新たな移入者第一弾
はい。お疲れ様です。僕ですよ~。皆の何でも屋、クロです。
今日はとある移入することが決まった種族の代表と会談することが目的で、僕とエリアナを筆頭にした女王が勢ぞろいしている。女王はその種族を表す意匠をあしらわれたティアラと、その職分と職位を表す勲章が特殊なブローチに組み込めるようになっている魔道具を装備している。これが権威の象徴であり、女王の誇り。働かぬ特権階級など必要ないので、ティアラとブローチを奪われる女王は特別扱いされない。そして、ブローチは魔道具なので、実際に仕事をしていない『名誉称号』のような物に成り下がった物は自動的に消えていく。職位と職分が少ない女王はその分権威が下がる。
その女王集団の目の前に傅くのは、今回移入してくる『淫魔』族の女王様とそれに繋がる一族たちである。
正しくは女性がサキュバスで、男性がインキュバス。カテゴリーとしては僕がだいぶ前に新種族として認定した『魔族』の括りである。彼女らの来歴が魔人だからだ。そのサキュバスの女王様がこれまでつけていたティアラを取り、控えていた文官に預ける。これでサキュバスの王族としての王権が失われたことになるが、これは儀式であるのでやっているだけ。『臣従します』というアピールの意味がある。そして、女王様の後ろからそっくりなサキュバスが出て来る。彼女はここに臣従する上で必要な人質としての役割があるお姫様だ。
「それではこちらは私、オフェリアの娘でセレナーデです。良しなに」
「クロ様、女王の皆様、よろしくお願いいたします」
この儀式は一応セラとケイラの時もやっている。やらないと権威が残れば面倒なことになるとのことで。宝物庫にはファンテール。グランデール、ラザーク、エルフ王国の各種王権を誇示するアイテムが博物館のように並べてある。無下に扱う気はないからね。歴史ある物ではあるので。
王家の血が残るのみで、国家の体をなしていなかったサキュバスの集団。数は意外と多く1000人弱程は居る。ほとんどが女性のサキュバスでインキュバスは1割ほど。元々そういう種族差とのこと。淫魔は一夫多妻が基本形で、一夫一妻はほとんどあり得ない。一妻多夫もほとんどない。多夫多妻も普通にあり得る。価値観が違う故に、宗教観でそういう物を取り締まり迫害したがる人族の恰好の的になった。迫害され、樹龍や樹妖精の管理している森で細々と繋いでいたが、それも人間の情勢不安がささやかれ……不安が爆発しそうなタイミングで、ここに移入が叶ったとのこと。
応接室で元女王のオフェリアさんと長女のセレナーデさんがしっかりと説明してくれる。
宗教的な連中の妄信は本当に恐ろしいところがあるからね。人間の宗教では僕ら魔人は悪の化身として伝えられているようで、エリアナ女王国の有力者に魔人が複数折ることで喧嘩腰な態度をしてくる国もある。そもそも今のところ関わりがないので、こちらは外交的に無視を決め込んでいるけど。
「しかし、クロ様までもが魔人様だったのですね」
「そうですね。ここの周辺は僕の子供達……。眷属が護りを固めています。それなので他にも理解ある種族が見つかるなら、移入を勧めてみてください」
「感謝いたします。ですが、我々はどのような仕事をして貢献すればよろしいでしょうか?」
元来、淫魔は読んで字のごとくの生物と勘違いされている。そういう力を持つ人型の生物と認識するのが正しい。闇魔法の魔法適正が高く、空も飛べる上に影に隠れて隠密行動までできる。また、魅了や精力吸収という種族固有スキルがあるので、それを活かすことができる。
僕だけではなく、ここに居る魔人ではゲンブとイオ、ヴュッカが欲しがった。
ここに居るサキュバスとインキュバスは全員美形。種族的にそういう種族なのだろうか? 違うらしい。言っちゃ悪いが不細工もいるが、そういう個体もそういう生き方をする。どこかで特技を活かしているのだ。ゲンブは隠密戦力として、イオもそれに近いな。ヴュッカはウエイトレスやキャバレーのダンサーなどに欲しがっている。サキュバスの伝統的な衣装らしいのだけど、目のやり場に困るぴちっとして布面積が極端に少ない色白の肌が印象的。
王族親子はどちらもボンキュッボン。使用人らしいサキュバスはいろいろいる。サキュバスは本当に書籍や伝聞のせいでいろいろ勘違いされているだけなんだね。ツェーヴェがその辺を凄く興味深そうに聞き込んでいる。そういう歴史というか物語り的な物好きだもんね。
「そうですね。そのような職分でしたら問題なくご要望にお応えできます。ですが、戦闘力としてはそれ程高くありません。我々は魔法特化種ですので、その辺りは申し訳ありませんが……」
「それはその通りです。僕達も無下に扱うことはしたくありませんので、適正試験の後に選択していただくことになると思います。それではこれからもよろしくお願いします」
淫魔族のテリトリーは僕のオリハルコンの大樹の芽がある黒鋼の森中心部に置くことにした。移動に時間がかかっているもう一つの種族とも懇意にしているとのことなので、僕の管理している『黒鋼の森』に棲んでもらうことにした。もう魔物も疑似魔物を生み出さない限りは元ファンテール北方には居ない。僕の縄張りという主張はされているので、他の魔境からの侵害もないんだよね。そもそも広大すぎて使い道のない土地ばかり増えられても困る。
なので僕が大切にしているオリハルコンの大樹を守ってもらおうと考えているのだ。
淫魔族も普通に人族と似たような生活をするようで、基本的に栄養摂取は経口の食物摂取。どうしようもない時のみ精力を吸収するとのこと。それから……なんでか淫魔族が勝手に僕の眷属になってるのは何でだろう……。凄く困る。まぁいいけど。
淫魔族の為に迷宮核を使って彼らの拠点を設計し、管理権をセレナーデに移す。……これも定番だけどセレナーデは人質ではあるが僕の奥さんにするために差し出されている。セレナーデならば特に大きな問題もないという事だ。それに僕の眷属化された段階で彼女らは僕に逆らえないし。
「ここは元は人間の国が有りませんでしたか? 何百年前かは忘れましたけれど、この周辺にはそれなりに大きな国があった気がするのですが……」
「そうですね。最近滅んだんです。このところ人間関係で動乱が多くありまして、それの影響ですよ」
「はぁ……。この周辺も大変なのですね~」
「大変ではありますが、この周辺は他とは比べ物にならない程安全です。安心して居住地の開拓を進めてください」
淫魔族は伝承とは異なり、様々な技能を持って勤勉だった。また、どちらかというと使用人業務に関してとても優秀だった。家妖精と比べるのはさすがに可哀そうだが、通常の人間が使用人として入ったとして、彼女らのようにはなかなかできない。魔法が得意というのも本当で、いろいろな魔法が使える。適正魔法でなくても努力すれば魔法が使えることはツェーヴェの例があるので知っていた。けれどここまで種族的に魔法に適した種族は初めて見る。
魔人もそれに近いところはあるが、やはり一族的に継代してきた伝統の技術と、ポッと出の神技とでは趣が異なる。魔人の技は尖っていて汎用性がきかない。淫魔の技はそういった細やかな部分にも対応できる柔軟さが見受けられる。これは大当たりを引いた気がするね。
ただ、問題だったのはここから。
人質兼奥さんのセレナーデは百歩譲ろう。しかし、その横で凄く晴れやかな笑顔で並んでいるお母様のオフェリアさんはどういう理由で僕の寝室へ? これからここで繰り広げられることは知っているはずでしょうに。
「いえね? セリアナ様から若い子達が苦労していると聞いたもので……。恥ずかしながらセレナーデも今日が初めてですので、そのサポートのために。あと、残りの娘達でも手に余るようでしたら私がお相手しようかと」
……まぁ、ツェーヴェを長い時間問い詰めて、朝に見るあの死屍累々の理由を聞きだしたけども。それの解消にサキュバスを呼んだな。昨晩来た樹龍のコキアか樹妖精のツバキか……。来てしまったものは仕方ない。もう何組目の親子丼か解らないけど、この親子も受け入れるほかないのだろう。
やり過ぎないように監視しているハーマさんに一瞥すると、深く頷かれたので僕は深いため息の後にベッドに座って臨戦態勢に入ることにした。
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翌朝。僕はいつもと変わらない朝を迎えた。ハーマさんはよっぽどのことが無いと手を出さないので、基本は傍観するだけだ。その目力が強く、鷹のようなツリ目の老メイドさんは頬をひくひくと痙攣させている。僕はいつものように何事もなかったかのように隣の自室に帰って朝風呂に入り、身を清めて今日の仕事を確認するために城の執務室へ向かう。今頃はハーマさんが死屍累々の処理をしてるはずだ。
その処理方法もツェーヴェから聞いた。
ほとんどの女性が体力切れらしいので、大浴場に張られているお湯に体力回復ポーションと同様の効果を出す入浴剤を曝露。そこに白目をむいて至り、ちょっと他人にはお見せできない表情の皆さんを投げ込んで行くそうだ。効力が凄く強いらしいので、溺死することなく浮いてくるらしい。ついでにその皆さんにもそこで朝風呂に入ってもらい。その間ハーマさんは部屋の処理。
うん。何とかなるね。いつもよりちょっと疲れたような気はするけど、サキュバス6人が増えても何とかなる。たぶん、もっと数がいても問題ないと思うけど……。僕から妻を増やすような発言はしない。それを言質を取ったかのように利用するセリアナさんに聞かれたら本当に増やされるので。
「まったく、どうなってるんでしょうか……。いくら魔人とは言っても、彼は規格外過ぎる。まさか、クイーンサキュバスを伸すなんて」
僕は後から知ったんだけど、オフェリアさんは普通のサキュバスではなく、上位種のクイーンサキュバスだったとのこと。ちなみに、娘のセレナーデはプリンセスサキュバス。どちらもとても強い能力がある個体らしいよ。知らんかったけど。
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・成長記録→経過
クロ
オス 生後165日~170日
主人 エリアナ・ファンテール
身長130㎝
全長17㎝……身長12㎝
取得称号
~省略~
取得スキル
~省略~
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NEW
オフェリア・ハイゼン
女性 500歳程
身長170㎝
淫魔・夢魔
取得称号
・元淫魔の女王 ・床上手 ・艶美の魔導師 ・亡命者 ・乱れる母
取得スキル
+社交 +謀略 +内政 +魅惑(種族固有) +魅了 +精気吸収(種族固有) +悪夢食い(ドリーム・イーター)(種族固有)
淫魔・夢魔族の女王だった女性。既に王権を維持できる程の種族的勢力もないので血筋として継承されているのみ。種族的に魔法に長け、攻撃魔法よりも利便性の聞く生活魔法や小回りの利く派生魔法が得意。また、魔人由来の種族であり、クロの提唱する新種族『魔族』に類する。個人にもよるがオフェリア自身はとても好色な性質。娘は1人で以前までは逆ハーレムを作っていた。
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NEW
セレナーデ・ハイゼン
女性 200歳程
身長 160㎝
淫魔・夢魔
取得称号
・元淫魔の姫 ・清き淫魔 ・卓越なる魔導の天才 ・亡命者 ・母思い
取得スキル
+魔法発動効率化 +詠唱破棄 +魔法開発 +大魔法瞬間発動(セレナーデ固有) +魅惑(種族固有) +精気吸収(種族固有) +悪夢食い(種族固有)