ノエラの水源の迷宮見学
時間も丁度良く、夕飯の時間なので『水源の迷宮』のVIP用区画。……というか王族専用区画のレストランに向かう。爆走魔道列車に乗って1時間くらい。ちょっと疲れてきている子供達だけど、ここから『王祖の迷宮』へ帰る時間だと確実にごはんを食べ逃す。どうせなら『水源の迷宮』でご飯を食べ、熟睡状態で帰る方がいいと思うし。念話魔法でエリアナに連絡はしてあるので、ここに宿泊しても問題ないとの事。この子達もただの子供ではないしね。迷宮核と精霊族だし。
そこの入口で……この子も察知早いなぁ。ヴュッカだ。大所帯になってしまったが、スルト、キール、アグニアス、ステン、クリスもついて来た。ヴュッカが独特な詠唱で僕らにも水中適応の魔法をかけてくれる。一般の旅行者には時間制限付きの薬剤を渡すらしいが、僕らはここの王族とその関係者。扱いもそれ相応なのだ。
ヴュッカの案内で……なんでリヴァイアサンの血筋がこんなに居るの?
「飲み代がちょっと目に余るとのことで、ギルさんにお仕置きをお願いされたんです。私もそろそろ何かしらの実力行使に出ようと考えていたのでちょうどよかったですよ~」
王族専用施設の中でリヴァイアサンの血筋が強制労働させられていた。犯罪ではないらしいがあまりにも調子に乗っているとのことで、ギルさんも僕を盾にしてついに姉達へ最後通牒を投げたと思われる。念のために呑み代を確認したが……。『何をどれだけ飲んだらこうなるんだ?』という金額に思わず額を抑えた。エルンや常識のあるメンバーは呆れ、スルトやアグニアスは驚いているが興味はヴュッカがどういうお仕置きをこの先するかだろう。悪乗りする気満々である。
リヴァイアサンの一族は女性優位の社会で、小柄で戦闘力に劣る男性は虐げられはしないものの立場は弱い。それを僕と言う最高の協力者を得て、彼は積年の恨みをついに解き放ったのだと思う。まぁ、恨みは関係なくてもあの金額を支払うのはなかなかだ。龍の鱗や牙が高価とは言ってもそれはそれだ。無限じゃない。いくら何でもやりすぎなもんで、煽情的な衣装を身に着けたキャバレーダンサーのような服装で舞台の上で踊っている。ちびっこ3人はこれがイレギュラーな娯楽だと理解していないから、ラインダンスやポールダンス、ちょっときわどい動きをするダンス……。服を着替えてベリーダンスとか……。明らかに標的は僕だけだ。ヴュッカの悪乗りだろうけど仕方ない。これくらいやらせないと支払えない金額をツケで飲んでいたんだから。
「さすがにあの金額はないね」
「えぇ、驚きました。何をどう飲んだらあの金額になるんでしょうか?」
「さっきヴュッカに聴いた。ナタロークが飲みすぎで人化が解除されて、リヴァイアサン族専用のラウンジを破壊したらしい。龍族用の特殊な作りだから、修繕費が凄いみたい」
スルトがきいてくれたおかげで判明した。メリアのいくつか下の妹で当代のリヴァイアサンのナタロークが飲みすぎで破壊したと……。スルトに手招きされたので、少し離れて際どいらしい内容を聞いた。
なんでも希少素材を少々過剰に破壊しているのと、ギルさんもこれ以上のツケ飲食を許可していなかったらしい。つまり、彼女らが働いて返さねばならないとのこと。ギルさんの提案で例のエルフと同じ扱いで引き取って欲しいと言われている……と。正直、ギルさんの本音をお酒の席で聞いている僕からしたら受けてあげたいが……。まだ、開き直れない。それから人身売買みたいで少し気が引けるんだよね……。ギルさんからの追加の報告では……『現状の財務状況だと支払うことができません。伏してよろしくお願いします。このお願いが通らないと僕が内臓を売らねばならないので、本当にお願いします』……。いやいや、殆ど積んでんじゃん。仕方ない。潮時だろう。
僕とスルトのやり取りを見ていたヴュッカに、ハンドサインでギルさんへの書状を用意してもらう。はぁ……フラグばかり立つんだけども。
「今日は美味しいごはんと綺麗なお姉さん達の踊りが見れて楽しかったかい?」
「うん。楽しかった」
「ここにお泊り?」
「やったー!」
外泊は初めてだからか三人とも興奮が凄い。寝付くまで時間がかかったけれど……。僕も夜のお勤めをして寝た。今日は本当は別の組なんだけど、仕方ない。なんでか知らないけど、セリアナさんやハーマさんの手が先々に回ってるんだよね。仕事関連のことで妊娠者の増加を危惧した話をしたら、そういう薬剤をヨルムンガンドに用意させてたし。
翌朝から『水源の迷宮』を観光して、一度『王祖の迷宮』に帰還する。僕もそろそろ外の皆から報告が来ているはずなので、ちゃんと仕事しないといけないから。それからおそらくセリアナさんも絡んでいるだろうリヴァイアサン族の件もエリアナに報告しなければならない。
ナタロークが施設を飲みすぎで破壊したところまでは、セリアナさんも関わりはないと思う。わざとやるには被害額がちょっと行き過ぎてる。おそらく僕がユミルの縄張り云々で飛んでいる時に、ギルさんを応対したのがセリアナさんだったんだろう。そこで入れ知恵というか、臓器売買という脅しで誘導したんだと思うし。
ギルさんはこの土地の法までは詳しくない。エリアナ女王国では法務長官の許可証と認定医師の許可を取り、医療的な目的の場合のみ臓器売買が許可されている。ギルさんはこれを知らないので、利用されてしまったんだと思う。あの人は凄く気弱でナイーブな人だからね。ま、お互い苦労してるんだ。今回は貸1としておこう。
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今日は外側の区画の見学がメインだ。ここの販売物というのはエリアナ女王国のあちこちから持ち寄られる物品だからだ。必ず陸でなくては販売できない物以外は販売しているよ。なんでもある。なので商業区画はいずれスルトや姉達、友人たちと行くようになるだろう。今日はどちらかというとさっと各地を見て回る僕の視察にノエラ達がついて来た感じだから。
最初に訪れたのは醸造系の倉庫街。一見は地味な倉庫街に聞こえる響きだが、ここではいろいろ商品開発している。僕よりも娘達がそういった物を楽しんでくれていた。実際、いろいろ考案しているだけあり美味い。それ以外にもキャラクターを作ったり、キャンペーン商品を用意したりもしている。配送サービスもあるのか……。
酒蔵は未成年には……とも思ったがノンアルコールのジュースのような物もあり、果物ジュースを少し濃縮した感じの味わいである。あと、一度酒を加熱してアルコール分を飛ばすことで新たな味わいがあるとのこと。美味い。アルコールが無ければ僕でも飲める。美味しい。
そこからは魚や甲殻類の養殖エリアに行く。何故か三人娘が大興奮。ここは外から卵を取ってきている物もあれば、ここで卵を取って完全養殖をしているところもある。甲殻類は種類によるとのこと。高級魚も人魚が知っていてその飼育と繁殖を行いつつ増やしているらしい。
最後に僕の考案したラインファクトリーの区画。幼女や少女が多く働くここは、ウチの三人娘にも興味深いようだ。どちらかと言うと、魚を流しているベルトコンベアーの方に興味が行ってる。アレに乗りたいのだというが……。アレに乗ったあとを見てみて欲しい。三枚に下ろされる売られるんだぞ? 娘達も覿面に反応し、両手でバッテンを作っている。そうだよね。三枚に下ろされたくないよね。
「私『水源の迷宮』の生産系施設は初めて来ましたけど、とても楽しいですね」
「これはヴュッカの努力が実った産物だね。僕は工場しか触ってないよ」
「私としてはあの『ベルトコンベアー』が欲しいです。あれ、加工品を流すのに便利そうですから」
「宝飾班なら使いやすいかもね。カレッサに小さい物のタイプを考えるようにいってみたら?」
このように迷宮間の交流と言うのはとても重要なんだよね。
特産や特出、各名産品や特産品という売りなどは必要となるけど、便利な物や道具類、情報や働き手の技術の共有は必要なんだ。こういう運営に関係することは最近は観光産業から枠を広げたヴュッカがこなしている面がある。文化交流という面でもとても大切な役どころとなり、あちこちの迷宮間の情報交換の円滑化や学業の範囲も合わせ、彼女が一挙に円滑にまとめている。ヴュッカはとても容量がいいと言うのもあるので実は有能なのである。
そこに昨晩のことで死に体になっているイレーヌや、スキュラのユーリアなどのここ在住の皆さんが集まってきた。
犯人は僕らしいので僕が心配するのはお門違いとは思うが、目の前でよろよろと泳ぐ2人を見ると僕は不安になるんだけどね。実はキール、アグニアス、ステン、クリスなどもかなりよろよろしている。娘達に心配されるレベルの疲労度合いというのはちょっと問題な気もしなくもない。それでも僕と仕事の会話を頑張ってできる辺り頑張り屋なのはわかるんだけど、少し休もうか? それからこうなることが解っているなら、わざわざ僕の部屋に夜襲をかける必要もないと思う。
「い、いえ……その……。最近仕事ばかりであまり旦那様と接する時間が無くてですね」
「スルトちゃんに相談したら、いろいろ考えてくれていたみたいで」
「あ~。そういう事ね。それなら暇なら僕の執務室に来てくれたりしてもいいのに。いつもいる訳ではないけどね。最近は出張も多いから」
「そ、そうだな。今度行くよ」
「そうですね」
それから釘をさすのも忘れない。別に僕とのふれあいは夜に限られている訳ではないので、節度さえ保ってくれるなら仕事の時でも来てくれて構わないんだから。特にちゃんとデート的なイベントやらなんやらをすっ飛ばして、君達とはいきなりそういう関係だったからね。お見合い結婚の子はまぁ仕方ないかもしれない。君達もまだ遊びたい盛りだろう。ちゃんとそういう主張をすることも大切だよ。
わかり易く皆真っ赤になるし喜色に染まるしで……。まぁ、ちゃんと言わないと解らないよね。僕もそういう事をしっかりと言ってない気もするし。いい機会だから皆との付き合い方を改めて行くのもいいかもしれない。
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・成長記録→経過
クロ
オス 生後155日~160日
主人 エリアナ・ファンテール
身長130㎝
全長17㎝……身長12㎝
取得称号
~省略~
取得スキル
~省略~
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