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鬼ヶ島を手に入れた影響

 は~い、どうも~。クロですよ~。

 今回はいろいろと問題があった自治区が自爆した程度のことだと解った。その後にアポロンが僕に問うてきたのが、今後の鬼ヶ島統治をどうするかだった。鬼ヶ島は細々とではあったが、対岸の国家と貿易していた。鬼ヶ島の陶工はとても美しい陶磁器を焼き、ガラス職人の作品はガラスとは思えない透明度を出す。それを貴族用の贈り物として対岸の半島を治める国。『サーガ王国』に輸出していたらしい。

 なので僕らエリアナ王国の管理下に入ったとはいえ、いきなり断交というのも不和を産むこととなる。それから僕らからはイメージの悪いアルジャレド通商連合国のきな臭い動きが最近活発化しているのだ。

 アルジャレド通商連合国は東西に大雑把に言うと長い楕円形をした国で、その隣国として最も西にある『サーガ王国』、中ほどにある『グマンナ首長連邦』、最も東にあり資源豊かで穏健な国風の『トラマンタ帝国』が隣接している。国家としては小さかったが、『鬼ヶ島』もここに含まれていたがいずれもアルジャレド通商連合国とは険悪。特に険悪な関係にあるのが鬼ヶ島だった。鬼ヶ島は国としてはかなり小さく、食料自給率が低い。工芸品で食いつないでいたのだが、それの権利を買叩こうとするなど足元を見た行動、軍事的な挑発などが絶えなかったのだ。


「ふ~ん。なかなかあくどい事してたんだね。他の三国はそれなりに防衛力があるから被害は小さかった訳だ」

「はい。これはとても長い間続いています。古き代から続き子々孫々に渡り、我々もアルジャレドに対してはいい感情を覚えてはおりません」


 今話しているのは鬼ヶ島の政治に最も詳しいであろう、和鬼族の元王妃に当たる桜花さんだ。僕が脅した子のお母様ね。その脅した子もいる。会うたびにあの時のことを思い出すのか、一気に赤面される。まぁ、年ごろの女の子があの醜態だもんね。でも、最後まで黙秘しなければあんなことにはならなかったよ? その子の名は蓮華である。

 今回教えて欲しいのはその『サーガ王国』の印象と情勢だ。

 別に僕は関わりあわなければいいと思うが、アポロンにあの地の管理は任せてしまう事にしている。縄張りの面積的にアポロンはかなり狭いので、鬼ヶ島を縄張りにしても全く問題ないのだ。『サーガ王国』の性格が知れて、穏健な性格なら今まで通りに交易をおこないつつ。アポロンが配備した『アポロン組』のハイエルフやエルフが駐屯しているので、アルジャレド通商連合国が多少攻めてきてもどうにでもなる。ハイエルフも魔道具師が作った結界魔道具で侵入も攻撃もできない。アポロンの迷宮化している場所でしか使えないが、防衛用にアポロンが新設した浮島に配備されている。ついでに、スルトが最近開発した『人でも扱える大型遠距離武器』の試運転の舞台としても用意された側面があるのだ。


「魔人様のお力はホンに素晴らしい……。これなら島も安全です」

「僕は身内は必ず守ります。その点に関しては安心してください。それと鬼ヶ島に興味のある他種族の移入は許可しても大丈夫な環境ですか?」

「……それは徐々に交流を圧すことをお勧めします。島国ですので、少なからず排他的な面があります」

「わてらの態度で解っておったじゃろうて……まったく、これだからお子様は……」

「蓮華はホントに学習しないね。また例のアレをお見舞いしようか?」

「ヒィッ!!」


 そうやってお母様の後ろに隠れられる時だけ強気に出るのはやめようよ。

 お母様も首根っこを掴んで頭を下げさせてるし。この桜花さんはとても奥ゆかしい。そして丁寧な性格な上で強き母と言える女性でもある。ここには珍しい母性が匂い立つ柔らかな雰囲気の女性だ。タイプ的にはおっとりお姉さん。年齢もセリアナさんと同い年の28歳。娘はエリアナより上で15歳。桜花さんは13歳の時に蓮華を産んだというからビックリである。和鬼族は早熟で、10歳くらいで成人するらしい。人間でいう所の20歳くらいの肉体へ成長するのに10年程度しかからない。幼年期が短く、老化が遅い種族なんだとか。寿命もドワーフに近く200歳から400歳程とのこと。

 蓮華はお父上に甘やかされまくった姫育ちらしく、お母上の桜花さんはこういう発言が出る度に額を抑えている。

 ただ、この蓮華にも驚かされたことが一点ある。蓮華は図面引きができたのだ。特に内陸国出身で船の設計などしたことのない職人の多い我が領に、造船設計士が加わったのは凄く大きい。早速スルトが蓮華を捕まえて三日三晩を寝ずに説明させたという事だ。蓮華は最初こそ愛らしい外観のスルトにデレデレで妹でもできたかのような反応だったが、最近ではスルトから隠れている姿を目にする。まぁ、事あるごとに捕まえられても堪った物ではない。物作りとなるとスルトは魔人が変わるからな。いつもはおっとりポヤッとマイペースが肉食系に変貌する。


「ってあんた、その見た目であんな大きい子ぉがおるんかッ?!」

「だから僕は魔人なんだ。魔人は有性生殖が必ずしも必要じゃないんだよ。僕の魔力を卵に込めればいずれ僕の眷属が生まれて来る。その器に伴っていれば……という条件はあるけど」

「ふ~ん。じゃ、仮に母上から生まれて来る子ぉは魔人にあらせんのかいや?」

「それもさっき説明したぞ? 魔人が有性生殖での繁殖を選択した場合は、相手の種族の子が生まれる。魔人と魔人の場合のみ魔人が生まれると思われるが……もしかしたら魔族と呼ばれる範疇になるかもね」


 この蓮華は数学や物理学には強いんだが、生物学や語学にはとことん弱い。何度も懇切丁寧に説明すれば理解はしてくれるんだけどな。それから、場所的にアポロンの『太陽の神殿』でしかできないが、面白い試みができた。

 鬼ヶ島はアポロンの構想では軍港都市にしていくとのこと。あくまで現地人の生活は圧迫せず、アポロン組やエルフの技術者で運営していく。桜花さんの方針であまり過度な接触はせずに、ゆっくりと食糧支援の幅を拡げつつ、進歩的な和鬼の出現に期待する方針だ。『サーガ王国』ともこれまでの規模通りに貿易は行うことにした。次に『サーガ王国』からの商船が来た時にここがエリアナ女王国の保護下に入り、アルジャレド通商連合からの侵略からの防衛を固めていることも桜花さんと蓮華に説明してもらう運びだ。

 その上でこちらも『軍船』が必要になる。それをアポロンらしい力技で解決を図った。

 迷宮の性質を利用したと言えばそれまでだが、それが本当にできてしまったから驚きである。ただ、戦艦一隻あたりのポイントが物凄い膨大なので簡単にはできないけど。それでも一隻できてしまえばこちらの物だった。スルトやドワーフの鍛冶師集団、カレッサの魔道具師やヨルムンガンドの錬金術師、生物学者のエリーカも参戦して巨大プロジェクトが発足していた。僕も知らなかったんだけど、ゴードンさんって伝説の鍛冶屋って言われるくらいの名匠だったらしいよ。


「本当に呆れて物もいえんわ~……。これ、造り始めたら10年とかかかる戦艦ぞ? これに近いもんをあと何隻造るきなんよ」

「知らないよ。材料は提供するけど、あそこのクリエイター集団は一度火が付くと止まらないから」

「あんさんも物作りしいよんのやろ? 混ざらんでかまんのかえ?」

「僕の仕事はもう終わってるからね」


 僕は他の技師と違って銃器や砲台、砲門などの兵器部門だけだからね。設計図を書いておけば、あとは改造したいならスルト辺りが相談を持ち掛けて来る。

 全長約400mの縦長の船で大波に煽られても内部にある、重量制御魔道具で船腹の揺れを安定化。速度に関しても……虎の子の迷宮核とヨルムンガンドのゴーレム技術を盛り込んでいるので、蓮華の言う蒸気船など相手にならない速度が出せる。平均巡航速度がおおよそ20ノット。最高速度40ノットを超えるらしいけど、さすがに重量制御魔道具での振り子運動も無意味とばかりに、そのまま転覆するので曲がることができないらしい。

 それからこの戦艦の外板は総アダマンタイト製。浮力という物の偉大さを感じる。また、アダマンタイトで超固い外板なんだけど、迷宮核を搭載したことでこの戦艦にはまさかの自動修復機能が搭載。最大乗員が2000人という事だけど、この戦艦か艦長の思念と紐づけの自動航行システムなので、搭乗員は多くても100人程度だろうと思う。

 ここからが僕の範囲。船腹の各所に208mm対地対空魔砲を搭載。射角が左右で160°で上下も160°だ。さすがに真横とました、真上は無理。でも大概の角度に対応できるし、装填手と砲手が居れば隙は少ない。あと、同じ砲室に新兵器が搭載されている。僕が使うMGシリーズの最新作MG-HV(重機関銃)を搭載。これ笑えるのがアダマンタイトも同じ場所を撃ち続けると撃ち抜くくらい重い弾丸を撃ちだす。こいつはあんまり射角は広くないけど……。


「それよりもあてが聞きたいんはなぁ~……アレやアレッ!! 何なん?! あの化け物の角みたいなぶっとい筒!! しかも四本横一列!! それが前後に二台ずつ!!」

「アレは僕の最終兵器。『黒龍砲』だよ。半径10キロまでなら敵の臨海拠点を砲撃できるし、敵の船は木っ端みじん。1000㎜魔砲を採用して、一門ずつ打つ。四門同時に打つと、横向きに打つとひっくり返るから」

「あては……なにに突っ込めばいいん?」

「何も考えずに受け入れればいいんじゃない?」


 実際、それ以外に納得する方法はないと思うし。まずもって、僕の『本能?』からサルベージされた知識を迷宮核で利用しているから、この世界には二隻とないんじゃない? あったら怖いけど。この船とまた違う形式の船を既にスルトが製作するつもりで動いているし。

 いずれ来る海戦にこの船がどう役立つかは未知数だけど、心の中では思ってた。たぶん、普通に魔人が海側から侵攻するだけでいいと思うんだ。特にツェーヴェやヴュッカ、ゲンブの水組が居れば問題なく海浜側の都市は壊滅するだろうし。なので、この船は造りたくて造ったんだよね。鬼ヶ島から得た造船技術と海に面する第二の拠点。活用しない訳ないでしょう~。


 ~=~


・成長記録→経過

クロ

オス 生後165日~170日

主人 エリアナ・ファンテール

身長130㎝

全長17㎝……身長12㎝

取得称号

~省略~


取得スキル

~省略~


 ~=~

NEW

桜花

女性 28歳

身長180㎝

和鬼

取得称号

・国母 ・経済の鬼 ・病床の王妃

 『鬼ヶ島』の名家出身の元王妃。女性に参政権の無い古い政治体制と汚職がはびこる中を1人で支えていたまさに良妻賢母を現した存在。疫病の蔓延で都市の離れた夫の死後、1人で国を回していたが心労で倒れ、病床に伏していた。ヨルムンガンドのエリクサーの被検体の1人。一児の母とは思えない若々しさ。


 ~=~

NEW

蓮華

女性 15歳

身長165㎝

和鬼

取得称号

・紙一重の天才 ・暴走姫 ・サークルの姫 ・ちょっと腐ってる

 『鬼ヶ島』の首長家系の一人娘。悪政蔓延る政治に翻弄されてがんじがらめのまま、エリアナ女王国と事を構えてしまった家臣の責任を負わされた。リーダーとしての気概はあり、民思いではあるがあまり頭の回転は良くない。地頭良い為、自己流の理解が可能な研究方面などにはとても才能がある。描画や製図が得意。

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