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魔人による蹂躙

 どうも、毎度です。クロですよ~。

 今日は物々しい会議室に僕の知り合いの魔人が集結していた。全員が魔人ではないけれど、今回は種族の会議とは違う。ここに居るのは今回の『報復』と『奪取』に関わるメンバーだ。今回は少しいびつな編成となる。これまでは魔人が最大の防御戦力で、僕や魔人のメンバー中心の攻防の挙動だった。しかし、今では多くの龍族が住まい、魔族の新加入など戦力の拡充は十分。魔人でも遊撃戦が可能なのだ。

 今回出動するのは隊長にセリアナさん。……いきなり非戦闘員だと思うことなかれ。この28歳ロリ法務長官は既に土地なし魔人くらいの力は持っている。

 この前の位階進化でエリアナ、セリアナさん親子は急激に身体能力が向上し、これまで使えなかった物が使えるようにもなった。この2人、戦闘訓練さえさせておけばかなり強いのだ。頭の回転がいいから相手を制圧する戦闘に長けているとも言える。


「それでも妊娠しているメンバーは固まって行動して欲しいけどね。不安だから」

「大丈夫よ~。クロちゃん。心配してくれるのは有難いけど、そんな軟な女はここには誰一人としていないもの」


 ……という事で、妊娠組含めて結構物々しい戦力となっております。

 セリアナさん隊にツェーヴェ、ヴュッカ、クォア、リャエドと他の蛇魔人の女性。妊娠している魔人組。一応僕の気持ちは汲んでくれるセリアナさん。

 次にエリアナ隊に僕、スルト、ゲンブ、ヨルムンガンド、ジオゼルグ、イオ、ユミル。ユミルはまだ魔物であるが、防御に難点のあるセリアナの為に人肌脱いでくれた。

 第三部隊というか空中からの案内部隊にタケミカヅチ、アポロンとゲストというかエルフ王国出身のカレッサ。カレッサによる案内をアポロンが念話魔法で飛ばしてくれる。

 カレッサの話では『大森林』は厳密には迷宮ではなく、疑似迷宮だそうだ。古代エルフの失われた技術に迷宮核を疑似的に作る技術があったとかで、それにより創られた疑似的な迷宮。本来の迷宮ほど汎用性は高くなく、防衛能力も低い。外縁を幻惑魔法で覆い、許可のある者以外は入れないだけで防衛らしい防衛もできないという事だ。

 という事で、僕と機動力のあるメンバーでガンガン攻め込む。その後方にセリアナさん率いる後詰の部隊で無力化していく。今回はエルフ王国の首脳陣には痛い目を見てもらうとのことで、盛大なパフォーマンスまで用意してある。


「それで、本当にヨルムンガンド一人でいいのか?」

「うん……。というか、魔人化してから神獣変化した姿を見せたことないでしょ?」

「そういえばないね」

「正直、この部隊を組んだ意味はエルフ王国の城に例の兵器を撃ち込んだ後の回収役。後詰の部隊もにたような物だから」


 そして、ヨルムンガンドがいつもの遠鳴の後に……うわっ、でっかー!!!!!!

 そのままヨルムンガンドは大森林の方向へ倒れ込む。倒れ込んで数十秒後に怒声や悲鳴が聞こえるけど、僕らはヨルムンガンドの背の上を走ってまっすぐ疑似迷宮核のあるエルフ王国の首都、ユグドラシルに向かう。なんでも世界樹なる仰々しい名前の樹があるとのこと。それも今の僕らの速度ならすぐだ。人族基準の時のエリアナとは思えない速度で僕の横を駆け抜ける。エリアナの位階上昇は迷宮由来の魔素を元に身体強化が行われた物だ。迷宮核と一心同体である為に、この状態の時は迷宮核が壊されると一緒に死んでしまうし、エリアナが死んでしまっても迷宮核が壊れる。そういうリスクはあるけれど、エリアナの戦力強化は僕と言う戦力がフリーになるということも同時に意味した。

 身じろぎするだけで薙ぎ払われるエルフの戦士が可哀そうだ。

 僕らが留目をさして確保し、縛り上げて担ぎ上げていく。エルフ王国とは言えどもエルフはそれ程人口が多くならない。長命種のしがらみが関わり、子孫繁栄がゆっくりなのだ。僕らが破壊された城壁だった物の上に来ると、ヨルムンガンドも元の可愛らしい幼女の姿へ戻る。効果音付けたら『ぽむぅっ……』て感じ。なんか痒そうに顔に塗り薬を塗っていた。エルフの強力なはずの矢もヨルムンガンドからすると虫刺されに等しいようだね……。いきなり城壁をぶっ壊して顔だけで突っ込んでしまったせいで、顔をツンツンされたと嫌そうな表情。その隣でゲラゲラとジオゼルグが笑っている。楽しそうで何よりだよ。


「で、可愛そうなエルフはほとんど城か避難するための施設に居る。今回狙う連中は城に立てこもった。したがって例のアレを投入する」


 後詰の部隊とカレッサの空中からの隊がジト目を向けながら合流するのに合わせ、ジオゼルグの砂魔法で捕らえたエルフを全員城の広いスペースに送り込む。これは敵に塩を送っている訳ではない。むしろ逆。ジオゼルグが言うには蟻を叩くには巣に居る蟻を逃げられないようにした上で、水攻めや魔法での攻撃にさらしてやる方が楽なのだそうな。今回はそれに適した殺虫剤などを作ることで、そういう事を理解しやすいヨルムンガンドが用意してくれた。

 ごそごそと魔法の背嚢(リュックサック)からバズーカの弾のような物を取り出す。砲身も。

 いそいそと構えるジオゼルグの後ろに装填手としてヨルムンガンドが構え……、『ボゴンッ!』って感じの効果音を響かせながら、薄紫色の煙の尾を引き……。一発目が城の窓から中に入った。中で今度は……『ぼむぅんっ……』と言ったような鈍い爆発音が聞こえる。直後に中から阿鼻叫喚とは違う……獣じみた奇声というか、叫び?いや違うな、なんと表現したものか……苦悶かな? 

 それにも構わず次々にヨルムンガンドが『おっけ~』と装填し、ジオゼルグがのんびりと『ふぁいあ~』と引き金を引いて発射。20発が城のあちこちへ着弾し、手はず通りにゲンブが結界魔法を展開。城を包むようにドーム状の巨大な結界だ。その中にタケミカヅチが弱い渦巻風を起こし攪拌している。


「ねぇ、あの薬はなんの薬?」

「えっとね。明言は避ける。一応ツェーヴェお姉ちゃん含お父さんのお嫁さんは、皆飲んだことがある薬……の高濃度版。しかも30分は持続的に弾頭から揮発して、空気中の魔素と結合して効果をもたらす。お仕置き仕様。普通に処方は絶対しない」


 晴れやかな笑顔で恐ろしい事言うな。この子。

 僕は一応この薬がどういう効能を持つかは知っている。煙になった瞬間に甘ったるいが鼻を刺すような刺激を持つ独特な臭気を帯びていた。たぶん、ゲンブに抑えてもらわないと僕らにも効果があったと思う。魔人や龍族は元から薬剤耐性や魔素耐性が高いので、薬が効きにくい。必然、人間種に処方される薬剤の数倍の濃度の物が処方される。そういう濃度の薬剤なんだと思うよ。しかも、揮発することで効果を出した上でこの惨劇だと、それよりも高濃度かもしれない。なるほど『お仕置き仕様』ね。

 ゲンブも結界を時限式に切り替え、必ずその時間には薬剤が無効化されている1時間後に消えるようにした。

 ここでエルフやハイエルフ達の悶絶する声が響く中を、優雅にお茶するという凄くシュールな状況だ。お茶菓子まで出て来る。ヨルムンガンドは調薬が特技であるだけではなく、薬用茶や薬用酒などの製作も得意だ。また、化粧品の香水なども得意という。あとお香系もたまに作るらしい。

 まぁ僕もヨルムンガンドの薬には助けられている。特に役に立つのが安眠用のお香。あんまりにも僕の寝室に来る人数が増えすぎるので、最近は実力行使に出た。『黒鋼の森』に籠ったら全員から土下座で謝られて、二日に一回、種族や団体でとなったらしい。

 この僕がシャットアウトされる通称『お嫁さん会議』での決定に異議申し立てを何度となくしているけれど、僕の待遇は一向に改善されない。今度はケイラとカナンカが妊娠し、まだ妊娠していなかった蛇魔人の数名とカレッサ、あとその弟子10名。もう数えるのすら大変だよ。


「だんだん煙が薄くなってきましたね」

「だね~。でも、念の為に無臭になってから僕が一人で行く。それで問題なかったら、お父さんとタケ兄とシェイドはここに居て。たぶん、お嫁にいけないエルフを量産してるから」

「やっぱりあの薬か……」

「えっ? とーちゃん知ってんの?」

「この前イオの迷宮を攻めたエルフにもヨルムンガンドが使ったんだ。あれは恐ろしい。僕は大人しくここでお茶してるよ」

「なら俺もここで大人しゅ~しとこ……」

「俺もそうするわ」


 おおよそ10分後に防護服のような物に身を包んでヨルムンガンドが一人で入る。

 5分くらいすると、ヨルムンガンドが防護服を脱いだ状態で大門から出て来て、『おっけ~』と気の抜けた声で合図をくれた。僕らは溜まり醤油の煎餅をかじりながら、麦を焙煎した濃いお茶を飲む。何をしているのかは皆目わからんけど、あの薬を使われたら誇りだの尊厳だのは完全に破壊されるからな~……。『やるときは徹底的にやる』これはエリアナからの号令だそうだけど、どうする気だろうか……。最終的に僕だけが入城するように言われたので、嫌な予感を感じつつも僕は話が進まないので入る。

 うん。どう考えてもやりすぎ。

 どういう状況か詳細は言わないが、これは本当に誇りも尊厳もない。ついでに人権とかいろいろな物まで全て奪われている。僕はその哀れなエルフの集団から二度の儀式を受け、ここにエルフ王国はエリアナ女王国の植民地となる宣言を受けた。それをエリアナが正式に受け、大森林の疑似迷宮核の使用権原や、エルフ王国の全ての権利がエリアナの裁量に移されることが記された魔法契約書が受理された。その奥でとても痛快そうな元ここ出身のカレッサやウチの奥さんメンバー。僕には低姿勢なのになんだろうこの差は……。


「それで? エルフ王国はどういう扱いにするの? エリアナ」

「それは『王祖の迷宮』で儀式をしてから話すわ。こんな程度でウチの国に喧嘩を売ったことを許すわけないじゃない」


 うん。エリアナ怖い。僕にはあまり怒らないし、怒ってもそれほど酷い事にはならないけれど。これは……うん。いずれ酷い事にならないように僕も注意して生活しよう。今、エルフ王国の女王達が置かれている状況にならないように。


~=~


・成長記録→経過

クロ

オス 生後145日~150日

主人 エリアナ・ファンテール

身長130㎝

全長17㎝……身長12㎝

取得称号

~省略~


取得スキル

~省略~


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