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呼ばれ方にこだわりがあるようです。

「団長ー。ユーナの適性って確認したんすか?」


 挨拶もそこそこに赤い髪のルーフさんが問いかけてきた。


「いや。まずは状況説明をしてからと思っていたからね」

「その状況説明は終わったんですか?」

「陛下への謁見を優先したけど……説明は大体終わったし、今からでも確認しておくかい? 魔力」

「その方が後々面倒にならずに済むかと」

「ユーナや私が、というより君が、だね」


 コルネリオさんは確認要請をする青い髪のカレムさんに笑って言う。

 私の適性やらとカレムさんに何の関係があるのだろうか。


「カレムは塔の管理も担当してるから。いきなり団長と副長が任務で駆り出されて魔導師団員(うちら)が丸投げ放置されても動揺しないように、できる限り情報を集めておきたいんだよ」


 真面目っていうか神経質だよねー、と黄色い髪のフラムさんが説明してくれた。


「知らないことで不測の事態が起こるよりはいいだろ。大体お前らが適当で大雑把だからこっちが割食う羽目になるんだよ!!」


 カレムさんが若干涙目で叫んだ。苦労人らしい。


 そんなカレムさんをなだめ、コルネリオさんは懐から手のひらサイズの球状の何かを取り出した。

 保証人の紙も仕舞っていたが、コルネリオさんの懐は四次元ポケットか何かだろうか。魔法が使えるのだからそうなっていてもおかしくなさそうだけれども。


「ユーナ、魔力の適性を確認するからこの石を触ってくれるかい?」


 そう言ってコルネリオさんから石を手渡された。

 透明な丸い石。占いなどで見かける水晶玉に似ている。手のひらサイズだけれど。

 どうすればいいのか分からず、手のひらに乗せたまま眺めていると、石が緑色に光った。白っぽいような緑、というかエメラルドグリーンとでも言えば良いのだろうか。


「緑、ということは風の属性か。若干光寄りの属性色、と。魔力量は魔導師的には問題なし。……うん、とりあえず試しにあの的に当ててみようか」


 コルネリオさんが問診時に使っていたような板を使って紙に何か書いていたカレムさんが、事も無げに言う。


 ……いや、当ててみようかとか軽く言うけど見た目案山子みたいな的は遠いし。そもそもいきなり魔法なんて使えませんし。


「初めてだから私が補助をしよう。君は手を的に向けてくれればいいよ」


 戸惑う私にコルネリオさんが助け船を出してくれた。

 言われた通りに右の手のひらを的に向ける。と、コルネリオさんが手首をつかんだ。


 手のひらが熱くなった気がしたと同時、案山子の左肩部分から右側の腰辺りまでが斜めに切れ、上の部分がずれて地面に落ちた。


 ……え。


「……ちょっと誘導した魔力が多かったかな」


 うっかり、とでも言いそうなコルネリオさんだが、これはちょっとの範囲なんですかね。予備動作というか魔法使ったかすら分からないうちにあっさりすっぱり切れましたけど。人間相手だったら死んでますよね。なんかトラウマ刺激されそうな切れ方なんですけれど。


 ドン引き一歩手前な私だったが、先に具合の悪くなった人間がいたらしい。

 ルーフさんの声が聞こえてきた。


「おいアルフィリオ、顔色悪いぞ。大丈夫か?」

「……問題ない」


 意外や意外。まさかの弟子だった。

 なんだどうした。スプラッタ系が苦手なのか。いや他の人にスプラッタに見えたかは分からないけれど。

 

「あー……いきなり悪かったね。攻撃系統よりも、まずは身の守りから魔力の使い方を学んでもらうから、今回のようなことは暫くないと思うよ」 


 弟子を見て、申し訳なさそうにコルネリオさんが言う。


「私が忙しい時はアルフィリオや他の団員に任せるけれど、基本は私が教える形になる。分からないことはすぐに聞くように」

「はい、……えーと、『団長』?」


 さん付けで呼ぶより、団長呼びの方が良いだろうかと言ってみる。 


「いやむしろ『団長』より『先生』の方が私的には嬉しいかな」


 ダメ出しをくらった。ってマジか。


「今のところ、あくまで『見習い』だからね。周囲が勘違いしないように、師弟関係としての『先生』がいいんじゃないかな。……昔はアルフィリオも『先生』と呼んでくれていたのに、いつの間にか『師匠』呼びに変わってたし」

「……僕のことは今は関係ないでしょう」


 嫌そうに弟子が言う。

 呼び方に私情が入ってる感。


「周りの人間にも関係性が分かりやすいし、これから私のことは『先生』と呼ぶように」

「……ワカリマシタ」


 笑顔で押し切られた。


「じゃあオレらは先輩か?」

「調子に乗んなしー」

「アルフィリオ以外は師弟としての教えを受けたわけじゃないでしょうに」


 フラムさんの発言に、双子さんが突っ込みを入れてきた。

 今まで発言が無かったが、双子さんの片方は眠くて口を開くのが億劫だったらしい。


「ごめんねー。私朝が弱くてー」


 眠すぎると口調が間延びしたりするらしい。

 今は昼過ぎ、というか夕方に近い気がするのですが。


「リーネは夜型だから、もう少ししたら目が覚めるわ。私は朝型だから、もう少ししたらかなり眠くなるけど」


 なんという両極端。

 ……というか夕方から眠くなるとか超規則正しいですねリーアさん。リーネさんは不規則だけど。


「というわけでアルフィリオは必然的に先輩呼び確定だねー」

「何が『というわけで』だ意味が分からない」

「団長が『先生』なら、『副長』より『先輩』の方が見習い感あるし。兄弟子なんだし不自然でもないし。それに下手に他の奴らから正規の団員扱いされて絡まれるよりはマシでしょ」


 リーネさんとリーアさんいわく、一番の問題は最後の部分らしい。というか絡まれるのか。確かに絡まれるのは嫌だ。


 じっ、と弟子を見つめると嫌々ながら「……分かった」と許可が出た。


「では改めて。よろしくお願いします、『先輩』」


 言って、私は頭を下げた。

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