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迷宮国家の存在

 ど~も、僕です。クロですよ~。

 スパイミッションというよりは、完全に忍者アクションだった気もする。だいぶ前にやった潜入作戦、『セリアナさん救出作戦』の時はまだそんな感じもしたんだけど、今回はちょっと趣が違った。完全に敵さんが気づくことができないばかりか、何の面白みもなくトラップも疑似魔物の群れも通り抜けて終わった。

 僕としては面白くないと思っていたこのチープな忍者アクションの録画が……なんでか凄く子供や一部の大人に人気らしい。

 最初に僕がアダマンタイトの短剣を差し込んだところではまだ爬虫類姿だった。そこに外套を取り出し着込むことで姿が消える。イリュージョンとしては面白いが、これはなんとも……。改めて見ているけど、娘達やエリアナ、セリアナさんには大人気なんだが……。僕やツェーヴェには微妙な評価。もっと演出込みにした方が面白い。今度自作自演の録画でも行おうか? こんなことで娯楽興行できるなら一肌でも二肌でも脱ぐよ? ちょうど脱皮の時期だし。


「あんまりじゃないかしら? これ」

「そう? ちょっとおいたが過ぎるからね~。どうもあの迷宮で一応の利益は出るみたいだけど……。そんな中途半端な事をするために、ガイガルト翁や奥さんを狙ったと考えるとね~」

「まぁ、クロを敵に回したのだから、あきらめる他ないわね。『黒焔(弱)』で焼け野原にされるよりはましだとは思うけど」

「そんな無益なことはしないよ。僕はクズの所業には相応の裁きを投げるけど、生き物としての人間族の営み全てを否定はしない。ちょっとアホで狡いのも人間なんだって考えてるから」

「ふふふ、本当に貴方は人臭い考え方するわね。でも、そんなところも好きよ」


 最近のツェーヴェはこうやって積極的である。なんでかよく知らないけど、妊娠発覚後から凄く積極的なんだよね~。まだまだ人間の情緒も学ばねばならない。女性の思惑というか感情の変化を理解するのも忘れてはいけない。まだまだ学ぶことばかりである。

 そんなツェーヴェと話していると、ずっと僕のチープな忍者アクションを楽しんでいたセリアナさんとエリアナがこちらに向き直った。

 そうだった。最近流行している映画のことで忘れていたんだけど。今回、エリアナとセリアナさんがどうなったのかを聞くために来ている。今回取り込んだ迷宮核からの変化で、エリアナが大きく変化していた。ゲンブの大人化のような性質の能力だったとのこと。これで彼女も寝室へ……と笑顔を輝かせたエリアナだが、それはセリアナさんに全否定された。さすがに年齢の事や法に関わる事は曲げられない。第一、時間制限付きなのでそれを許容はできないとのこと……。僕は全力でポーカーフェイスを貫く。そんでもって、セリアナさんの変化と言うのが……、全面に欲望が出ていた。こちらも時間制限付きらしいけど、ついに長年の悩みを解決できたと凄く晴れやかな笑顔でスキル解放。

 うん。豊乳です。迷宮の『秘奥技能』なのでもっと凄い事だと思うでしょ? 豊乳なんです。セリアナさんとしては凄く重要なんだろうけどね……。ちなみに、今回の『秘奥技能』というのは『肉体変化』の権能だった。強化する部分の限定化により、その部位の強化率も変えられる便利なスキルだ。リスクも特になく、とても使いやすい。また、再使用までの時間もかなり短いとのことで、戦闘向きのスキルだったんだろう。……それを豊乳に全部りしたロリ法務長官の残念なことよ。


「違うわ、クロちゃん。時間限定だけど、もう私はただのロリ法務長官じゃないの。ロリ巨乳法務長官よ!!」


 ババ~ンッ! みたいに胸を張ってらっしゃるが、その普段着のドレスの胸囲、合ってないのでその内破れますぞ? ミシミシ言ってますもん。……言わんこっちゃない。今更僕が見ても何のこと無いんだけど、嬉しそうに『や~ん! エッチィ!』、とか言いながら飛びついてくるのは勘弁して欲しい。スルりと回避して僕はエリアナの後ろに隠れる。セリアナさんは首根っこを掴まれてハーマさんに連行されたので、執務室に平和が訪れた。

 セリアナさんが居なくなってしまったが、ここからはちゃんと真面目な会話をしている。

 これまでの『秘奥技能』解放の共通点。それは迷宮国家の迷宮核や、位階が一定以上ある迷宮核を身内に取り込む事。これだろう。ただ、迷宮国家ってそんなにあり得る物なのか……という疑問もある。それのことを話すためにツェーヴェも呼ばれていたらしい。なんでここにツェーヴェが居るか気にはなってたけど、そういう事か。

 ツェーヴェはいろいろやり過ぎて『学者』としか言えないのだけど、その中でも考古学が専攻と言っていい。そのツェーヴェが魔法の鞄から引きずり出したのはボロボロの本だった。エルフ自治区のかなり古い区画から出て来たもので、これがなんとエリーカが眠る以前の時代の本とのこと。ただ、エリーカが研究しながら過ごしていた時代と言えども、その時期の文字はさまざまな形態がありエリーカには読解不可。そこで……解読スキルが生えているツェーヴェが解き明かしたのだ。

 どうも、エリーカが眠る頃に『厄災』という世界規模の天災が発生した。驚くべきことに、以前のセンテン高地の頂上が海抜0m地帯とのこと。


「ちょい待ち……。それって凄くやばいんじゃ」

「そうみたいね。その『厄災』を一族総出で鎮めたのが黒龍だったらしいわ。族滅してまで世界を守ったみたい」

「でも、そうなるとファンテール王国の黒龍とは?」

「さあ? それは調べて別の所で調べないと解らないわ。それよりも迷宮国家に関してね」


 人間族や他の種族が生き残った場所は、濃い魔素だまりのあった箇所のみ。その安全地帯で生き延びた存在が再び文明を築いた結果が『迷宮国家』だという結論だろう。ただ、いくつかの例外があるけどね。アルジャレド通商連合国の方面は『厄災』に襲われた際の被害が少なく、いち早く復興。その為に向こう側は『人間の領域』と僕らが言う、広大な人間族が統べる領域ができあがったのだ。

 もう一つの例外がファンテール王国やグランデール獣人国だ。ファンテールのことは詳しく解らないけど、グランデール獣人国は神獣の一種に類した『月を食らう者』が死す際に放出された膨大な魔素によりできた。迷宮核によりできた国。迷宮核は一言にいえば力の塊である。それも大きな力の塊ともなれば、迷宮の力も大きい。それを吸収すればそれだけ大きな力が得られるのも必至。『秘奥技能』はそういう迷宮核を吸収して得られる力なのだ。

 この話はここで終了。一応確認しておかなければならないというだけだからね。僕のように来歴の知れない力を持つのは意外と怖い者だ。エリアナが凄く不安そうだったので、ここの辺りは最重要のこととして僕も密かに調べてはいた。まぁ、エリアナの方はたどり着いたけど、僕の方は空振りだった……。


「えッ? という事はクロも行きついたの? 自分の親と思われる物の存在に」

「それがね~……。それも空振りだったんだ。その辺は百聞は一見に如かずってことで、予定を合わせて見に行く方がいいと思うよ」

「どこで見つけたのよ!! 私それ聴いてない!!」

「僕も教えてないもの。教えても特に何もないんだから」


 不満そうなツェーヴェだけど、これに関しては本当に何にもない。僕にはそこそこプラスに働いたけど、それ以上のことはなかった。初代ファンテール国王の王祖と、黒龍の関係なども解ったけれど、僕に関しては一切解らなかったし。

 それから先ほどのツェーヴェの『厄災』関連とは、またファンテールの黒龍は異なると思う。

 この世界に生き残っている長命の超常種は基本的に魔素溜まりの長。それは厄災から生き残れたのが、魔素における何らかの防護による物だったと思われるから。その後に完全に異なる時代にいきなりぽっと出の黒龍……あれ? それって僕も同じなのでは? 気づかなかったことにしよう。あそこを見せればツェーヴェは気づくと思うけど、それを今口にする必要はない。不服そうだけど、これは言えない理由もあるんだよね~。ファンテール王国の真実を知ったら皆が驚くと思うもん。僕も十数分動きが止まった程だから。関係者、特にファンテールのことに深く関わるメンバーを集めて、あそこに行かなければならないかもね。

 ……あんまりにもぶー垂れているので、ツェーヴェの頬にキスをしておいてご機嫌取り。これだけで少しは回復するのでチョロいと言えばチョロいんだが……。ツェーヴェはあそこに行くと興奮しまくると思うから。この辺で……。それよりもせっかく大人化の権能を得たのに、禁止されたエリアナのケアの方が大変だと思うし。


「あ、お帰りなさい。セリアナさん」

「もう……ハーマも私が何歳になったと思っているのよ。昔から加減を知らないんだから」

「セリアナ様がもう少々ご自覚いただければ私も手加減いたしますが?」


 胸部が派手に破れた普段着ドレスから着替えたセリアナさんは、小さく可愛らしい臀部をさすりながら部屋に入室。もう僕らにはお馴染みなんだけど、ハーマさんのセリアナさんへのお仕置きだ。セリアナさんの年齢分のプライドをべしべしと叩いて砕かんばかりの、『お尻ぺんぺんの刑』である。ちなみに、あまりにもアホなことをするとエリアナも掴まる。そしてその後、半日くらいは尻を摩っていることがあった。あと……似つかわしくないメンバーも時折同じ方法でお仕置きされている。おそらく、ハーマさんがこの城で一番恐ろしい存在だと思うよ。

 僕の考えを先読みしたかのように、ハーマさんから苦言がとんだ。

 おそらく『僕とさしで夜の戦闘をする刑』の方が嫌がられると思うなどと言われた。……コメントは差し控えたい。ハーマさんが容赦なく語るところによれば、僕にお仕置きされるのとハーマさんのお仕置きを受けるのとを突きつけると、大概ハーマさんの方を選択するとのこと。ちなみに、よくハーマさんに叩かれているのは、夜な夜な食糧庫に入り込んで盗み食いをするジュネ。そこらかしこで酒を飲み散らかす、メリアとセラとダフネとセリアナさんがワンセット。セリアナさんは他にもいろいろな件でよく叩かれてるそうな。あと、ここで真っ赤な顔をしているツェーヴェ。ツェーヴェは片づけができないからね。


 ~=~


・成長記録→経過

クロ

オス 生後170日~175日

主人 エリアナ・ファンテール

身長130㎝

全長17㎝……身長12㎝

取得称号

~省略~


取得スキル

~省略~


 ~=~

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