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閑話休題25『今日は鍛冶以外のお話』

 う~い、スルトだぞ。今日はいつも仕事ばかりしていると言われるから、友達と自宅でお菓子パーティ。メンバーはドワーフのキール、炎龍族のアグニアス、鉱石龍族のステン、岩石龍族のクリス。最初はパパのこともあって、皆スルのことを『スルト様』なんて言うから、わざと口を利かなかったけど、最近は『スルト』とか『スルちゃん』と言ってくれるので、普通に会話する友達だ。

 とはいっても、ここに居るのは皆パパのお嫁さんだけどね。

 付き合いの長いキールと、ちょっとガサツな感じのアグニアスは遠慮なくお菓子を食べる。うん。どんどん食べ給え。今日のお菓子は自信作だぞ。スルはなんでも作る。それこそ服も自作するし、なんなら家も作る。ステンとクリスは少し遠慮気味だね。ほらほら食べ給え。感想をおくれ、改良するから。

 幸せそうに頬張るキール。ドワーフの女の子としては高身長でスルより少し大きいくらい。ドワーフだから体つきはがっしりしているけど、……一部分がアンバランスに大きい。たぶん、鍛冶中に足元が醜くなるからいつもはサラシでつぶしてるんだろう。大きい人も大変だね。


「ねぇ、キールはまだ赤ちゃんつくらないの?」

「ほぐふッ!? ぐふッ! ゲホッ…ゴホッ!! す、スルちゃん! 君は一体いきなり何を言うのさ!!」

「んえ? だって、最近パパのお嫁さんが妊娠したって聞かないし。キールはけっこう長くいるでしょ? 長いと言ってもまだ3か月少々だけど」

「……あ~、そのお話ね。クロ様のお話だと、一気に妊娠者を増やすと仕事が回らなくなるから一区切りだって。今の皆さんが出産したら……次だって言ってた」


 ふ~ん。セリ姉とかハーマがまた性懲りもなくパパにいろいろ仕掛けてるみたいだから、それに乗っかれば早いと思うけどね~。

 ……アグニアスも興味あるんだ。最初の鍛冶しか頭になかった感じから、多少変化があったとは思ってたけどさ。そういう事か。パパは絶体に隠しスキルか何かで『魅了』とか『洗脳』を持ってると思う。どんな女でも一夜を共にすると、絶対堕ちるもん。あれは本当に恐ろしいスキルだ。皆に聴いても恥ずかしがるから深くは聴けないから、よくは知らないけどね。その後も順調ならいいんだけど。

 ここ。スルの迷宮の『豊穣の迷宮』に居るパパのお嫁さん衆は、少し立地と仕事内容から不利だからね~。パパも鍛冶仕事で来たり、ゴードンとの打ち合わせに来たりはするけど……。基本この4人が仕事中だから、あんまり絡みが無いんだよな~。

 にやにやしてるけど、君達も呼ばれてお菓子食べてるんだから聞くよ。ステン、クリス。

 ステンとクリスはアグニアスより少し年上。龍としては誤差の範囲だけど、その分の性格や生活力の差はある。ステンもクリスもそれなりに積極的らしいと、ママやツェーヴェ姉に聴いてる。


「ステンやクリスも若い龍組だもんね。じゃ、後回しか~」

「スルトちゃんは気になるの? その……お父様の子供のこと」

「ん~……気になるというか~……。小さい子は可愛い。スルの迷宮にも結婚して、家族増えたドワーフや獣人、エルフも居る。もっと増えたら嬉しいだけ~」

「じゃぁ、スルトちゃん自身はいい人はいないの?」


 んんっ? あ~……。んん~? んぬぅ~……。見当たらんな。

 4人ががっくりと項垂れるけど、逆に問う。スルがその辺りに興味があるように見えるだろうか? この見た目だからね。もう少し成長したい。パパのお嫁さんにもスル並みの人も居るけど、セリ姉は28歳。スルはまだ3か月くらい。

 この4人はスルが魔人だからどれぐらいの年齢か知らないんだよね~。

 パパが生後どれくらいかも知らない子も居そうだ。それを問うと、キール以外は案の定知らなかった。パパはようやっと150日くらいだと思う。そもそも魔人の増え方は特殊だから。人型の種族とは言え、有性生殖だけではないんだよね~。そりゃ~、その内彼氏の一人も見つけるつもりではいるけど、スルは魔人。寿命の概念が無い存在だ。恋愛とか結婚とかの概念はまだまだ先だよ。

 そこそこ、詰まらなそうに見つめない。君達も知っているだろう? パパはそれ程性衝動が強くない。それは魔人としての性質が大きく出てると思う。ツェーヴェ姉の持ってる本の中に書いてあったけど、魔人はかならずしも有性生殖で増える必要はない。僕がパパの眷属として孵化したように魔人の魔素に充てられて周囲の生物が変異すれば、眷属として魔人は増える。やろうと思えば今からでもスルは子供を持てる。広い意味の人間種のような感情に起因する営みは必ずしも必要じゃない。

 憧れはしているけどね。


「へ~。でも、それならなんで探さないんだ? スルトならいくらでも選び放題だろ? 可愛いし」

「そうだね。スルちゃんなら……」

「だ~か~ら~……まだその時じゃないだけ。時が来たら、パパみたいにモテモテになると思う」

「それはそれで困りそうね」

「逆ハーレムは確かに大変そう」

「そうでもないと思うよ? 体力勝ちすればいい」


 なんで皆呆れるの? まぁいいけど。

 それに急いでもいいことはない。焦りは物事を破綻させる一番大きな原因だと思う。だからスルはのんびり過ごす。ジオみたいなのんびりは少しのんびりし過ぎだと思うけど……。適度に働いて、適度に趣味を回して、適度にごはんとおやつを食べる。お茶もいいね。それがスルの信条。エリが言うようにやるときは徹底的に。仕事はもちろん完璧に。

 これがスルの管理する『豊穣の迷宮』の方針。

 ゴードンの鍛冶班もカレッサの魔道具班も同じ。最近増えた鉱石龍、岩石龍の採掘班も……。適度に頑張る。それに仕事ができてるなら、ゆっくりするのも大事。スルは仕事と趣味が被るから勘違いされてるけど、それなりに楽しんでる。だから、ステンやクリスも詰め込み過ぎない程度にしなよ。働きすぎ。パパも夜だけ会いに来るお嫁さんより、執務室ででもお部屋でもお茶しながら話せるお嫁さんの方がいいと思うし。キールとアグニアスは鍛冶の話ばっかパパに振るのはやめた方がいいよ。パパも完全に君達が鍛冶にしか興味ないと半ば思い込んできてるから。


「そ、そうですね。確かに……」

「最近時間もできて来たし……」

「ええッ? マジ?」

「あ~……。それは確かに感じます。たまに話す時も真っ先に鍛冶の話を振られますね~……」


 ステンとクリスは上手くやれると思う。何だかんだ2人はそつなく優秀だから。キールも頑張り屋だからな~。真っ先に鍛冶の話を振られるのはその辺りも関係していると思う。もう少し趣味の話をしてもいいと思う。アグニアスは服装からなんとかすべき。スルはまだ見せる相手が居ないからいいけど、旦那さんもいる女の子のクローゼットの中が作業服8割、残りがパーティー用の一張羅だけって言うのはどうにかした方がいいと思う。ここに来てる服装だってスルがいつもと変わらない服だから気にならないだけで、他の3人はそれなりに可愛い服着てるでしょ?

 アグニアスは見た目ボーイッシュだから、可愛い服が似合わないと思い込んでいる訳か……。

 よし、お皿のお菓子も消えたし、皆で『水源の迷宮』へ行こうか。アグニアスももうかなり貯金あるでしょ? 最悪スルが奢ってあげよう。皆で皆のコーディネートをするのだ! 鍛冶や細工に美観は必須! さあ、いくぞ~ッ!


「ちょ、まっ! まって!! 引っ張るな~!!」

「ほらほら、行くよ。皆で行けば恥ずかしくない」

「いや、そうじゃなく! やめ! 俺に可愛いのなんて似合わないからぁッ!!!!」

「「「大丈夫」」」


 今日も『豊穣の迷宮』は平和である。



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