒険者ね」

「上級冒険者ッ?!」

「そうよ。アイツは私が相手をするわ。ふふふ、腕がなるわね~」


 そう言うや否や、ツェーヴェはラックに掛けてあった僕が製作した長杖、『蛟』を掴んで出て行った。

 まあ、僕も行くんですけどね。何かあるとは思わないけど、フォローすべきならするために。

 現在のツェーヴェは以前のツェーヴェとは格段に違う。ツェーヴェにとってリリアさんとの出会いやエリアナへの魔法の教導は、大きく彼女の技術を成長させる糧になったらしい。それが証拠に、ツェーヴェのスキルには大きく変化が出ている。たぶん、新しいおもちゃを手に入れた気分だろうツェーヴェは、それをぶつけられるサンドバックを見つけたから出たんだろう。


 ~=~


ツェーヴェ

メス 1000歳超え

主人 エリアナ・ファンテール

取得称号

(ミズチ)    ・お嬢様の恋敵

・魔の森の主    ・森の大魔導師

・齢千を生きる者  ・森の救済者

・世話好きお姉さん ・迷宮の教師 

・お嬢様の従魔   ・人魔の堺の超越者

人間形態……身長160㎝ 

藍蛇……全長5m 

蛟……全長100m

モンストルスネーク族 #位階進化→蛟 モデル=テキサスインディゴスネーク

武器 長杖『蛟』……2m50㎝の大型魔法杖

取得スキル

+水大精霊の加護 +杖術

+水魔法(特級)  +斧術

+時空魔法(中級) +鉄砲水(フラッド・ブレス)(固有スキル)


 ~=~


 その冒険者は1人で警戒しながら森の中を進んでいる。痕跡をできるだけ残さないように、静寂の森の中を注意深く進んでいる。この感じだと、土地の調査という訳じゃなさそうだ。あ~、そういう事か。最近リリアさんに注意されていたんだ。僕は元が森生まれの魔物だから、人間世界の機微には疎い。どうも僕は殺し過ぎるらしい。

 ……とはいっても、基本的に僕はこの拠点の方角へ近づく者以外は殺していない。

 それが理由でこの方角には何か危険な物があるのでは? という憶測を生む結果になったようなのだ。それをツェーヴェがフォローしてくれるために、わざわざ人の姿で追い返しに行ってくれているのだという。国家級戦力からは一段下がるけれど、冒険者の中では練度の高い戦力を投入し確認しに来たのだから。

 別に戦力面では僕でも問題ないだろうという。素材の質という観点から地竜との戦闘は避けた僕だけど、倒せないわけじゃない。

 ツェーヴェが出たのは年の功というか……、長きを生きた魔人の余裕を見せる策とリリアさんは言っている。直接ツェーヴェに言ったら溺死させられそうな文言がポンポン出ておりましたよ。僕もこれからは注意しようと思う。


「やあやあ~、初めまして? かな~?」

「な、何者だ?!」

「我が名はツェーヴェ。この森に住む魔導士だ。貴様は私の領域を侵害している。そのことを伝えに来た」

「そ、そうか……しかし、我々もそのような情報は知らない。できれば貴殿の拠点の位置や情報を……」

「ははは! 何故隠遁を崩してまで貴様らにくみせねばならん? 真実を知りたくば、実力を持って応えよ」

「くっ!!」


 お~……。ツェーヴェの奴、娯楽小説が好きだからか演技力が高いな~。

 悪役じみているのはこの際置いといて、僕はツェーヴェの戦い方を観察する。ツェーヴェの武器は僕の作った長杖、『蛟』だ。基本的に杖を持っていれば、遠距離戦闘の魔法使いとして認識される。基本的には……ね。冒険者の男もそう考えたのか、体制を低く保ち、ツェーヴェの懐に潜り込もうとする挙動を見せた。しかし、ツェーヴェは落ち着きはらい、冒険者の前進に合わせて蛟を横べりに振るう。その音がもうね……。ヴォンッ……だもん。というか、冒険者はさすがと言うか上位と冠されるだけの判断能力で危機を乗り切った。

 まさかツェーヴェが横薙ぎに振るった杖の威力がね。太い幹を数本纏めて薙ぎ払う威力だとは思わなかっただろう。

 僕も冷や汗ものだった。蛟は長杖だとしても規格外の長さをしている。それは魔人としてのツェーヴェの筋力があってこその武器なのだ。それにツェーヴェは楽し気にブンブン蛟を振り回している。冒険者はそれでもまだ行けると思っているようで、彼のスキルを発動させたような挙動を取った。


「武神!! いくぞぉッ!!」

「へ~……」


 ニヤリと笑ったツェーヴェの首が落ちた。しかし、その首は元あった部分から再構成される。冒険者は絶句。そりゃそうだ。ニヤリと笑うツェーヴェがあちこちから現れたんだから。この冒険者の最大の間違いはこのツェーヴェのホームで戦闘を開始したこと。確かに今のスキルは強い。ツェーヴェは完全に反応しきれていなかった。だからと言ってツェーヴェを打倒できるとは限らない。そもそも、ツェーヴェは凄く用心深い。抜けている性格ながら、ミスが少ないのはそれが理由だ。リスクテイクが堅実であるが故の『森の主』足り得る長命なのだと思う。

 ここからはツェーヴェの見せ場となったわけだ。スキルに斧術が生えてる理由がここから。蛟の頭頂部を中心に巨大な水の両刃が造形される。それをあちこちから詰め寄り、振り回していたのだけど、避けに避け、死に目を見た冒険者は尻もちを搗きながら寸止めされ、ツェーヴェに降伏。ツェーヴェも元から命を取るつもりもなく、これまでの冒険者への対処もやむを得ず行った旨を伝えた。上級冒険者の男は、青い顔をしながら来た道を帰っていく。ツェーヴェは目的のこともあるからだろうけど霧を生み出し、魔物に襲撃を受けないように冒険者を森の外に送り届けていた。


「どうかしら? クロ」

(凄いね。完全気配遮断に気づくなんて)

「そりゃそうよ。最初の攻撃でクロが動いたもの」

(やっぱツェーヴェが相手だと、まだまだ勝てそうにないね~)

「ふふふ。そうね~。まだまだ負ける気はないわよ~」


 僕とツェーヴェが帰ると、プンスコしているスルトが僕の目の前に来た。どうも僕が一人で出かけていたのが気に入らなかったらしい。お土産に甘い果物をあげたら、コロッと忘れたように上機嫌になったけど。……ちょろい。

 ツェーヴェがリリアさんに報告し、あの上級冒険者を知っているかを問うている。特徴を伝え、特に『武神』という名前のスキルについてを報告すると、リリアさんだけではなくエリアナまで驚いていた。どうも、上級冒険者ではなく『特級冒険者』だったらしい。人間の冒険者の中では最上位の実力者で、基本的にはソロ活動している国家級戦力とのこと。その戦力を向かわせたとなると、本当に面倒なことになるかもしれない。

 ここから人間が取るだろう手段は3つだろう。

 リリアさんも言っていたが、冒険者やフリーエージェントの雇われ稼業などは命が大事なため、正しく報告してくれるだろうとのこと。しかし、それを『上』の存在が正しく理解するかどうかは未知数。可能性としてツェーヴェの勧誘に動くケースが最有力となる。あの冒険者を寄せ付けない戦闘力を『魔導師』が取るのだ。国が全力を挙げてでも取り込みたいと考えたとしておかしくない。


「それは面倒ね~」

「はい。ですが、問題はここからです」


 問題と言う問題ではないけれど、ツェーヴェの存在を忌避し、無視もしくは危険物扱いとする方向。この場合は長きに渡り、僕らも動きが取れなくなる。あの冒険者は間違いなく一番近い都市の方角へ向かっていた。そうなると、ツェーヴェの存在は確実に広まってしまう。以前から魔導士捜索の依頼で、人相書きが出まわっていたらしいから、存在が明確になってしまうのは避けられない。

 最後が根本的な問題。

 問題が現在のガハルト公爵家の動向。現ガハルト公爵は老いからか、次期当主の選定に動いている。その煽りからエリアナは辺境に追いやられ、暗殺されかけたわけだけども。その上で、ツェーヴェの力を理解せず、現在の『魔の森侵攻路計画』を主導している長男派が権勢を得た場合。……ほぼほぼ確実にこの森へ侵攻してくる。

 人間の考えとして、基本的に個の力で群を討つことはできないと考えているという。うん。それは僕も知っている。いろいろな書籍を読む中で、僕もそれについては傾向としてあるな~……。と考えていた。仕方ないともいえるけど、これまで人間は魔物について調査をおろそかにし過ぎている。少しでもリスクを考えて、魔物のことをもっと調べておくべきだったんだと思う。


「あの……、ケンベルク様がこの森を攻撃した場合はどうされますか?」

「ケンベルクって言うのね? 一番上のお兄さん」

「は、はい」

「そうね~。私は攻撃してきた時だけ迎え撃つつもりでいるわ。あの街にる人間は、全員が悪い人間ではないと思うもの。貴女達のように気のいい人間もいるから」

(僕はエリアナにその辺りは任せる。暗殺や情報収集、発破工作。なんでもござれだよ)

「クロはエリアナの判断に任せるそうよ。やれることはなんでもしてくれるらしいわ」


 そして、僕は主のエリアナから勅命を受けて、街へと向かう。

 いや、皆で街へ出ている時に、同時並行で任務を遂行するんだけどね? それはその時までのお楽しみ。夕食後に僕はその為の準備に、昨日からお手伝いしてくれるスルトを連れて、鍛冶場で準備を始めた。


 ~=~


・成長記録→経過

クロ 

オス 生後45日程~50日

主人 エリアナ・ファンテール

取得称号

・森の管理担当代理 ・お嬢様の婿(仮)

・森の救済者    ・森の主の婿(仮)

・侍従長のお墨付き ・稀代の開発者(・稀代の鍛冶師 ・稀代の魔道具師 ・上級錬金術師)

・迷宮の家令    ・エクリプスアサシン

・幼き父      ・ラヴァゲッコーの世話役

???族

全長10㎝……身長6㎝

取得スキル

+隠密機動(+身体強化 +隠密 +完全気配遮断)

+狙撃

+匠(+開発者 +名工 +上級錬金術 +装飾 +裁縫)

+狩人(+弓術 +解体術)

+行商人(+交渉 +詐術 +観察)

+鼓舞

+探索

+爆裂魔法(発現/未使用)

NEW +発破技師 +立体起動 +絶対回避 +武神(+剣神 +天賦/未発現)

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