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新たな移入者第二段

 ほーい。今日も儀式的な式典があるので僕も正装で玉座に座りま~す。もちろんクロです。

 今日は昨日加わったサキュバスの代表となったセレナーデにティアラの戴冠式と、職位と権威のブローチの贈呈式を執り行う所からスタート。かなりやつれた表情なのは僕のせいですけど、どうしようもないので諦めてティアラを彼女の艶やかな紫色の美髪の上に載せる。そして、彼女の唇に口づけし、ブローチを胸元に留め、彼女のために用意された新たな女王の玉座へ片手を取り導く。少々顔が赤いが、嬉しそうなので良し。

 その式典が落ち着いたところで小休憩。

 ここから何とか今日到着できた新規移入の種族、吸血鬼(ヴァンパイア)族の挨拶を受ける。吸血鬼族は真祖と呼ばれる親が人間を中心にした眷属を増やす形態の種族。しかし、通常の繁殖ができない訳ではない。吸血鬼になる以前の種族との交配に限定されるという縛りはあるが、有性生殖も可能な意外と普通の種族だ。

 吸血鬼も所謂魔族である。この真祖と言われるグループは実は全員親子か姉妹。真祖と呼ばれる吸血鬼には男性は存在せず、真祖は別名を大母(マザー)と呼ばれている。眷属の母としてそのグループを統べる女王でもあるのだ。あと現在は存在していないとされるが、過去には男性も存在していた。何故か男性の真祖は性格が荒く、人の領域で悪さをし過ぎて吸血鬼狩人(バンパイア・ハンター)に皆討たれて滅びたか、強大すぎる故に封印されているという。


「我々の受け入れ、感謝する。私はこの5つの一族をまとめる祖、吸血女帝(ヴァンパイア・エンプレス)のカサブランカと申す」

「こちらこそ来てくれて助かるよ。吸血鬼族の戦闘力と隠密性、あと……ワイン醸造の腕は聞き及んでいる。こちらではそういう仕事を中心にお願いするよ」

「御意にございます。それでは、私の娘達を紹介いたそう」


 一際美人で胸腰尻のメリハリが凄いのに、ピッタリくるドレス姿の女帝カサブランカの後ろに居る、4人のいずれもタイプの違う吸血鬼の少女が前に出てくる。名を呼ばれると一歩前に出て一礼し、一言二言の挨拶を加えて元の位置に戻る。この4人はカサブランカの本当の娘らしい。カサブランカも今では女帝だが、連綿と受け継がれた名のある吸血鬼一族の末裔とのことで、こちらも魔族なのだろう。

 最初の一人目が長女のアリア。キリリとした目と真紅のポニーテールが印象で真面目な感じ。

 2人目が次女のコッピア。柔和で大きな垂れ目気味な目に両目じり下にほくろが二つずつ。ツーサイドアップが凄く目立つ。

 三人目は三女のツーリオ。眠たげながら大きな目と小さな口、ジト目……めっちゃボリューミーな三つ編みが印象に残る。あれ普通に鈍器になるんじゃんないかな?

 四人目がカルテ。一番気が強そうなツリ目に片目を隠している。金属の串に合わせて複雑に編み込まれた4つの塊が凄く気になる。なんでああいう髪型にしているんだろう。


「へ~。という事はけっこう農業もできるんですね」

「ええ……と言いますか、我々は元来勘違いを受けておりますが、血しか飲めないことはありません。むしろ、血を欲するのは特殊な時に限りますので」

「という事は日光に弱い以外は普通の人間と変わらないのでは?」

「いえ。我々は身体能力が土地を持たない魔人並みに有ります。また、魔法もそれなりに使えるので」

「ほうほう」


 カサブランカさんの話では吸血鬼の基本産業は農業とのこと。特に彼女らはトマトとブドウに目がなく、基本的にその二つが主食と嗜好品。他の食事もとれるが、トマトが好きすぎて基本トマトと何かを合わせた料理を好むとのこと。これは『豊穣の迷宮』入り決定か?

 また、ブドウを栽培してのワイン造りが得意らしい。中でも魔素を多量に含ませて魔物化させたブドウでのワイン作りが伝わっている。そのワイン欲しさで白金貨が飛び交うオークションが巻き起こるそうな。僕はお酒は興味ないので、そのブドウで作るぶどうジュースの方が飲みたいね。そっちも美味しいらしいし。

 樹龍の管理地から出る際に苗を持って来ているらしいので、しかるべき場所ならばすぐにでも栽培可能だという。それからヴァンパイアは日光に種族的に弱いのはアンデッドだからとかそういう理由ではない。単に色白で日焼けしやすいからとのこと。今応接間に居るカサブランカやアリア、コッピア、ツーリオ、カルテの全員が青いと言えるレベルの色白だ。

 それから真祖と親子の口づけを交わして生まれる吸血鬼はアンデッドではない。しかし、真祖以外の吸血鬼が無理やりに契約の口づけを行い吸血すると、アンデッドで吸血鬼ですらない下級吸血鬼(レッサーヴァンパイア)屍鬼(シキ)が生まれる。それらのような種族は吸血衝動がとても強く、その欲の赴くままに血を啜る。それは病のように屍鬼を増やし、血を大量に吸い上げることで位階を上げるのだという。そのような来歴の吸血鬼は基本的に粗暴で傲慢。危険な存在だという。上級吸血鬼にまでは至るが、真祖のように本当に規格外な力を持ちうるかと言うと異なるとのこと。


「カサブランカさんなら僕に勝てそうですか?」

「い、いや、貴殿が何を考えているか解らぬが、不可能と断言できましょう。私がどれだけ力を解放しても神代龍族と戦うまでがやっと。彼奴らとでも、決着はつきますまい」

「そうなんだ。……なら、稽古の相手にはできそうだね」

「は?『ま、まさか、私は地雷を踏み抜いたか?』」


 カサブランカ率いる吸血鬼は戦闘力が高いので、ゲンブが暗部戦力として欲しがった。表だった戦力は龍族が張れるが、大味な戦いをする龍族ではできない偵察後の急襲や破壊活動ができるだろうところに目を付けた。淫魔族との連携はこれ以上ない相性だと思う。また、スルトの『豊穣の迷宮』を見学したところ、お世話になり続けていた樹龍の王妃ダフネさんまでここに居て腰を抜かしたり、樹龍が勝手に植えた世界樹が迷宮の第一層に青々と葉を茂らせているのに呆然としていた。

 ここでブドウとトマトを育てたいと言うので許可。別に断る理由もない。

 それからこれは余談。樹龍の女王ダフネさんであるが何故か僕の寝室に来るようになった。カサブランカと共に。どうも、カサブランカの一族が作るワインは彼女の大好物らしく、彼女はここで彼女らがワイン造りをやらないかと密かに考えていたらしい。一言もその計画を口にせず、また一つも行動に起こす前に僕がここにカサブランカの一族を移入させたお礼とのこと。

 それからカサブランカ一族の特殊な酒の製法と、海洋熟成というここで取り組んでいる新たな知識により……利き酒部門が開設された。なんでも吸血鬼の中に酒の目利きができる『ソムリエ』という称号持ちが居るらしく、彼らが『水源の迷宮』でかなりのプレミア価格でボトルを売り出し始めているとのこと。


「吸血鬼族も馴染ましたね。他に必要な物はありますか?」

「……あるとするならば、娘達の婿くらいですな~。ふふふ」

「別に構いませんよ? もう知ってのことかもしれませんが、僕の妻が70人超えてることに忌避がなければ」

「むしろ私としてはよく70人ぽっちで回せているとこれまでの奥方達を尊敬するよ」

「ははは、ひとえに妻達の頑張りでしょうね。僕はその時の記憶がないので、何とも言えませんが」

「……『あぁ、本当にな。アレがわざとだとなるなら妻を殺しにかかっているぞ。魔人とは言えおかしいだろう。あのスタミナは』」


 カサブランカは基本的に『豊穣の迷宮』で、作業着姿のままブドウの手入れをしている。族長という意味の『女帝』という称号が不似合いな農業女子だった。いや、農業母かな? その娘達もよく見るとトマトの畑やガラス温室の中でせっせと収穫している。その周りには光系の龍族も居る。最近では一日農業体験の乗りで龍族があちこちからここに来てるから。

 吸血鬼の作るトマトとブドウは超有名で、龍族間でも珍重されているという。それがここで作られ、なおかつ樹龍の女王ダフネが豊作祈願していると知ってからは特に多い。

 だいぶ前から勝手に居着いていた樹龍だけれど、あの意味の解らない不思議な踊りは豊作祈願の舞いだったらしいね。僕が居る時間に薬草畑に居ただけで、別のタイミングでは別の畑の周囲を一列になりながら歩み舞う姿が見られていたらしい。スルトの方針でここは自給自足。外に売る分には構わないが作物は買わないと豪語している。だから情報が洩れるのが遅くなりはしたが、吸血鬼族の避難を含めた移入に重なって広まった。

 それがある意味問題も生んでるんだけどね。

 それは行商人がつてを求めて南方領に押し寄せていることに始まり、国外の…特にアルジャレド通商連合からの商人が食いついて来た。先に言っておくが、僕らはまだ国外への売り出しはしていない。売っているのはまだ食糧難の尾を引いている元ファンテール南方領や、故郷を取り戻そうと北方領へと挑んでいる元住民の皆さんへの支援品だ。販売と言っているが、こちらは総赤字である。譲渡だからね。それをカムフラージュというか、対外的なイメージ維持のためにそういう言い方をしているだけ。なので、現在は全部拒否している。しかし、この行動で新たなフラグが芽を出すとは僕も気づけていなかった。


「旦那様、アポロン組とおっしゃる黒い執事服の方がお見えなのですが……」


 ツェーヴェ並みに執務が得意だったサキュバスのセレナーデが応対してくれたのだけど……。アポロンのヤツ、変な服装の集団にしたな~。僕らの屋敷の前に黒い染ガラスの眼鏡に黒いハットを被ったごついスーツ姿のエルフが数人いた。いや、1人はハイエルフのエリックだな。僕が玄関から出ると、帽子を取って深々と一礼するエリック達に一応話しかける。

 よくわからんアポロンの趣味で彼について行った男性のエルフは全員真っ黒なスーツの背に、太陽のマークとフトアゴヒゲトカゲが刺繍されているスーツを着ている。アレがカッコいいかはこの際置いといて、僕はアポロンからの直筆の書状を開いて目を見開く。アイツも面倒なことになってんな~……。


 ~=~


・成長記録→経過

クロ

オス 生後165日~170日

主人 エリアナ・ファンテール

身長130㎝

全長17㎝……身長12㎝

取得称号

~省略~


取得スキル

~省略~


 ~=~

NEW

カサブランカ=ブラッドエンプレス

女性 1500歳程

身長175㎝

真祖吸血鬼

取得称号

・吸血鬼=暁の真祖 ・トマト狂い ・ブドウ愛好家 ・農業女子

取得スキル

+闇魔法(上級) +隠密 +謀略 +短剣術 +吸血 +農耕 +調理 


 ~=~

NEW

アリア=ブラッドプリンセス

女性 500歳程

身長165㎝

真祖吸血鬼

取得称号

・暁の娘 ・利き酒名人 ・農業女子 ・酒造女子

取得スキル

+闇魔法(上級) +短剣術 +農耕 +醸造 +毒物完全耐性 +吸血

 カサブランカと人間の男性の間に生まれた最初の娘。能力傾向としては農耕と酒造に特化しており、戦闘よりも生産活動に意欲旺盛。無類のブドウマニアであちこちで集めた品種で葡萄酒を作る。意外にも白ワインが好き。血が苦手。


 ~=~

NEW

コッピア

女性 500歳程

身長165㎝

真祖吸血鬼

取得称号

・暁の娘 ・暗闇の暗殺者 ・始祖帰りの強き者 ・農業女子

取得スキル

+闇魔法(特級) +血裂(ブラッド・バースト)(コッピア固有) +暗殺術 +農耕 

 カサブランカの家系、暁の吸血鬼の始祖の能力を開花させた先祖返り。本人はあまり使いたがらない。塁に漏れず農業女子。淡々とした作業が得意で農耕における作業の殆どを彼女が取り仕切る。無類のトマト好きで一日一回はトマトを摂取しないと気分が沈んだままというめんどくささもある。


 ~=~

NEW

ツーリオ

女性 500歳程

身長150㎝

真祖吸血鬼

取得称号

・暁の娘 ・農業女子 ・植物学者 ・アロママニア

取得スキル

+闇魔法(上級) +農耕 +造園 +香水調合

 人間とカサブランカの間に生まれた三女。姉2人と父親は違う。吸血鬼としては戦闘面で劣るものの潜入や工作に長けた性質。造園が得意でなかでもバラ園の管理が得意。様々なバラの品種を揃えていた。また野草や薬草に詳しくある程度の調剤と香水の調合が得意。この香料も彼女の武器の1つ。


 ~=~

NEW

カルテ

女性 500歳程

身長155㎝

真祖吸血鬼

取得称号

・暁の娘 ・美容師 ・農業女子 ・スタイリスト ・メイクアップアーティスト

取得スキル

+闇魔法(上級) +農耕 +散髪 +特殊調剤 +洗髪

 カサブランカの4女。姉達と父が違う。農業も好きではあるが、夢はスタイリストやメイクアップアーティスト。姉たちの髪も毎日彼女がセットする。染料や整髪剤、香料、保湿剤などの特殊な調剤に特化したスキルを持ち、植物にもそこそこ詳しい。また、カサブランカの娘の中で一番器用であり、作戦参謀もこなす頭の回る末妹。


 ~=~

・記録

樹龍妃ダフネ

女性 20000歳程

身長175㎝

神代龍族→ユグドラオン

取得称号

・神代龍族 ・大地のいとし子 ・すべての樹木の母 ・蟒蛇 ・樹龍の長

 神代龍族の一角を担う樹龍の長。動物的観念と植物的観念の入り混じる不思議な性格の女性で、家事雑事は得意中の得意。子供に好かれ、母性に満ち溢れている。ただし、マイペースが過ぎるので真面目に相手をしようとすると疲れることは間違いない。サキュバスと見紛う精剛の上で好色な性格、また酒も好み蟒蛇。美人ではあるが、このような欠点の塊であるが故に未婚。

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