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『忘れかけていた人物の引っ越し』

 ほいほい、僕です。クロです。

 僕はいつも気ままに動き回っているイメージかもしれないけれど、殆どの場合は何等かの問題があり僕が出動していることが多い。それ以外ではスルトの要請で僕しか使えない『王祖の遺物』での鍛造や彫金、錬金、刻印、付与などを行う。これは本当に僕しかできないので、最優先なのだ。作っている物にもよるけど。試しにスルトのみに『王祖の遺物』のチューニングレプリカの使用権をアクティベートして使ってもらおうとしたんだけど……。使えなかった。なので物によっては僕だけなので最優先でやる。

 次に多いのはゲンブからの要請で軍の訓練だ。いろいろやるよ。メインは火薬銃の使い方。その次は武器毎の効果的な使い方。格闘戦の訓練も付き合うし、僕vs蛇魔人組と『蛇神神殿の迷宮』連合軍の行軍訓練試合も行う。一応勝率は僕1人の方が多いって言うね。結構ガチで攻撃してくるからめちゃくちゃ怖いんだよ。バリスタボルトの雨あられ、蛇魔人の中級水魔法の散弾、極めつけはゲンブの大盾による単身特攻には胆が冷えた。言っとくけど、ゲンブの結界魔法での盾は一瞬だけなら僕の『黒焔(弱)』も通さないから。

 あとは……ユミルの様子見くらいだろうね。ガイガルト翁への挨拶もあるし。その時に僕はユミルの氷の城に半ば居着きかけていた存在を見つけて回れ右しようとした。……が、逃げられなかった。そいつは僕が撃墜して、いろいろと現実を叩きつけて仲間?になった白龍王ブランジェリアだ。


「もう! 酷いじゃない!! 引っ越しの為に荷物整理してたら誰も案内役が居なくて迷子になったじゃないの!!」

「しっかりここでの生活を楽しんでいるように見えるけど?」

「ここもいい施設よね。ユミルちゃんのこだわりを感じるわ」

「うふふふふ~。ありがと~」


 ユミルと仲良くなっていたブランジェリア。ユミル曰く、『龍の領域』と『氷の城』の間を旋回していて不審だったので、氷のブレスで撃ち落したらしい。……親子揃って同じことをしていることを先に謝るべきなんだけど、不審な動きを止められないコイツに苦言を投げるべきかどうしたものか?

 まぁ、そのことはとくに気にしていないのでスルーして、ブランジェリアは大きなリュックを担いで僕の横に立つ。そして、ユミルにお世話になりましたと一礼し、鱗を1枚手渡している。

 うん。解っていたけどね。ブランジェリアはブラックナイト号の隣を飛んで『王祖の迷宮』までしっかりついて来た。そのままエリアナやセリアナさんに挨拶し、妻候補審査会に回されてあっさりと通過。どう受け入れるべきか悩んだけど、こっちも完全に忘れかけていたからね。普通に遊びに来ていたからそこまでで止まると思って油断していた。さすがに何も言えん。諦めて僕は受け入れることにした。またも龍族の嫁が増えたが、もうこの領地には龍族の住民もいるので、今更1人くらい龍が増えても誰も驚かない。驚いたのは龍族だったけど。

 龍族の中で『白龍王』は神に等しい存在とのこと。

 初めて知った。だってあんな猪突猛進の痴女龍が神獣の中でも強いと言われてもね~……。ブランジェリアが引っ越してきたとのことで、この土地に住んでいたり、別荘を持つ大古龍や古龍のメンバーが龍の自治区となっている中規模迷宮に集まっていた。僕もそこに居る。ブランジェリアがここに来た原因もちゃんと話しておく。


「小規模4つ、中規模2つの魔境を一瞬で呑んだ……か。俺らもこっち側にいてよかったかもな~」

「しかり、黒き若人…至極の強者なり」

「そうね。クロと正面切って戦うのは愚策。私でも火力負けする」

「物理戦もやめた方がいいのう……。私もほとんど何もできずに負かされた」

「うん。旦那様のあの攻撃は星の加護でも撃ち抜かれる。本気の一撃を見てみたくはあるけど、大陸が消えてもおかしくない」


 ヴォルカニアスさん、ガトールさん、ジュネ、メリア、コスモの順に僕の攻撃力についての考察をしている。できるかもしれないけど、やる気は毛頭ないけどね。なんでそんな無駄なことをしなくちゃいけないのか甚だ疑問だし。それを聞いて大古龍のご歴々の表情は、呆れとも安堵とも取れる表情へ変化した。実際、僕の力がこの世界では突き抜けていることは言うまでもない。

 『黒龍』の本来の役割のことをガイガルト翁から個人的に聞いたところに寄れば、『白龍王』と『黒龍王』という昼と夜の2柱が世界を守っていた。ある時、世界に大いなる危機が訪れ、神の声かけにより『黒龍』の一族はそれに応えいずこかに赴き帰ってこなかったようだ。しかし、その間に世界は大きく揺らぎ、天変地異に見舞われて荒廃の渦を『白龍』達が奔走し押さえつけて来た。今では『白龍』の血筋もほとんどいない。

 で、その『白龍』の末裔は僕らが真剣な話し合いをしている目の前で、茶菓子を目の色変えて食ってるんですよ。さすがにヴォルカニアスさんがキレて拳骨を入れた。うん。それくらいされて当たり前だ。

 ブランジェリアなどの白龍の一族は要所に住み着き、重石に成らねばならないはずで……。そんな簡単に転居して良い訳がないのだ。……しかし、ブランジェリアの話では、その重石の白龍もほとんどいない。自分ひとりではどうしようもないと開き直った。コスモは頭を抱えているし、周囲の大古龍も亜然としている。何故そんな重要なことが自分達に知らされていないのかという部分も大きな問題らしいが、白龍はそれ程簡単に倒せる存在でもない。それがどんどん減っていると言うのも大きな問題なのだ。


「……皆さん、考えていることは同じですね?」

「おう、クロ坊。こりゃ~きなくせ~ぞ」

「うむ。大いなる力、ここで集うべき」

「賛成じゃ。私達だけではどうにもならんじゃろうて。ここの戦力を借りる他ないと思うぞえ」

「うん。そうしよう」


 人間の事云々も関係していると思う。白龍が単純に倒されている訳ではない可能性が大きい。大きな存在が息絶えると、その周辺は膨大な魔素に満ち、魔境が生まれる。その際に迷宮核を生成するのも解っているしね。確実とは言えないけど。

 僕の推測だと、人間が関わっている。この前のガイガルト翁の奥さんを倒したという聖剣を、中央のローテーブルの上に載せる。ガイガルト翁の奥さん、氷龍妃クレバイザはとても重厚な甲殻と鱗を持っていた。それに致命傷を与えられる効果のある剣。気になって僕も調べた。壊れているので加護や特攻などが見られず、一度修理した結果、解って来たこともある。その禍々しいと感じられる氣に大古龍の皆さんでも生唾を飲み、忌避を感じていた。根本が爬虫類の僕だからもっていてもなんともないけど、龍の皆さんにはそう感じるよね。

 僕の『黒龍』ポイントがマイナス1だけど、僕は謎の生物というのは変わらない。とりあえず、この剣の説明をしなくてはいけない。

 この剣に銘を打つなら『龍殺剣』だろう。魔剣や聖剣には種族特攻のある武器はあるが、龍に特化した武器もそれなりにある。人間にとっては自然を守ろうが何だろうが、脅威であれば打倒する対象なのだ。その目的にもいろいろあるが、人間族が迷宮核を作ることを目的に龍を倒していいるとしたら? 僕の中にも強い怒りが湧きだす。まだ身内でないからすぐにでも潰しに行くつもりは無いが……。欲の皮を突っ張らせすぎるなら、許さん。


「若人よ、抑えよ。皆、息もできぬ」

「あ、すみません。少しイラっとしまして」

「気持ちは解るが、人間も生きていくために必要ならしかたね~わな。それが単に富の為とかなら、クロ坊と同じく俺も喧嘩に賛成だが」

「……それは某も同じ。龍は野生に生きる故に弱肉強食に怨恨を混ぜやらぬ。しかし、それにも限度があろう。クロ殿。出陣の際は我らも征こう」


 ぶるぶる震えながら互いを抱き合っていたジュネとメリア、コスモに抱き着いているブランジェリアにとりあえず謝っておく。僕の氣は強すぎるとのことで、ずっと隠蔽していたけど。それが緩んだだけでこのざまか。もっと訓練しておかなくちゃ……。あ、隠蔽スキル系がパッシブ化したのってこれが原因か? まぁいいや。生活に必要だからね。この術は。

 そうなると北方のきな臭さが増すね。古きを生きている皆さんの話だと、迷宮が近くに3つも重なるのは普通あり得ないとのこと。エリアナ女王国のようにオリハルコンの大樹があるなら話は別となるが、単なる人間族がそういった伝説級のなにがしを持ち合わせているとは考えにくい。そして、ブランジェリアの話だと、白龍の縄張りはあの周辺にいくつかあったはず。それが最近感じられなくなっていて、いろいろ災害を抑えるのに忙しく飛び回っていたとのこと。

 ブランジェリアも同族が殺されたなら考えることは多いが、今は僕の勢力に寄属した形になる。僕のスタンスに合わせるとのこと。僕としてはユミルの縄張りに少しでも手を出したならば、まずは僕が痛い目を見せてやる。ガイガルト翁は仇討ちは考えないと言っていたので、僕の方から欲の尽きない人間族を中枢から崩してやる。いろいろやれると思うよ?


「お? クロ坊、何考えてんだよ。面白そうなことなら教えろよ」

「え?」

「気づいておらなんだのか? そなた、物凄く悪い顔をしておったぞ?」


 メリアに言われるとなると相当だな。とりあえず、直接戦闘をしたがるヴォルカニアスさんには悪いが、策謀を働かせる。まだ、『凍土の国』が犯人とも限らないし、『凍土の国』の内部がどうなっているのかもわからない。ただ、例の聖剣を使えるような勢力が動いていることは確かだ。相手が動くまで待つ。どの道、何かしらの思惑が有って氷龍妃クレバイザを襲い、倒した。なら、また何かしらの動きがあるはずである。ユミルの権能さえあれば生き物が聖剣を使っているうちは無力。その作戦を語ると、……あぁ、意外とヴォルカニアスさんも策謀系好きなんですね。凄くノリノリじゃないですか。


「おうよ。俺だって脳筋バカじゃねえからよ。そういうアコギな連中を擂り潰すのは好みだぜ~」

「うむうむ……我も一口、噛む事を要望す」

「某も一口乗ろう。いやはや、謀略による制圧。久々に血がたぎる」


 男達の悪乗りは確実に形になりつつあった。そして、その報告は直ぐに飛んできた。ユミルの鉄壁の城塞内に侵入し、何らかの悪事を働こうとしたアホが居たとのこと。南より先に北が動いたか。


 ~=~


・成長記録→経過

クロ

オス 生後170日~175日

主人 エリアナ・ファンテール

身長130㎝

全長17㎝……身長12㎝

取得称号

~省略~


取得スキル

~省略~


 ~=~

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