北方の迷宮制圧戦
今回の事件発覚は白龍王ブランジェリアの何気ない転居からの違和感が原因だった。そして、タイムリーに僕へ念話魔法をユミルが飛ばしてきたのだった。僕の念話魔法を音声拡張魔法の重ね掛けにより、室内のメンバー全員に聞こえるようにしておく。他にも古龍の代表さんは居るんだけど、『龍の領域』に拠点を移しているので、そこに居る人も多い。『王祖の迷宮』に居てこの会議に参加しに来ないのは樹龍の長、ダフネくらいだ。
ユミルの話だと、以前の聖剣程ではないが、それに近似した剣を持った冒険者や騎士が近くに来たらしい。明らかに作戦行動だったとユミルが言う。
そのままユミルの報告が続く。ユミルが拘りぬいて作り上げた城なんだけど、確かに物理的な防衛能力も凄まじい。正直、迷宮としては難攻不落の要塞と言える。エリアナも住みにくくなるからアレほどはやらないだろうけど、本当ならあれくらいやりたいのだろう。その城の一番恐ろしい部分は……その表面上の防御力ではない。その環境による防御力だ。
あの城の中は敵性勢力にのみ発動するえげつないトラップがある。環境トラップの『冬の棺』だ。内部へ進むにつれて耐性のある種族でも動きが鈍る程の、状態異常『凍結』を与える環境系トラップである。人間族程度では数分で凍死するだろうね。龍族でも1時間も耐えられないと思う。
「で、魔剣だったんだ」
『うん。今ウチの子に持ってかせてる。こういうのはおとーさんに見てもらった方がいいと思うから』
「了解。その内僕が行くよ。ちょっと面倒なことになりつつあるから」
『は~い。待ってるね~』
規模的には少数精鋭での奇襲。夜間を狙い、急にできた城の主を討伐しようとしているのか?
それにしては動きが短絡的すぎるんだよな~。なので、今回は僕を含めてお父さんグループで動くことになった。メンバーは僕、焔龍ヴォルカニアスさん、時空龍ガトールさん、大地龍アースさん、風龍ベルトールさん、リヴァイアサン族からギルさん。このメンバーでちょっと敵さんの首根っこを掴んでおこうかと。ちょっと知りたいこともあってね。
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ユミルの『氷の城』に到着してすぐに、ユミルへ『迷宮戦争』の開戦を宣言してもらい、手紙で一番近い位置にある迷宮への攻撃意志を連絡した。ここまでが迷宮戦争に必要な手順で、ここまで行うと敵の迷宮の1階層もしくは浅層に転移魔法陣が出現。今回は何本も龍に特攻付きの武器があると面倒なので、僕が単体で入り、3分したら残りの『パパ軍団』に入ってもらうことにしている。
僕が転移すると、そこには氷の平原が広がっていた。
敵さんはアイスオーガが数体。手早くsocomMK109で爆散させ、周囲の適性勢力の探査を行う。狭いなこの迷宮。こんなんで資源確保できてんの? ……と疑問もあるが、ぞろぞろと『パパ軍団』が転移してきたので、先に進む。僕がやらかした惨状を見て皆引き攣り笑いだ。うん。この反応にも慣れて来たね。狭いので第二階層に行くのも早い。2階層も同じく氷の平原。居る疑似魔物も似たり寄ったりでアイスワームが増えた程度で苦戦どころか、攻撃すら効かないメンバーが集まってるので僕が撃ち殺していく。今回は『パパ軍団』に僕の力を見せる目的があるので、極力手出しは無用で頼んでいる。
そのまま僕の独力で代り映えしない氷の平原のまま8階層降りて、中ボス階に到達。
中ボス階の扉の中には氷竜がいた。うん。蜥蜴の方ね。部屋に入った瞬間に威嚇の咆哮を上げて来たので、容赦なく爆裂弾で頭を消し飛ばしておいた。後ろでパパ軍団が目頭を押さえていたり、大きくため息を吐いている反応がある。解りますよ……。正直この程度の迷宮だと僕が入ることすら間違いなんですから。正直、この迷宮の設置されている意味が解らない。この迷宮核と意思疎通ができている様には見えないんだよね~。そのまま降りて行くと……アレ? アイツボスだったん?
「おいおい……。これで1個目終わりか?」
「みたいですね。ここを併合してもしょうがないので、核をぶっ壊します」
僕がアダマンタイト製のククリ刀で一閃。
真っ二つになった迷宮核を僕の魔法の登山鞄へ押し込み、そのまま上階へ戻って行く。迷宮の機能が停止しているので本当に戻るだけだ。ここがどこかは知らないが、楽に行きたければ真上に『黒閃』を撃ち込めばショートカットできると思うけど、街中にあったら困るしね。とりあえず、ユミルの城に帰って来た。
そしたら、凍死体が増えていてげんなり。ユミルの話では片づけも面倒なので、城門前まで環境トラップの範囲を拡げた所、敵さんの騎士団っぽい物を瞬間凍結させて終わったとのこと。中隊くらいの氷像が並んでるので、僕ら『パパ軍団』(ユミル命名)は呆れかえっている。
もう面倒なので第二の迷宮を潰しにむかう事にした。今回も僕が前衛で行く。お、今回はいいんじゃないですか? アイスエイプの集団ざっと100は居る。ククリ刀とsocomMK109でボッコボコにしていく。奥にいくにつれてアイスコングとか大型も増えてきた。僕の手だけでも問題ないのだけど、皆さんもあまりに暇なので手を貸してくれている。
戦い方はもうわかり易い。前衛のアースさんとヴォルカニアスさん。アースさんは大盾とランス。ヴォルカニアスさんはでっかい大剣。豪快に波来る敵を薙ぎはらっている。後ろからはガトールさんが何やら投げている。投げナイフかと思ったらトランプだった。時空魔法で加速させて切り裂けるらしい。ベルトールさんも長杖から魔法を連発し、敵を一切近づけずに切り裂いている。驚かされたのは最後のギルさん。我が領でご購入遊ばされた実弾魔法弾兼用の魔法銃を構え、後方の大物を適格にヘッドショット。むっちゃさまになっててビビる。
「ほ~。そいつが噂の魔法銃か。確かに俺らの魔素吸入量なら余裕だろうな」
「よきよき、我も、ぜひに」
「ふうむ。某とヴォルカニアスには合わなそうではあるが、軍として組み込むには一考の余地ありだな」
ギルさんが持っているのは個人用チューニングがされていない汎用型狩猟銃だ。個人に配備するためにはあそこからチューニングした方がいいのである。まぁ、ギルさんの口ぶりだと、ちょっと使ってみたくて有料レンタルで借りたらしい。カレッサ辺りが受け付けたんだと思う。
そのまま危なげもなく中ボス層へと降りて来た。龍族がこれだけ居るともう無敵感が凄い。それに龍殺剣にも残念ながら弱点がある。格の低い龍だったりすれば即死させられるんだろうけど、ここに居るご歴々レベルだと苦しむ程度の傷にしかならない。氷龍妃クレバイザさんは切っ先が折れて摘出できずに亡くなった。そういう事態になっても僕が居るので問題なし。エリクサーもあるし。
中ボスには三頭の氷竜が居た。僕が一頭担当。他は皆さんで煮るなり焼くなりって感じでフルボッコにしていた。あまりにも弱いな~。とりあえず中ボスのドロップ品と素材を収集。正直、最近住み着いた龍の皆さんの脱皮した革や鱗の方が良質なんだけどね。龍族が住み着いてからはそういう恩恵もあった。
そのまま、上階層の敵が強化された程度の敵の波を薙ぎ払いつつ前進。散歩に来ているような感じで皆歩いている。あまりにも手ごたえがなく飽きてしまったらしい。なので、僕がMG-L4をひっさげて薙ぎ払って行く。爆裂弾でもいいんだけど、地形へのダメージが大き過ぎて使えないんだよね。
「本当に君の使う武器は規格外だね。それ、きかんじゅう?だっけ。その攻撃だと龍でもひとたまりもないと思うよ」
「おう、俺も見てて怖気が走ったぜ」
「しかり、まっこと恐ろしきかな……」
「この狙撃銃でも相当だとおもうからね。その銃は君レベルしか使えないんだろうけど、恐ろしいよ」
その気持ちはよくわかる。僕もこれが自身に向いたと考えた時の恐怖は尋常じゃないから。でも、この迷宮ではその一段上のことをしておこうと思う。ここの皆さんには誰にも『黒焔(弱)』を見せたことはない。なので、ボス階層のこの扉を開けたら……皆さんには全力で防御結界を張っておいてもらう。
最初は皆さん首をかしげていたが、時間と共に表情が恐れに染まる。僕が全オリハルコン製のsocomMK109に持ち替え、特殊弾のマガジンを装填したからだ。お馴染みの強化魔法添着弾。この強化した添着弾でも威力としてはかなり弱い。オリハルコンの器物が焼けるという恐ろしい弾のはずなんだけどね。この迷宮は魔境の中に無いせいか、魔素密度が少なく思ったほど威力が上がらないかも。まぁ、それでも十分だ。この迷宮の最下層に居たボス。アイスシュバリエ。氷の騎士系の最上位種であるが、僕が3秒だけ溜めた『黒焔(弱)』を添着した弾丸をご自慢の盾で防御した瞬間。
うん。この感じ久しぶりだね。
問題は僕が根こそぎ魔素を収奪してしまったので、迷宮が構造を維持できなくなりつつあること。迷宮の最奥にある核を急いで破壊し、奪取。そこからは今回はなりふり構ってられないので、上層へ穴を開けつつ登って行く。さすがの大古龍のご歴々もこの脱出方法には思う所があるのか、苦笑いと呆れが非常に濃い。そのまま入口の転移魔法陣から『氷の城』へ脱出した。
「おっどろいたね~。まさか、迷宮内の魔素を収奪し過ぎると迷宮が崩壊するなんて」
「あぁ、それはこの弾丸のせいです。この弾丸は迷宮が使う変質した魔素だとしても強引に奪いますから」
「そりゃ~迷宮殺しができるってことだろ? またえげつないもんを作ったもんだぜ」
「ふむ、禁忌の行い…しかし、興味深し」
「そうですね。自然の摂理を破壊する行いその物だと思います。でも、これを作ったのが人ではなく、クロ君だったことが幸いだよ。君なら無暗なことはしないだろうし」
ユミルはこのむさくるしいおっさんの座談会の外側で、メイドの氷龍族の娘と何やら話している。まあ、次で最後だ。おそらく、これが本命だろう。『凍土の国』の中核を奪いに行きますか。
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・成長記録→経過
クロ
オス 生後170日~175日
主人 エリアナ・ファンテール
身長130㎝
全長17㎝……身長12㎝
取得称号
~省略~
取得スキル
~省略~
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