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たまには家でのんびりと過ごす

 家に帰る頃には3人は完全に夢の中だった。ブラックナイト号についている子供用の座席で、いい顔をして『ぐてん』となっていた。『王祖の迷宮』に用意したブラックナイト号ようのハッチからホバリングしながら入る。そのまま第6階層の屋敷の横、ブラックナイト号用のメンテナンスハウス前に着地。

 そこには赤と白の手旗を持つエルンが居て、僕が娘を一人ずつ降ろしていくとそれを家令妖精へ手渡す。全員が渡ると、子供部屋を用意したとのことでそこへ連れて行ってくれた。

 僕はブラックナイト号に労いの為に大ぶりな魔石を与えたり、僕の魔素を適度に流し込んでおく。ブラックナイト号はあくまで知能のあるゴーレムだ。有機的な食事ではなく、必要なのは魔素や魔力となる。味を感じるのは魔石のようだが、効率だけを見るなら魔素を直接流す方がいい。


「さてさて、今日は風呂に入って寝るかな」


 買い食いのし過ぎで空腹感はない。連日の視察での疲れもあって、家でのんびりしておきたいところだ。大浴場で数人の奥さんズと遭遇し、視察中の話をいろいろとしておく。夜が更けている訳でもないので、比較的若い奥さんばかりだ。彼女らは聴き訳もいいので、強引さも少なく素直でいい。

 めんどくさくないとも思う。メリアとかジュネ、いつの間にかここに遊びに来るようになった白龍王ブランジェリアなどはいろいろぐちゃぐちゃとごねるから面倒なのだ。

 僕はゆっくり風呂を楽しみ、久しぶりに蜥蜴姿で専用のミニ布団に入って寝る。たまにこうして小さくなっていると、最初の頃を思い出して感慨深くもあるんだ。僕が生まれて5か月が過ぎているが、まだまだ僕も年齢なりの生き方をしたいもである。蜥蜴状態の寝姿、うつ伏せになり手を後ろへ流し睡眠の姿勢。お休み。


 ~=~


 翌朝、蜥蜴姿のまま屋敷の中を歩く。この屋敷のメンバーは通常の人間とは違うので僕の位置をちゃんと理解している。僕がセリアナさんを救出した時は、外套で隠蔽していたが足元を走り込んでも気づかれなかったが……。ここでは10mは距離があっても大概見つけられる。そして捕まえれて一緒に食堂へ行くのだ。最近は僕がごはんを作ることは稀だ。作らないことはないけど、僕がやると家令妖精や家妖精が泣くので。

 趣味の範囲でお菓子作りとかなら彼らも手伝ってくれるだけで何も言わないが、仕事を取られてしまっているその状態はやはり思うところがあるらしい。同じように僕が工房以外の自室の掃除をしているとエルンが泣く。なので僕以外が触ると危険な物品が多い工房の外は基本的に頼んでいる。あと、衣服の洗濯も。たまに僕の服の臭いをエルンがすーはーしているのを見て見ぬふりをしている。怖いので。

 食堂でさすがにをしにくいので、人化し食事の席に座る。僕は上座の一番いい席に座るように言われているので、そこに座って食事が配膳されるのを待つ。この屋敷は人間族達が取るようなマナーや社交における礼儀は必要ない。皆仕事の時間が決まっているとは限らないし、ヴュッカなどは緊急事態となると飛んで行くので、おちおち落ち着いた食事も難しい時がある。今は落ち着いてきている龍族の移入当初などは飛び回っていたし。

 あと、ツェーヴェは食事しながら本を読むのはやめよう。新聞なら許すから。

 二日酔いになっているグループもあれば、朝からガツガツと詰め込んで職場へ直行する元気な子もいる。二日酔いグループはエルンから特性の青汁と貝類のスープが出されていた。


「それにしてもここ最近平和なんだけど、皆何か知らない?」

「え? 何のこと? 北方も南方も確かにくすぶってる程度だけど」

「あ、いや、そっちじゃなくてさ。少し前まではけっこうな人数が大寝室に来てたのに、ここ数日一気に人数が減った気がして。まぁ、僕としては静かでいいんだけど」

「あ~うん。こっちにもいろいろな理由があるんですよ~」

「まぁ、深くは聴かないけどさ。ストレスにならない程度なら相手するし、節度さえあれば否定はしないから。よし、今日は僕も屋敷でいろいろするかな~」


 そう言って食堂から出た。よくわからないが奥さんズの最近の様子は前までとは違う気がする。もちろん僕も意識を少しづつ変えている面があるから、その影響を受けているのだろうか? 最近僕よりも奥さんズの方が疲れている気もする。その辺りを気にしながら、今日はエリアナの方にノエラが行っていることを確認して工房へ入る。

 最近、僕の付与の力に関して気づいたのだけど、付与という能力はいろいろ制限があった。

 その一つの物品にできる付与の限界数と、術式の複雑さに依存しているのだろう。付与術を重ね掛けしていくと、簡単な術でも最後の方は僕の内在魔素量でも厳しい時もある。それに付与を行える物品にも限界があった。大きさとかではなく、物品の品質に明確な差があった。武器や魔道具などのパーツの1つ1つに付与すれば能力向上が有るかと考えたが……。組み立てると統合されていた。しかし、何故だか位階の上昇で僕のできることも増したのか、それがいくつかのパーツ毎の塊であれば問題ないようになるなどの細かい変化があるのである。

 それに僕が使える生産系スキルは他にもいくつかあるので、今日はそれも込みで検証していく必要があるだろう。


「鍛冶スキルも変化してる。これまでは鋳造作業や木工には出なかったのに、可能になってるな」


 鍛冶というスキルは金属加工に関連するスキルだ。なのに鋳造はその中から外れていたし、彫金などの別スキルの存在する物は含まれなかったのだ。それが複数統合されていることに最近気づいた。これは反則だと思うのだが、金属の糸で裁縫スキルを使うと鍛冶に溶け込んでいる裁縫スキルの効果と鍛冶の効果が別個に出るのだ。普通、1つのスキルの効果範囲は一つのはずなんだけどね。複合スキルも、複合スキルとして発動される。僕がそういう裏技を使うと強化倍率がおかしなことになるんだよ。

 これはいろいろ周囲の職人さんのスキルを見ても僕にしか見られない傾向だと解った。

 何がどう働いているのか解らないが、ますます気軽にいろいろ作れなくなってしまった気がする。素材面でもそうだけど、道具は使う側の技量と道具の質が伴わねば100%の力を発揮してはくれない。それはどんな道具にも言える。武器であろうが、工具であろううが、魔道具であろうが同じこと。

 今日は錬金術スキルを応用してよく使う銃器の掃除と点検をしておかねばならない。僕の銃はほとんどがバレルはオリハルコンに切り替えているが、最近は魔素添着弾の改良と僕の魔素添着能力の向上から魔素摩擦による疲労が大きく、socomMK109のバレルは完全に逝っていた。ライフリング機構の部分は一部すり減り、致命的だったのは銃口から3㎝付近に亀裂が発生している。この前の『黒焔(弱)』が原因だね。オリハルコンは物語や御伽噺の中でもよく登場する伝説吸金属としてはミスリル、アダマンタイトと並び超有名な金属。ミスリルとアダマンタイトの合金で魔素順応性のが高く、凄まじい硬度の金属だ。それがこのざまだからね。


「わ~……ついにオリハルコンまでダメにしたの?」

「お、ツェーヴェ。仕事はどう? 派遣した教官候補は使えそう?」

「えぇ、基本的なことは体外できたわ。身分さとか、これまでの固定概念は初日に躾けたから問題なく改められたし」

「内容は聴かないでおくよ。……それで、ヒヒイロカネなんだけど」

「アレはダメね~。脆すぎるわ。祭具や魔道具、魔法発動体としては有能でも貴方の求める使い方は無理」

「なら、やるしかないか」

「な、何する気?」

「解ってるんじゃない? オリハルコンとヒヒイロカネを合金するんだ」


 さすがのツェーヴェも顎を外した。両手で顎を嵌め直し、僕に本気でそれをやる気か問うてくる。うん。そうしないと扱いにくい技もあるし、どのみち販売したり流出は無理だと思う。土妖精のレレすらオリハルコンのインゴッド作りは1日一本が限界。僕なら数十本は行けるとは言っても、あまり多くはできないだろう。地味に地味にやって行く。昔の偉人がオリハルコンを開発したように、僕も新しい境地に登り上がってみたいからね。

 それに伝説級の金属や鉱石、宝石はこの世界にはいくつもある。空気よりも軽い『浮遊石』。深海のいずこかにある『コンペキショウ』。各属性の属性魔力へ変遷した魔素が滞留して結晶化した高密度な魔素石。

 挙げればきりがないが、お金も人脈も集まった。時間もたっぷりあるんだから、のんびりとそういう研究もしていこうと思う。ヨルムンガンドにもこういう方面はら協力してもらいたいし、副産物的に何か新しい技術が生まれる可能性もあり得る。それに僕がこういう作業をしているのを眺めるのが好きらしいツェーヴェ。最近は互いに忙しくて、最初に一緒に居たように肩を並べて……。いや、一緒の部屋で作業することも減ってしまった。依怙贔屓はしないけれど、思い入れというか……付き合いの長さによる差はある。


「やっぱり、貴方のその力は面白いわね~」

「魔道具を見てたんじゃなかったんだね」

「もちろん魔道具も見てたわよ? でも、私は使えない魔道具を調べるよりも、それを楽しそうに使っている人を見る方が好きなの」

「ふ~ん。そうなんだ。なら、これからも見にお出でよ。あんまり忙しくし過ぎても効率悪いし。こうやってだべりながら、ゆったりしようよ」

「ふふふ。最初の頃を思い出すわね」

「そうだね」


 セリアナさんに手を回してもらってツェーヴェの関わる各部署にも人が増えた。その分ツェーヴェも趣味の本集めや魔道具の話をカレッサとするようになっている。家に居れば僕とも話すようになるのもどおりだ。僕が生まれ、ツェーヴェと出会っておおよそ5か月。何だかんだ言って時間も過ぎ、僕も成長している。魔物として生まれ、魔人となり今では国家の象徴に祭り上げられるなんて不思議な爬虫類生を楽しんでいる。気になること、面倒なこと様々にあるけれど。これからも何だかんだのらりくらりと生きていくんだろうね。


 ~=~


・成長記録→経過

クロ

オス 生後160日~165日

主人 エリアナ・ファンテール

身長130㎝

全長17㎝……身長12㎝

取得称号

~省略~


取得スキル

~省略~


 ~=~

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