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異世界仕様の名前に変わるようです。

「――じゃ、彼女は魔導師団の預かりということだな」


 話が戻り、コルネリオさんの()()()()説明を聞いた陛下が反対することなく言った。

 あっさり過ぎるが、問題がないのであれば私ごときが口にしなくてもいいだろう。


「ティダリアへの移住登録、証明をするにあたり、名前を確認させてもらえますか」


 騎士団長に視線を向けられ、口を開こうとしたが。


「ちょっと待った」


 とコルネリオさんに止められた。


「背中に何か付いてるよ」

「ああ……さっきも表の方に取ってもらったんですが」


 埃が、と言われたが完全には取れなかったらしい。

 国王陛下の前でとんだ失態である。


「……へえ。これはまた珍しい()()がくっついてるね」


 コルネリオさんの言葉に疑問を持つより先に、騎士団長が動いた。


 音も立てず、いきなり部屋の扉を開け、表にいた騎士に話しかける。


「……直後に交代したようで、逃げられました。もう一人は何も知らなかったらしく、単独犯のようですが……わざと見逃したんですか?」


 戻ってくると、騎士団長はコルネリオさんに聞いた。


「害はなさそうだったからね。『これ』も、せいぜいが盗聴くらいだろう」


 言って、コルネリオさんは私が埃だと思っていた『何か』を人差し指と親指で潰す動作をした。


「これの他には怪しい物はない。室内に私の許可がない魔道具は設置できないようにしてあるから、出入りする人間に取り付ける形にしたんだろうね」


 ……つまり、あの騎士さん(仮)はこの部屋の様子やら何やらを探ろうとしていて。

 私がその盗聴器とやらをくっつけやすそうな人間だったから利用した、ということですか。


「君は悪くないよ。わざと放っていただけだから」


 悪びれなくコルネリオさんに言われた。


 ……それってつまり私は囮にされたということでしょうか。


 そういえば、安全保障については言及されていなかった気が。


「だから『今』、止めたんですね。彼女の本名を聞かせないために」


 弟子がコルネリオさんに聞いた。


「身元確認しようにも、この世界の人間ではないから探しようがないけれど。逆にそれを利用しようとする者がいないとも限らないからね」


 存在の証明ができないからこそ利用されることもある、とコルネリオさんが言う。  


「たとえ陛下相手でも、異世界の名前を簡単に教えては何があるか分からない。だから名を変えてもらおうかと思いまして、()えてすぐに紹介はしませんでした。と、いうことで君は何か名前の希望はあるかい?」


 コルネリオさんにいきなり言われたが、名前の希望って何ですか。


「いえ、特には」

「じゃあ、そうだな……」

「『ユーナ』でいいと思います」


 弟子が師匠に口を挟んだ。

 さっきは放置してたのにいきなりどうした。


「あー、お前まだ名付けのこと根に持ってるのか」


 騎士団長が呆れたように弟子に言う。


「『アルフレート』と『アルフィリオ』。下手に()るから名前が似るんです。もっと簡単で構わないと思いますが」


 陛下と弟子の名付け親はコルネリオさんらしい。

 しかしさりげなく人の名付けに簡単とか言わないでいただきたい。私はペットか何かか。


「何か不満でも?」

「……イイエアリマセン」


 弟子に睨まれたので否定しておく。


「ではユーナで決まりですね」


 発言を名前の肯定として受け取られてしまった。

 ……まさかこれを狙ってたわけじゃないよね?


「じゃあ、ユーナの住民登録な。あー……久々の判子押し以外の仕事だー……」


 用紙どこだっけ、と探しながら言う国王陛下。

 判子押し以外の仕事はないんですか。


「その『判子押し』は国王陛下以外できない仕事です。嫌なら騎士団の訓練に参加しに来ますか? 全力でお相手しますが」


 笑顔で騎士団長(おとうと)国王陛下(あに)に言う。


「ははははは何言ってんだ俺が再起不能になったらロベルトに皺寄せが行って結局俺が八つ当たりされんだぞヤメロ」


 ワンブレスで言い切るほどですか。


 ちなみにロベルトとは宰相の名前だとコルネリオさんが教えてくれた。

 何故だろう、苦労人の気配がする。


 騒ぎながも陛下が用紙を見付けたらしく、顔を上げた。


 と。


 どこからともなく、リン、という鈴のような音が聞こえてきた。

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