ノエラの蛇神神殿の迷宮見学
ほいほい。クロです。なんだか昨日は一日平和だったな~。
今日は爆走魔道列車ではなく、体調不良をうったえる妻達を置いて僕は三人の元気な娘をブラックナイト号に乗せて空から蛇神神殿へと飛んだ。先にゲンブと連絡を取り、ブラックナイト号で神殿の噴水広場に着地して欲しいと言われた。あの周辺は土地が柔らかく岩場が少ない。重量のある大型状態のブラックナイト号だと沈み込む可能性が高いとのこと。神殿の敷地内なら自分も直ぐに対応できるとのことでそこに降りることになった。
3人はとても楽しそうに空の旅を楽しんでいる。
もう少しで神殿の上部に来るという所で、おなじみの赤と白の手旗を持つ2人の女性の姿が見えた。直ぐにそこに降りて欲しいとわかったので、応答の為に縦方向の旋回を行い。きゃっきゃッ……とはしゃぐ娘達と共に神殿の広場に着地。なんか……ゲンブを模した像が多くないか? 以前はこんなになかった気がするんだけど? まぁいいや。ここでは何が起きてもおかしくないから。
敬称というか呼び捨てで呼んで欲しいと懇願されたので、最近ではクォアとリャエドと呼ぶようになった。その2人が揃って深々と頭を下げてくれる。その2人にノエル、グリム、アンネの3人が突撃。さすがは一児を育て上げた母親、子供への相手によどみがない。3人も直ぐに2人に懐き、ちょうど出て来たゲンブにも突撃し、直ぐに懐いた。ゲンブによりこの神殿をスタート地点に、ここを案内してくれるという。
「この神殿は……何故かはわからないのですが、私を模したいろいろな宗派の神像が送られてくるのです。置き場がなくなり、作者からの手紙で『どこでもいいから置いといて』とのことで」
「あちこちに置かれていると……」
様々な姿の神像だったり、宗教的なモチーフな像がある。一番代表的なのは女神像。女性モチーフだからね。十字架にかけられたゲンブ像、千手ゲンブ像、邪神みたいなゲンブ像、三面六臂のゲンブ像、亀姿のゲンブの上で座禅を組んでるゲンブ像。僕でも判るのはこの辺まで。詳しい名前がよくわからない仏様系のゲンブ像は解らない。というか、なんでこんなにあるのかもわからない。
しかし、ここはパワースポットとして在野の武人や冒険者、国仕えの将校などと、あちこちから武運と武技上達の加護を得に来ると言うから驚く。実際にここの軍人が中心にある大きな女神ゲンブ像に向けて五体投地している姿が目立った。必ずその神像の横にクォアとリャエドの小さな守護神像がある。凄い数とポーズのバリエーションだね。
神殿はあまり見るところもないと言うが、いきなり濃ゆい場所に当たった気がする。孤児院の子供達も今の時間帯は簡単な計算と語学の授業を受けている。3人が入って場を乱すのも気が引けるのでそのまま外から眺めて通り抜けた。水源では3人が飛び込もうとするのを抑えるのが大変だったと言っておこう。
そこから長い階段を下り、まずは宝飾品や化粧品を扱う店を外から眺めてウインドウショッピング。そのさらに外側には飲食店だ。ここで3人が飛びついたのはゲンブが買ってくれたドーナツ。揚げたてでまだ粗熱が取りきれていない。……その熱さなど物ともせずにがっつく3人に種族の違いを少なからず感じる。僕も普通にむしゃむしゃいけるけど。ゲンブは小さくフーフーしてから、美味しそうに口を窄めて熱さをごまかすように口の中の揚げたてドーナツを噛み締める。この子のこういう所を見るのは初めてだから、ちょっと新鮮。ゲンブは常に落ち着いていてクールな印象だったが、彼女にもそういう所があるのかと安心もした。
「最近ではゲンブ様プロデュースで、同じお菓子のお店を並べた通りなどが人気を呼んでいます」
「その他の主食の通りにも定食、麺類、バーガーなど……。様々に人気商品が次々と生まれていますよ」
蛇神神殿は決まった場所で食べるよりも小店舗が軒を連ねる。買い食いし近くの公園や広場での食事を推奨している。広場の中では子供?ではないのだろうが、本格的に働くには体格の足りない子供がゴミ拾いをしていた。なんでも買い食い文化で経済は回るが、衛生観念的な面ではマイナスもありこうしてポイ捨ては増えている。その解消に就職口にあぶれた真面目な若齢の労働者によい就職先が見つかるまでの繋ぎとして斡旋しているとのこと。逆に老齢で独り身となり、家族のいない老人の日銭稼ぎや、子供の小遣い稼ぎなど。雇われる側は多いので、何とかなっている。
ゴミの種類も燃えやすい物ばかりであるのと、食べ残しや生ごみも直ぐに回収されるので害獣や害鳥の居着き防止にもなるとのこと。
まぁ、働いてもらえてそういう人にとっての救いとなるのはいいが、マナーは大切だ。ポイ捨てとか腹いっぱいになったからと言って、食べ残しをその辺に捨てるのはいただけない。ゴミ箱もその事があるので撤去したらしい。ゴミ箱を置いておいても分別しない上に直ぐにあふれてしまうから。真面目に働いてくれる人が多いので現状はこの方がいいとのこと。
「複雑だね」
「はい。施政者である我々からは複雑な話ではあります。私やリャエドなどで運営しています孤児院の子供達も、そういった方法で成人後の資金を溜めている側面もあります。ですので法整備の上での罰金化なども難しく」
制度にするのは難しいものだ。それにここはゲンブのおひざ元という事で、ゲンブの私設部隊……と言うより私営の軍隊扱いの義勇隊がパトロールしているので、犯罪はかなり少ない。軽微な犯罪を全て抑止することはできないが大きな犯罪は初期から一貫して起きていないと言う。
美味しいおやつにごはんで満腹の娘達を案内し、武器屋や防具屋などのある区画や家具、調度品など様々な商業区画のある円形の神殿都市を見学して楽しんだ。そこからは連れて行こうか悩んだんだが……。ゲンブが別に問題ないとのことで、神殿の内部から関係者のみ入れる区画に入る。
ここは軍関係の騎獣や荷引き動物の繁殖などを目的とした迷宮牧場だ。
ちょうどいいことにガヴトヴォンの雛が生まれており、ちょこちょこと群れを作って歩いている。ガヴトヴォンの親も普通はこの時期は気性が荒くなるのだが、ノエラやグリム、アンネが近づいても特に気にしない。三人は雛ガヴトヴォンの真似でもしているつもりなのか、よちよち歩いている。たまたまだろうけど、スレイプニールの子馬も居たが、こちらはやはり相当警戒心が強く、いつもいる世話係の青年以外は近づかない方がいいとのことで近づけることはしない。
本命で……個人的に一番かわいかったと思うのがワーテルローの子トカゲだ。動きは完全に親と同じなのだが、体が小さいので全体にゆっくりに見えて可愛らしいのである。こちらも気性はとても大人しいので、攻撃してくることもなく、むしろ子トカゲの背中に乗る三人と共に楽しんでいる感じさえある。
「楽しそうですね」
「ワーテルローもクロ様のお子様だと氣から判断しているのでしょう。下位とはなりますが、ゲンブ様の眷属でありますから。安全な存在という事は先の2種よりも直に感じられているはずです」
「おう。そういう繋がりか。まぁ、一応危険が無いならやりたいようにやらせておいてあげよう。僕は子供達に見せられない場所を少し見せてもらおうかな」
これまでの一度も入っていないのだけど、コオロギの魔物を自家繁殖させている施設へ入る。ここはそれ以外にも少数のアースワームなどや、クライムゲッコーという壁に張り付くことに特化したヤモリ型の魔物などを動員して逃亡は阻止しているとのこと。物凄い密度が濃くて気持ち悪いが、蜘蛛人族や軍隊蜂族も最近はここに来てくれるとのことで、管理がさらに簡単になったようだ。
あのコオロギの魔物は一応、災害級被害をもたらす魔物であるので管理は厳重に行われている。人に被害は出ないが食害がえげつないらしい。
独特の臭いがしていた部屋から、ワーテルロー用の餌団子を袋に入れた物を3人娘に手渡す。子トカゲには覿面で、親は子供に先に食べさせるような動きも取っている。ワーテルローもしっかりと魔素を吸収し、位階進化を重ねれば魔人化できるかもしれないな。本来魔物とはアレほど高い知性が無い。ワーテルローのあの行動はもはや人と変わらない。子を慈しむ心があるようにさえ見える。
娘達が餌を子トカゲにあげているほっこりした風景を見ながら、僕は広くなりすぎて奥行きが確認しきれなくなった牧場を見渡す。雇用人数も段違いに増え、最初に居たメンバーは管理職級になっているし、見た事のない若い子が増えた気もする。ここもいつか上役が足りずに悲鳴を上げるだろうな。
「最上級の情報統制が可能な管理職級が足りなくなったら早めに報告お願いね」
「わかっておりますよ。現状は妊娠中で外に出られない我々が回しておりますのでいいのですが……。私達が本業に復帰したり、子育て中の人材は欲しいと考えてはおります」
「確かにその辺は考えてなかった。その辺りも込みで、人材登用のシステムや領内における適材適所を形作らないと」
深々と頷き、後ろに付き従うクォアとリャエドに指示を出すゲンブ。しっかりとドーナツのたくさん詰まった紙の箱を抱えているので、威厳もへったくれもないが……。ここは言わないという選択ができるくらいには僕も成長している。ゲンブの頭をなでながら、頑張り屋な僕の次女へあまり無理をし過ぎないようにと告げ、3人娘へと視線を返す。
3人娘は人気らしく、職員さんが手渡すより食いつきがいいとのことで、餌籠から自分で取り出して与えている。小さいワーテルローも可愛い。ここに全て集まったようで、綺麗に3列に並んで餌をもらい。食べ終えた個体は母親の元へ帰っている。ホントに知性が高い。元から高位の魔物だったゲンブの眷属だ。そりゃ位階も高いよな。
最後まで満面の笑みで餌をやり切った3人娘の要望で次に向かう事にする。
次は……エリーカが魔改造したセンテン高地。縄張りの拡張に合わせて改名した『嵐龍の居城』へと向かう事にしよう。
~=~
・成長記録→経過
クロ
オス 生後165日~165日
主人 エリアナ・ファンテール
身長130㎝
全長17㎝……身長12㎝
取得称号
~省略~
取得スキル
~省略~
~=~