1/233
赤ん坊
「神のやつにだまされてしまった。」
そう思った時にはすでに遅かった。
「ホギャー、ホギャー。」
気がつくと俺は人間界で赤ん坊になっていた。
魔界で何不自由なく暮らしてたのに。
「人間界にいきませんか?」
俺は人間界を支配できると思った。しかし、何の力も無い人間に生まれ変わるなんて。
「べろべろばあ。あ、笑った笑った。」
目の前にいるのんきそうな二人が俺の親になるのか。力さえあればこんなバカは一瞬でカバにしてやるのに。
「ホギャー、ホギャー。」
しかし、本能とは恐ろしいものだ。腹が減って、自然と泣けてくる。
母親が差し出す乳首に思わず吸い付いてしまった。あったかい。空腹が満たされる。
「いかん、いかん。こんなもんで余は満足せんぞ。」
そう思いながらも、満腹になると、いつしか寝入ってしまった。