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ノエラの魔境見学砂の大地と芽吹きの山

 朝に強い子供達にたたき起こされ、朝早くからブラックナイト号に乗ってジオゼルグの縄張りへ飛んだ。一応、念話を送ったが、応答したのは眷属の『永遠の乙女』で隊長格となっている少女だった。朝早くから連絡したことを詫びて、今空の上で3姉妹と飛んでいること、顔見せの為に向かっている。必要なことだけを伝えると、少女は『承りました』と言ってくれた。

 それから以前の発着場へと飛んでいくと、念話に応答してくれた少女と……寝間着のままのジオゼルグが居る。立ったまま寝てないか? ジオゼルグも器用なことをする。

 ブラックナイト号に乗っていたノエラとグリム、アンネが寝ていたであろうジオゼルグに飛びつく。さすがに起きて驚いてはいるが、僕の氣を感じることから眷属、もしくは子供と理解してくれた。今日はチラッとこの『リゾートパークの迷宮』を見せるだけだ。ここは生産活動はしていない。砂漠やオアシスの保守管理や環境整備が主軸の場所だからだ。ここはジオゼルグとその眷属達の本部と言うだけで、人を招く意図はない。たまに眷属の子達や保護している未成年の子とプールエリアで浮いているらしいし。ジオゼルグは泳げないとのこと。


「この子がノエラ」

「あいッ!」

「この子がグリムヒルト」

「お初にお目にかかります。ジオ姉上」

「この子がアンネリーゼ」

「初めまして、ジオ姉上」


 元気に変事をするノエラと、ペコリとお辞儀をするグリムとアンネ。

 今日は遊べないが、タイミングを見て連れて来るのはいいと思う。ジオゼルグも今日は見せるだけと言って3人を案内しつつ、僕は眷属の子にお茶をもらってまったりしている。……いつの間にか大きなフルーツ園とサボテン公園があるのは何? 

 クーデリアという名前らしいリーダー格の少女に聴いたところ、どうしても環境の合わない薬草になるサボテンや薬になる果物、植物などをヨルムンガンドの依頼でここで栽培しているとのこと。なのでここにもエルフが数名居るらしい。労役のハイエルフでジオゼルグに飼いならされたメンバーとのこと。……高級品の果物がつまみ食いし放題だからな。

 ジオゼルグが娘達の相手をしている間に砂漠の周辺の話を聞いておく。ここに来たコンゴウもオアシスの魔境や砂漠の魔境で魔物を適度に間引きながら、姉の縄張りの主張を続けている。真面目なコンゴウのようにジオゼルグにも働いて欲しい物だが、クーデリアの話では彼女の存在はここで重石に成ることが重要とのことなので。僕が知らない範囲の事なんだろう。

 ここはラザークの中央から少し外れた場所。もっとも過酷な場所で人里から一番離れた未開の地のような場所だ。ここは魔物が集まりやすく、下手に空けると保護している幼い子が襲撃されてしまう恐れがあるのだ。今では位階の上がった『永遠の乙女』部隊が迎撃可能だとは言うが、主級の襲撃になれば被害は必至。優しいジオゼルグはその辺りも気にしてここを拡張しつつ、縄張りと人の境界のバランスを考えていると言うのだ。


「これがジオ様の信条なのです。守りは堅固に、のんびりと。大旦那様はわたくしどもの正体を既にお気づきかと思いますが、やはり人が住む以上はわたくしたちのような存在はなくなりません。わたくしはここで永遠にジオ様をお支えする所存でございます。どうか静かに見守っていただけると……」

「ははは。僕はそんなに手は出さないよ。よっぽどのことが無ければね。僕の方こそ君達にお願いするよ。ジオゼルグをこれからもよろしく」

「はい。承りました」


 ~=~


 ジオゼルグから丈夫なサボテンの鉢植えをもらい、3人はジオゼルグとの別れを惜しみつつブラックナイト号に乗って『紅宮』に飛ぶ。空を飛ぶことにも物怖じのないこの3人の将来が少し不安だが、砂漠エリアから森に入ると、ヨルムンガンドの遠鳴が響く。

 ヨルムンガンドの山の中を何やら巨大なイノシシが走っていた。魔物だね。その後ろには大蛇のゴーレムが物凄い速度で迫り、『ばくんっ……』と丸呑みにした。

 その蛇が鎌首を上げたのでそれを見ていると、頭部にヨルムンガンドが乗っている。手を振っていたのでそこに飛んで行くと、先に連絡しろと怒られた。あのイノシシは最近位階が上がって調子に乗っていたらしく、僕の只ならざる気配に驚き、逃げ出そうとしたそうだ。タイミングよくヨルムンガンドが張り込んでいたので、今倒したらしいが。

 ここからは大蛇のゴーレムに乗り移動。頭の上でヨルムンガンドの左右にグリムとアンネ、後ろからもたれかかるようにしているノエラの塊ができ上がっている。ヨルムンガンドは姉妹の中でも表情の起伏が少なく解り難いところがあるが、ジオゼルグと同じくらい面倒見はいいので新たな妹を遠慮なくかわいがって触れ合っている。その雰囲気をちゃんと掴んでいる3人も、遠慮なくヨルムンガンドに甘えている感じだ。


「栽培用に温室を増やした以外は特に変化はないよ? 3人が見ても面白くはないと思うし」

「茶菓子とお茶だけでも喜ぶと思うけど」

「それなら大丈夫。いろいろあるから」


 まぁ、ヨルムンガンドの心配とは裏腹に、階段からたくさん設置されている魔物避けの蛇型のガーゴイルや、朱塗りの鳥居を物珍し気に眺めている。そういえばヨルムンガンドに発注しておこう。この3人がブラックナイト号をいたく気に入ったようなので、似たような成長型の金属ゴーレムを作ってもらいたいと道中歩きながら伝える。ヨルムンガンドも自分の製作物であるゴーレムを褒められるのは嬉しいらしく、それには快諾してくれた。材料の問題があるので後日配送するという。

 『紅宮』の奥にあるヨルムンガンドの私室に案内された。

 あちこちに薬草やそれに類する植物、希少な草花の中に巨大な食虫植物を模した疑似魔物などが混じっているカオスな部屋に入る。部屋の奥には乾燥用の棚があり、各種薬草や虫、キノコ、樹皮などが置いてあった。さすがに異質な感じがあるようで、3人も興味は持つが触らない。ヨルムンガンドの話ではアレは全て香辛料らしいので、触っても食べても問題ないと言っている。……虫も香辛料になるんだ。

 ここに務めているキアント=ミアがお茶の準備をしてくれた。お茶を淹れる腕はヨルムンガンドが一番なんだとか。その合間にキアント=ミアはお茶菓子や様々な物を用意してくれる。ここでのお土産は魔法の砂時計をくれた。ヨルムンガンドのゴーレム製作技術は本当に高い。1分経つと砂が全部なくなるのだけど、その砂が自動で上に戻り、用事が無いと生き物を模した姿に変化するという変わり種の工芸品だ。


「本当に器用なことをするね」

「ん? そんなことないよ。これはおとーさんの作ってくれた錬金柄杓があるから余裕だし。コレ、神器並みの性能だからさ。僕の力をほとんど十全に使えるの」


 お茶菓子にパクつき、意外と子供の扱いの上手いキアント=ミアが相手をしてくれている間に一応近況を聞く。

 やはりエリクサーはヨルムンガンドの製作物が最上級。エルフ王国の王族出身という男性ハイエルフもそれに次ぐ物を作りはするのだが、ヨルムンガンドは術師タイプに特化した魔人。体内に収まる魔素量が僕と比べてもそれほど差がない程に大きい。そのヨルムンガンドが調薬し錬金術を交えて作り上げるエリクサーは、死んでいなければ下半身が千切れても元通りに生えて来るような劇薬だ。生えて来るとか恐ろしい薬だな。

 他の薬でもいろいろな薬草や様々なスパイス類を加え、飲み易さや味も改善している。

 あとは変わり種の薬の製造。一部の需要を満たすので作られている意味の解らない作用の薬品まである。特に『幼児化薬』って何に使うんだ? 『大人化薬』や『豊乳薬』は誰が依頼したか直ぐにわかる薬だ。こんな感じに個人の欲望が満載の薬もあれば、本当に意味不明な薬もある。『透明化薬』のようないろいろヤバい薬もあるが、市販はしていないとのこと。

 他は需要が多い夜関係の薬。ウチの奥さんズに依頼されて鋭意開発中だが、この前任意で試したハイエルフの1人がしばらく錯乱した後大変なことになったらしい。まだまだ完成には程遠いとのこと。一番簡単なのは僕の血から魔素の成分だけを抽出させてくれたら解決すると……恐ろしいことを娘が言う。冗談だと言うが、目が冗談だと言ってない。


「他にはどんな依頼が来るんだ?」

「アースさんからお茶の製作依頼が多い。ここ、僕の趣味でお茶も作ってるんだけど意外と人気。実は薬よりお茶の方が稼いでる」

「そうなの?」

「うん。薬はいろいろ面倒な認可とか医師の許可が必要だからそれ程売れない。ブービードラッグはそういうのは要らないけど、需要はごく一部だから販売数はそんなに多くない。でも、お茶は嗜好品の割にここでは文化として浸透してる。だからよく売れる。お金持ちの龍がお買い上げ」


 意外な話だ。僕は財務の方面には全く触らないので薬が稼ぎ頭なのかと思いきや、薬は物のついでレベルの稼ぎにしかならないらしい。どこかで疫病でも起これば飛ぶように売れるだろうけど、そんな売れ方はヨルムンガンドも嬉しくないよだ。薬は常に需要はあるが、無い方がいいと作る側のヨルムンガンドも思っていたらしい。

 ここの稼ぎ頭は断トツで『お茶っ葉』。様々なフレーバーがあり、ヨルムンガンドの作る乾燥茶葉はいろいろな層で人気が高い。別に全てをヨルムンガンドが作っている訳ではないが、既に『蛇印の乾燥茶葉』や『蛇印の焙煎マメ』はブランドとして有名とのこと。

 次が化粧品やスキンケア用品、それに付随してお香などだという。薬用品とも言えなくもないこの類でも、ヨルムンガンドの『蛇印ブランド』は幅広い年齢、身分の女性や男性から人気を博している。物によっては値段も手ごろで、効果もそれに比例するが使用感も問題ないとのこと。


「おとーさんは外務系の仕事多いもんね。中の商売はヴュッカお姉ちゃんに聴くといいよ。教えてくれる」

「ほう。……それよりも僕は君が僕の奥さんズに渡している薬のことを詳しく聞きたいんだけど?」


 ヨルムンガンドはしまった……。と言わんばかりに苦い表情をしたが、素直に教えてくれた。効果は体力増強と興奮効果程度とのこと。あまりぶっ飛んだ薬は僕に怒られるだろうと控えていたようだ。やっぱこの子が一番マッドだと思う。

 夕方までここの植物園を楽しんだ娘達をブラックナイト号に乗せて、『王祖の迷宮』に帰ることとなった。


 ~=~


・成長記録→経過

クロ

オス 生後160日~165日

主人 エリアナ・ファンテール

身長130㎝

全長17㎝……身長12㎝

取得称号

~省略~


取得スキル

~省略~


 ~=~

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