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今、僕は生まれました

 その時、僕は生まれた。本能的に殻の破り方は解っていたんだと思う。初めての感触だと思う。“でも、何故かわからない。”そりゃ~、生まれて初めてのことだもんね。普通なんでも初めてだ。でも、物凄く違和感がある。僕の視界がクリアになる毎に、その違和感はとても強くなっていた。

 数分間は考えた。この靄に包まれた感じというか気持ち悪い違和感の正体を知りたくて。

 でも、数分でそんなことはどうでもよくなった。だって、お腹減ったし。これも本能なのだろうか? 僕はそのゴム質な物から抜け出した。ゆっくりと、用心深く。そして、立ち上がった。あれ? この行動はちょっと違うな。解っていてやったことは変わらない。けど、なんか違う。“ずっとそうしていた気がする”からだ。それよりもごはん食べなきゃ。……周りを見回すけど、ごはんになりそうな物はない。ちょっと探し回らなくちゃいけないみたい。


(ここはどこだろう。ふかふかしたミズゴケの上? 適度に湿っていて、もう一つ同じ抜け殻がある。たぶん、兄弟だろう)


 そんなことよりごはん。……というか、生まれてすぐって食べれたっけ? まあいいや。

 僕は駆け出した。何だろう。凄い違和感。“でも、なんで違和感があるのかがわからない。”僕はそのまま走って、美味そうな木の実のなっている木を見つけた。アレ? “でも、美味そうだとは思うのに、つばも出ないし味の想像ができない。”なんでだろう?

 そんなことよりも食べなくては。

 僕は両手を木の幹にかけて、登りだす。……。“こんな簡単に木登りできたっけ?”枝に手足をかけるならまだしも、巨木の木の幹をスイスイ登って行く。こんなに運動神経が良かった記憶はないんだけど? はて、何なんだろう。この感じ。それよりもごはんだ。


(高い。もう少しなんだけど、ちょっと怖いな。でも食べなきゃいけないし。仕方ないか)


 僕は肩幅より少し細い木の枝の上を歩いていく。高いところって苦手なんだよね~。……何だろう。さっきから凄くむずむずする。でも、それは今はどうでもいい気がするんだよね。とにかく、ごはんと住処を手に入れる。あと、縄張りだ。僕の安住の地を探すべきだと思う。

 とりあえず到達。……考えなしに上って来たけど。この木の実、めちゃくちゃデカいな。見た感じリンゴなんだけど。ん? リンゴ? リンゴってなんだ? でも、食べられそうだし。いいや。とりあえず、デカすぎるし、落とそう。


(えっと、ハサミ? ナイフ? ……爪でいいじゃん)


 いろいろなことに違和感マシマシだけど、とりあえず3つくらい手近な木の実を切り落とした。思いのほか自分の体の便利さ具合に驚いている。

 木の幹にひっかけても爪は痛くないし、皮膚も硬くて凄く頑丈。前までとは全然違う。……まただ。何だろう。……。考えてもお腹は満たされない。とりあえず食べよう。ちょうどいいし、木の葉ひくっついて降りよう。かなり大きな木の葉にくっついて落下。ヒラヒラするせいですっかり酔っている。気持ち悪い……。けど、吐き戻せる物が胃にないみたいで、何も出てこない。少し休んで、ちょうどいい具合に砕けてる木の実の果肉を食べよう。

 ……でもな~。なんか違う気がするんだよな~。もっとタンパク質な物を食べたい。……とはいってもスーパーもコンビニも近くなはないだろうし。“スーパー? コンビニ? それって何だっけ?”

 考えたところでわかんないし。とりあえず腹ごしらえ。ごはんごはん♪


(美味い。……のか? わかんない。けど、腹はとりあえず満たされた気がする。けど、この近くは生き物、特に僕よりも大きな連中が多すぎる。危険だ。すぐに離れて、もっと良さげな場所へ行こう)


 とは言っても、徒歩で移動している最中に攻撃されれば、今の無防備な僕ではあっという間にやられる。いくら爪が鋭く、肌が堅くてもそれは僕らの基準だ。おそらく、僕を丸のみにできる連中は多いと思う。空は特に怖い。

 いろいろ考えたらまたお腹が減って来たので、先程の果肉をむさぼる。やっぱもう少しタンパク味が欲しい。できれば肉が食べたい。……あれ? “肉ってなんだっけ?”

 ふぅむ……。仕方ない。解らない物は解らない。いろいろ試しながら行こう。ここがどういうところかと言うと、僕が居る場所は見回せるだけなら一際立派な大木に赤く艶やかな実がなる木がある。足元は枯れた木の葉が積み重なった柔らかな土。……、これ食える?


(とっさに捕まえてみたけど、これを食べたいとは思えない。何故か、つばはだらだら出るのに、これを食べたらいろいろダメな気がする。解らん。やめとこう)


 六本脚で、後ろの二本が極端に長い、こげ茶色のヤツをとっさに捕まえた。……食えそうだとは思うけど、これを生は憚られる。まただ。何だろう。この感じ。

 考えるより行動しなければ食われる。今、上空を大きな影が飛びぬけた。アレが何なのかはわからないけど。僕は身の危険を感じて、とっさに大きな枯れ葉の下に隠れた。抜けてった……。よし、この調子で探索しよう。

 どれくらい動いたかな? とりあえず、この周辺がしばらくは安全だと解った。大きな生物は基本的に空を飛ぶ物と、大きすぎて僕には余り関係してこない奴らだと判明。注意すべきは体が細長く、草陰や木の幹もその体で難なく超える『アイツ』だ。名前が出かかっているけど、名前なんてどうでもいい。さっきの空の奴なんか比にならないくらい危険だ。

 見る限り、あの大樹から少し歩くと、背の高い草が生えた浅瀬がある。大きなブツブツがある、後ろ脚の長い奴が僕を狙ってきた……。必死で逃げた。でも、水場があるのは魅力的。奴さえきにしておけば、飲み水には困らない。それに、なんでだろう。川の中に居る透明で小さい奴は美味しそうに感じる。まぁ、まずはブツブツを排除するか、かいくぐらないとだめだけど。


(次は住まい。どこかに都合のいい場所はないだろうか?)


 そこから空が赤くなるまで、いろいろな連中を見つけたり、追いかけまわされながら優良物件を見つけた。最初に上った巨木が見える背の低い木。その背の低い木の中腹に、虫が巣立った穴があったのだ。その穴を間借りさせてもらおう。それからここからもっと安全な場所に行くために、『本能』を頼りに生きていくことにする。


 ~=~


 良く寝た……。

 寝たので、朝食。昨日落とした果肉はまだ食べられるはず。……たまにどうしようもなく不思議に思うことが多かったし、出かかってるのに出てこない気持ち悪い感じがしているけど無視することにした。いちいち気にしているには回数が多かったこともあるけど、何よりも考えるだけでは食事にありつけなかったからだ。

 昨日も果肉以外の食事にはありつけなかった。どうしても、他の動物を食べるにも生だけは忌避が抜けなかったからだ。

 探索の途中に、容姿は違うけど同類っぽい連中が例の『六本脚』や『まん丸になる奴』、『ブンブンうるさい奴』を食べているのを見た。また、僕より大柄な『緑色の死神』が体がキラキラした同類を喰らっていたのを見てしまった。アレに見つかれば僕も同じように食われる。恐怖しかない。


(だから、今日は道具を作ろう。なんでか作り方は解るからね)


 河原の丸石が転がるところから、僕が握れる程度の石ころを数個持って仮の宿の前まで。

 移動が多いと危険に見舞われることも解ったし、僕も学ぶ。大きな葉っぱを爪で裂いて編み合わせ、袋に近い物を作る。その中に果肉を腐らないと思える量だけ集めて持って来てある。それに、『アレ』さえできれば『タンパク味』も確保できるはず。僕は迷わず石どうしをぶつけて砕き、その中で鋭利な物を選り集めて中でも頑丈な奴だけを選び抜く。

 意外と難しく、意思は脆い。仕方ないけどさ。これで僕の爪では歯が立たない物や、扱いにくい物を扱うのに使える。葉っぱを両肩に掛けれるように作り直し、昨日の夜に作っておいた木の棒の先をとがらせた物を握った。これでうまくいけばいいんだけどね~。


(ブツブツは……いないね。よし、始めよう)


 例の『ブツブツ長脚』が居ないことを確認して、僕は背の高い葉が生い茂る浅瀬に入る。目当ては『体が透明なアイツ』だ。大きさも僕より小さいし、調理もしやすい……はず。

 できるだけ背後から近づき、僕は一想いに木の棒を突き込んだ。

 狙うのは頭側の堅い甲羅ではなく、尻尾側の薄い甲羅が並んだ部分。しかも、かぎりなく頭側に近いところのギリギリだ。上手い事突き通し、一匹確保。とりあえず、要領は得たので失敗しながらも三匹を確保した。今日はこれで終わってはいけない。これを食べるところまでが今日の目標だ。

 できるだけ危機察知を早めにするため、木を張り詰める。『ブツブツ』や『緑色の死神』は僕より大きい。『ブツブツ』なら時間をかければ追い返せるかもだけど、『緑色の死神』の方は無理だ。動きが速くて対処がしにくい。リスクは少しでも少ない方がいいのだ。


(よし、ここまでくれば大丈夫。いつでも家に逃げ込める。さって、やりますか~)


 なんでか疑問に思うときりがないので、僕はその辺りを考えるのは止めた。

 持ち帰った透明な奴の奴を一匹掴み、作っておいた木の棒を鼻先? 目の間? から突き通して大きな葉の上に三つ並べておく。ここからは上手くいくか五分五分だ。乾燥していた持ち運びやすいサイズの葉っぱを集めて置き、近くにあった乾いた枝を運んだ。

 力技になりそうだから先にやればよかったとちょっと後悔しながら、河原の丸石を磨いて、僕が持てるサイズの木の棒に木の繊維で括りつけた道具で枝を断つ。……案外上手くって拍子抜けというか、おかしくない? こんなに綺麗に切れるもん? 断面つるっつるなんですけど……。潰してへし折るくらいを想定してたから逆にびっくり。

 それを繰り返し、枝の一部に細い木の棒をぐりぐり擦り付けて、『火』をつける。

 何故か『火』という物を使えることは解っていた。けど、反面これが危ないことも理解している。しかし、これをどうして知っているか解らない。今ではそれも気にしなくなったけど。たまに自分が何なのか解らなくなってしまう。そんなことを考えていたら、木の棒にさした『透明な奴』からいい匂いがしてきた。石で囲いを作って、かたっぱしから切りまくった枝の切れ端で維持している。……や、ヤバい。涎がぁ~。美味そう。


(い、いただきます。……あっつ!!)


 果肉だけでは物足りなかったけど、こいつはいい。熱くてびっくりしたけど、これは美味い。

 アレを獲るために『ブツブツ』を気にしなくちゃいけないのはネックだけど、これほど満たされるならそれも悪くないと思えるな。それにこの辺は意外と安全っぽいし。ここで十分に準備してから安住の地を探そう。うん。それがいい。できれば『街』がいいな。いや、『村』でいいかな? おこぼれに……。って、『街』とか『村』ってなんだろう?



 ~=~

・成長記録

??? (主人公)

???族

3㎝

 卵から生まれたばかりの真っ黒な蜥蜴型の爬虫類。種族は不明、名も無き小さな存在。大きさや外見に比さず文明的。これから大きくなっていく……予定。ヌマエビが好きなようだ。

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