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第79話:同じ

 ――なんで……? なんであたしじゃだめなの……? こんなに…………こんなに想ってるのに……。こんなに好きなのに……。こんなに、愛してるのに…………。




「…………」


 ゆ、夢……?

 辺りはすっかり闇に包まれている。疲れたせいか、僕は家に帰るなりすぐにベッドへと潜り込んでしまった。ぐっすりと眠れたはずだったんだけど……。


「今の、誰の声だったのかな……」


 好きなのに……?


 わからない。けど、何か変な胸騒ぎがした。その上、なんだか背中に悪寒が走る。気持ち悪い。前後からの挟み撃ちは卑怯だ……。


 数分、頭の中が真っ白になっていた。まぁ、低血圧だし仕方がないか。

 蛇行しながらも天井からぶら下がったヒモを探す。照明のヒモだ。


 しばらく真っ暗な所にいたはずなのに、全然目が慣れないな。暗順応は時間がかかるとか、以前、師範に聞いたことがある。


「――だから、闇討ちにあった際は、十分に気をつけろよ」


 とか言ってたっけ。この時代のこの国の、どこで闇討ちなんて物騒なことが展開されているのかはそれから一生の疑問として頭に残っているけど。


 まあ、いいとして。

 早く見つけないと、自分の部屋でつまずいて転んだりでもしたらお笑いものだもんな。

 そう思いながら、平泳ぎでもするように手で空をかいてみる。全然手ごたえがない。どこに隠れたんだ……ヒモのくせに……。と悪態をついてみてもただ虚しく、ひたすらに空中をかくのみだった。


 このままじゃらちがあかない。

 というより、僕はたかがヒモ相手に何をイラついているんだ……。なんだか悲しくなってきたな。ということで、一気に決着をつけるべく、僕は両手を大きく広げ、目の前の闇へと突っ込んでいった。

 こうすれば、腕のどこかには当たるはず。


 ……と、思ったのだけれど……。

 何か当たった。

 けど、ヒモじゃない。

 なんだかぷにぷにしてて、細くて、僕よりも少し小さくて、あったかくて、いい匂いがした。僕は縦に細長いその何かに驚き、ついつい抱きしめる格好になってしまった。


 あれ……? これ、もしかして……。


「きゃぁぁああああああああ!!」

「あわぁっ!!」


 抱きしめた何かに突き飛ばされ、僕は後ろ側への壁へと突っ込んでしまった。瞬間、横にあった本棚から、大量の文庫本が僕の上へと急襲。結局、書籍の海に埋まる形となってしまった。


 パチンッと音がして、周囲が明るくなった。そもそも、部屋の照明のスイッチ自体が入っていなかったらしい。

 でも、一体誰が――


 ドアの方を見ると、そこには見覚えのある人影。

 赤いクセっ毛。大きな瞳に細い輪郭線。快活そうなはっきりした顔立ちの彼女は、見慣れた子だった。


「つ、月夜……あんたって人はぁ……」


 李凛だ。

 でも、なんでだろ? なんか、自分を抱え込むように抱きしめて、僕の方をしきりに睨んでいる。すごい眼光なんですけど。威圧というより、もはや威嚇の域なんですけど。


「り、李凛……な、なんでここにいるの?」

「そんなことよりッ、月夜を、暗闇の中で女の子にいきなり抱きつくようなスケベ男だとは思わなかった!!」


 やっぱり、あれは李凛だったか……。なんか、知ってるようなシャンプーの香りだと思った。幼馴染の僕だからこそわかることだった。


「で、でも、李凛の方こそ、なんでこんな所にいるんだよ? ここは僕の家だぞ?」


 機嫌を損ねた李凛の勢いは、一切止まるところを知らず、僕の方へ歩み寄ってきた。そして、未だに本の檻に閉じ込められた僕に向かって、


「ひ、人にいきなり抱きついておいて、何か言うことはないの!? このままだと、陽泉と同類だとみなすから!!」


 陽泉は、どこまでスケベな位置に降ろされているんだろう……?


「と、とりあえず……ごめんなさい」

「……よろしい」


 その異様な間は何……。


「で、なんで李凛が僕の家にいるわけ? ご丁寧に僕の部屋まで上がり込んで来て……」


 実は、李凛がこんな時間に僕の家に上がり込むのは、これが初めてじゃないのも事実なわけですが……。

 嫌な予感がする。


「あ、あの……その……実はですね……お父さんと、ケンカしてしまいまして、ですね……」

「それで……家出?」

「そう、なります」


 小学生レベルだ。

 この歳で、親との些細なケンカというのはありがちなものだけど、家出して、しかも、逃げ込むところがお隣さんなんだからお笑いだ……。

 1年に2回はこんなことがあった。最近になって、なくなったとは思ってたんだけど。再発したみたい……。


「で、今日は泊まらせていただきたくて、ですね……」

「僕としては、家で云々よりも、年頃の女の子が同い年の男子の家に泊まり込むこと自体、あまりよくないことだと思うよ? 李凛のお父さんも、心配してるんじゃないかな……」

「う゛ぅ……。それはぁ、わかってはいるんだけどぉ……やっぱり、お父さんもお父さんで、一晩は怒りが収まらないと思うしぃ……」

「そんな弱った声出しても駄目だよ。それに、なんだったら永遠の所に……」

「月夜は……私が泊まると、嫌なの……?」


 李凛は、僕が断ろうとするやいなや、急にうつむいて上目遣いをしてきた。

 う……。そうきたか……。

 そんなに、捨てられた子犬みたいにうるうるされちゃ、追い出すに追い出せないじゃないか……。いつの間にか、以前よりも李凛の甘え方が上手くなってきてる気がする。これは、以前は使わなかった手だぞ……。

 そこは成長してほしくなかった点だと思いますけど……。


「はぁ……。わかったよ。別に部屋数がないわけじゃないし、今日は泊まって行ってもいいよ……」

「ほんと!?」

「うん……」

「やったぁっ! 月夜大好きぃ~!」

「のぁ!」


 李凛は跳びあがり、嬉しさ余って僕の方へと抱きついてきた。

 再び柔らかい肌の感触と、彼女のシャンプーの香りが僕へと入りこんでくる。驚きのため半減しているのかもしれないが、全力ダッシュでもしたかのように血流が活発になってる。

 もう、これ以上無理!


「り、李凛!」


 叫んで、僕は彼女をやっとの思いで引き剥がした。


「な、なななんで抱きつかれるのは嫌ってったのに……きゅ、急に抱きついてくるのさ!」


 まずい、あまりのことに声が上擦りまくってる……。慌ててるのが丸わかりで格好悪い。


「ご、ごめん。つい、テンションが上がっちゃって……」


 しばらく黙って彼女の方を睨んだけど(気持ち弱めに)、仕方なく立ち上がった。


「はあ……」


 呆れてものも言えないけど、とりあえず、寝ていたせいで今の時間がよくわからない。僕は時計を見てみる。7時、か……。


「結構寝ちゃってたなあ……」

「え? じゃあ月夜、今まで寝てたの? だから電気がついてなかったわけね……」


 こんな時間まで寝てるなんて、と李凛は李凛で呆れているようだった。君には言われたくないところなのだけどね。

 と、言うより……


「ご飯、どうしようかなあ……」


 弱く呟いてみた。

 こんな時間だし。今から作ってもいいけど、それじゃ結構な時間までかかっちゃうしなあ。冷蔵庫に何かあったか確認してから、軽めのものでも作ってみようかな。

 と思案していると、


「えぇ~。ご飯、もしかして作ってないのぉ?」


 呟きが聞こえたようで、李凛が不満の声をあげた。


「まあね……。そりゃ、寝てたわけだし」

「せっかく楽しみにしてきたのにぃ~」

「家出娘が何を偉そうにしてるのさ。大体、それくらい自分ちで食べてきなよ」

「だって……今日はお母さんがいないし、面倒だし……」


 後者が本音らしかった。なんとも図々しい隣人だ。

 ま、それが李凛で、彼女のいいところなのかもしれないけれど。


 人が良くて、明るくて、誰にでも優しくなれる。

 けれど、その優しさが甘さになって、自分に向いてしまうことも……あるけれど。


「だから、考えもなしに家出なんて駄目だよ。僕はそれでもいいけど、お母さんの方は、李凛がここにいる事実も、その事情すらも知らないんだから」

「それは……悪いとは、思ってるけど……」

「だったら、今度からはちゃんとわかり合わないと。まぁ、それはいいとしても、これからどうしようか」

「だったらぁ……私が作ってあげましょうか」

「……え?」


 予想していなかった答えなだけに、僕は呆気にとられてしまう。


「だって今、李凛、作るのが面倒だって……」

「それはさっきの話。今は、別に、面倒じゃ、ないよ」

「途切れ途切れだけど」

「いいの! さっきはさっき、今は今。女の子の気持ちは変わりやすいんだよ。そもそも、今を生き抜かないと未来なんてないんだから」


 それとこれとは話が別じゃあ……? なんてことを言う気もなく。

 僕だって今、料理を作りたい気分じゃないし。


 それは、李凛と同じ理由で。

 僕も大概李凛のように、わがままで変わりやすい性格なのかもしれなかった。




 珍しい……というか、奇跡が起こりました。

 なんと、半年以上の歳月を経て、この小説が更新されようとは……。


 ほんの気まぐれで、私はこの話を再構築しようと考えてしまいました。


 Gold And Lapis Lazuli


 このお話も、始まってから一年が経ってしまいました。その上で、半年以上も――HINA Project様が起ち上がり、それ以前にももうリニューアルしてしまっている今、それでもわずかながら日々アクセス数が増えていくことに、読者様方への感謝の念が絶えません。


 したがって、今回、発表を致します。


 この、NOTEが処女作、『Gold And Lapis Lazuli』を、改訂版として再連載しようと考えています。

 改題し、

黄金おうごん瑠璃るり

 としてお送りするこの物語(まんま日本語じゃねえか)……世界観も登場人物も変わらず、多少の加筆修正を試みていこうと思います。

 そのためこの『Gold And Lapis Lazuli』ですが、近日をもって中断という形をとりたいと考えています。

 一気読みをしていた方、申し訳ございませんが、この物語が完全に終わるのは次の『黄金と瑠璃』の最終話となります。

 この『Gold And Lapis Lazuli』も、もう少し続きますが、完璧な中途で終わります。

 もう少し、NOTEの気まぐれ思いつきにお付き合いください。



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