表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/82

第5話:転入生

「……っくは!!……はぁっ、はぁ…はぁ……」


…跳ね起きた。


(何だったんだ…今の叫び声…。)


 現実だろうか…夢の中だろうか…。


 猛々しい、まるで合戦でも始まるかのような…。


 もちろん、日常ではそんな雄叫びを聞いたことはない。せいぜい陽泉にライバル意識を持つ永遠が、彼との対決で出す雄叫びぐらいだ……。


 だが、さっきのはあのライバル意識剥き出しの…どこか子供じみたものじゃない…。


 “殺気”…本気で相手や一族を滅ぼさんとするかのような……。


 とにかく、僕はそこで一息つき、冷静さを取り戻した。


「びっくりしたぁ…。」


「それはこっちの台詞だぁ!!」


「なっ…!?」


 後ろから急に羽交い締めにされて身動きがとれない。


 苦しいけど…背中にやわらかく気持ちいい感触があるような…。これは、確かに男の夢ではありますけれども…。


(って、悦んでる場合じゃない。このままじゃ天国から地獄だ!)


「なんだよ李凛…!、何のまねだよ……!!」


 平静を装いつつ、僕は叫ぶように、精一杯後ろに張り付いた李凛に伝えた。


「うるさい!せっかく起こしに来てあげた親切な女の子になんていう態度!?」


「…何のこと?」


「静かに眠っていると思って近付いてみたら、いきなり襲いかかってくるかのような勢いで跳ね起きてさ。こっちがびっくりしたよ」


 これは、女の子相手に後ろから体に張り付かれてるこの状況は……男としては嬉しいところがあるものの、ずっとこのままってわけにもいかないよな…。


 「あの、いいから解放してくれない…?」


 悦ばしい状況ではあるけれども、いつまでも浸ってるわけにもいかない…。


 すると、李凛は聞こえるか聞こえないかくらいの声で呟いた。


「ちょっと悦んでるくせに…」


「何か言った…?」


「何でもないよバカ…」


「バカって…」


 そうして僕の体を解放してくれた彼女は、今更この体勢を恥ずかしいとでも思ったのか、少し顔が赤くなっているようだった。


「そ、そんなことより…早く支度してご飯食べて学校行こうよ」


 そう李凛が言うと、僕はその言葉に返した。


「あ、居間で休んでて。ソッコーで弁当作るから」


「…うんっ!わかった」


 “弁当”という言葉に反応したのか、李凛は満面の笑みで答えて居間に向かっていった。


(それにしても、さっきの夢は何から何までわからないことだらけだったな…そのうち未来ちゃんに話してみようか。訊いてもわかる事じゃないだろうけど)




「はぁ〜…なんとか間に合った…」


 教室の自分の机につくなり、不機嫌そうに李凛が声を上げた。


 それはそうだろう…弁当のおかずで(自分が食べたいからって)李凛が横からいろいろ注文してくるがために、急ぎ足での登校になってしまったのだから…。


「月夜がお弁当に手間取ってるからだよ」


 不満そうにこっちを見ながら李凛が言ってる。


「自分のことはちゃっかり棚上げか…。そもそもあれ食べたいこれ食べたいっていろいろ言ってきたのは李凛じゃないか」


 僕は李凛の不満に反論した。


「だって月夜の料理は絶品なんだもん」


(そういってくれるのはありがたいけど…)


 そう思っていると、どこから湧いて出たのか、陽泉が顔を出して言った。


「このままだと将来、主夫は覚悟しろよ月夜」


 ワンパターンの夫婦ネタか…。いい加減尽きないもんなのかな?…と思っていると、陽泉の言葉に永遠も続いた。


「大変だね、李凛みたいなのがお嫁さんで…」


 珍しい…。永遠まで茶化してくるなんて…。


 意外なことに焦ったのか、李凛はというと…みるみるうちに顔が紅潮していった。


「なっ!?バッ、バカじゃないの2人してッ!!」


 ありゃりゃ…めちゃめちゃ慌ててる…。2人がかりで来られればさすがの李凛もこうなっちゃうか…。こりゃ目も当てられないな。


 僕は焦りまくってる李凛に助け船を出すことにした。


「2人の方こそどうしたの…?今日はなんだか付き合ってるみたいに仲が良いけど」


 半分茶化すような声で尋ねてみた。


 すると…思った通りだ。


「なっ、バカなこと言わないでよ!!なんでヤツと付き合わなきゃなんないわけ!!!!」


 強気なくせに恥ずかしがり屋な永遠のことだ。焦って大声で否定してくる……。


 今回は我が策の方が勝ったようだな。なんて太古の軍師、“周瑜しゅうゆ”のようなことを思って勝ち誇ってみた。


 それにしても、周りの視線が痛い…。こんなに朝から叫びまくっていたらみんな驚くのも無理はない。クスクス笑いながらこっちをみているのは間違いないだろう…。


 そんな周囲の状況に気付いたのか、陽泉が女子2人に注意を促した。


「ちょっとは周りと俺の迷惑も考えろよ…。このままじゃあ完全に誤解されたまんまで、俺に女子が寄りつかなくなるだろ…」


「あんたは黙ってなさい!」


「もともと寄りついてもいないじゃない…」


 静かに呆れた様子の陽泉に永遠の熱い怒声と、李凛の冷たい呆れ声がそそがれた。


「月夜〜…。みんなして俺をいじめるよぉ…」


「僕にすがらないでよ…」


 これだけこっぴどく傷つけられると、たまにこうくる。まぁ男としては、情けないことこの上ない状況だけど…。ちょっと気の毒だな。


 そういえば、みんなは未来ちゃんのこと知らないんだよな。


「あぁそうだ、そんなことより、今日未来ちゃ…」


―ガラガラガラガラ―


「はい、みんな席について下さい」


 扉を開ける音と共に現れた先生が、僕の言葉を遮った。


「今日は転入生を紹介します」


 その言葉にみんな一斉に反応を示した。


 みんな少々驚きながらも期待を込めたような目でキラキラしている。男子はかわいい女子、女子はかっこいい男子の登場を祈っているようだった。


 僕はふと陽泉の顔を見た。なんだか様子がおかしい…いつもとどこか違うような……。


 …………目だ!かわいい女子が来ることを信じて目が異常に爛々と光り輝いている!!長いつきあいだけどこんな陽泉の目は初めて見た。


 なんだか“星飛○馬”並みに瞳の中に熱き男の炎が宿っている……。陽泉らしいといえばそうだけど…。


「峰水さん、入って」


 そんなみんなの期待をよそに、先生が促すと…


 峰水…?クラスの誰もがそんな疑問符を頭に浮かべたような顔をした…。陽泉、李凛、永遠も例外ではない。


 教壇の前へと歩み寄っていくその少女は、ついこの間抜けていった峰水未来だったその人だった。


「峰水未来です。また、よろしくお願いします」


 と、辞令の言葉の後、何事もないかのような顔で席に着いた。みんなの頭から疑問符が消えていない。だがそのまま授業が執り行われた…………




 そしてまた……あの少女と僕達の楽しい日々が続く……そんなことを考える僕は、もう朝の夢のことなど頭の中から消え去ってしまっていた…………




この章は意味があるのかな……。

自分でも何のこと無い日常の風景を書くことが多いと感じてますが…。


次章からは未来も交えてのドタバタ劇となります…ドタバタはしないかも。ほのぼのした仲良し5人組をどうぞよろしく。


*次回予告*

未来の転入によって何故かピンチを迎える月夜…。果たして月夜が出す決断とは…!?

(命の危機はありませんのでご安心下さい……)


感想、評価、文章表現の指摘や質問、辛口コメント…何でも送って下さい! できるだけ答えようと思います。作者は基本暇なので…。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ