第43話:共有
前日の寝不足がたたってか、未来ちゃんの膝の上で眠ってしまっていた僕…。まぁ役得には違いなかったけど…。
ただ、僕が見た夢は最悪の瞬間だった。未来ちゃんが…僕の前から消えた夢。本当なら、ばかばかしいと言って相手にもしないだろうけど…今の僕は相当参っていた。
あんな日が来るはずない。でも、そういえる根拠も証拠もない。非科学的だから?理屈的にあり得るものじゃないから?
でも、あの日は来たじゃないか…。
彼女は、僕と会って1年もしないうちに僕の前から姿を消した。違う町に引っ越していった。だったら…彼女が僕の前から、もう二度と消えることはないと言えないじゃないか。現に一度いなくなっているのに………。
そう思って、僕は恐かった。胸が締め付けられそうだった。見えない何かに打ちのめされそうになっていた。
…でも、いや、だからだろうか…………
“なでなで”
彼女がとても優しいのは…。
未来ちゃんは僕が差し出したてをそっと握ってくれた。こんなに暑い日なのに…彼女の手はひんやりしていて気持ちよかった。
彼女は僕の手を、何か愛しいものにでも触れるかのように、そっと撫でてくれていた。僕もそれにあわせて安らいでいくもんだから…悪い気はしない。
「悪い夢でも、見てたの…?」
「え?」
「だって、魘されてたもん…」
彼女は僕の手を離そうとはしなかった。それどころか逆にギュッと握りしめている。
そんなに苦しそうにしていたのだろうか…?彼女はもとが色白なのに、心配なのか青さも混じっていて…まるで死人のようだった。
「うん…まぁね。とっても嫌な夢だったよ」
「どんな?」
「きっと笑うよ、こんな事でこんなになってしまうのか…ッて自分でも思うよ。けど…とても悲しかったんだ」
そう言って僕は、彼女の問いかけに答えるのを拒んだ。でも、彼女は諦めの色を示さず、逆にもっと気になると言ったような顔で、僕の手をまたギュッと握りしめて言った。
「でも、わたしは知りたい。月夜くんが悩んでるんだもん…話せば、楽になるかもしれないし。ね」
「…聞いても、呆れないでね」
「うん」
僕は話すことにした。今の瞬間まで見て、僕の心を酷く傷つけていった悪夢を。
「…わたしが、消える?」
「本当なんだ、だから…そんなポカンとした顔しないで」
「あ…ご、ごめんなさい。でも、あまりに恐い夢だったから…」
「恐い?」
「自分が大切な人と離れて…どこか違う、遠いところに行っちゃうなんて恐いでしょ?」
「…そうだね。それは、消えていく方も、いなくなられた方も一緒だよ。僕は悲しかったんだ、とっても…それ以上に、寂しかった……」
「だ、大丈夫…?」
彼女の顔の心配色は濃くなっていた。その原因は、僕の顔にあったみたいだ。
「え…?」
気がつけば、僕は涙を流していた。頬に手を当てて初めて気付いたけど、それは正真正銘僕の瞳から零れたものだった。
「そんなに悲しかったんだ…」
そう言って彼女からは、なぜか笑顔が零れていた。僕はその彼女の真意をはかりそこね、首を傾げるしかなかった。
「あ、ごめんなさい…でも、わたしがいなくなることをこんなに悲しんでくれてるッて思ったら…なんだか嬉しくなって」
「未来ちゃん…」
にこにこ。
そんな彼女の笑顔に、何度救われてきただろう…。彼女はそう笑って、僕の頬を走る光を指の甲ですーっと拭き取ってくれた。
僕は、そんな彼女の優しい笑顔に癒されていた。いつの間にか、微笑みが浮かぶほどに…。
「あ、そうだ。あの小説読んだんだ…」
「あの、『黄金と瑠璃』のこと?」
「そう、それで…あの…またまた変な話に入るけど…………」
「なにかな?」
彼女は微笑みながらも、僕の話に完全に耳を傾けていた。
僕はそんな彼女に、今までの夢と、小説内の物語の全面的な一致について話した。
彼女たちの使命、裏切りの刃、死の瞬間まで…そして、かけがえのない仲間たちと名前、顔が一致すること…全て話した。
彼女は最後まで僕の目を見つめ、所々で何か反応しながらも真摯な態度で聞いてくれた。
「…………急にこんな事言っても信じることもできないだろうけど…たぶんあれは…………」
「前世…だったんだと思うよ」
「え…?」
彼女は今までの僕の言葉を聞いてか、そんな意見を言ってきた。
「あ、ごめんね…でも、そんな感じだったから…神守の左腕が切り落とされたり、その後わたしが破損した家で膝枕をしてあげてたり…なんだかとってもリアルで………」
「チョッ、ちょっと待ってよ…なんで僕が言ってないことまで………」
なんだ?鼓動が加速していく―――彼女は何か…僕にとんでもないことを口走ろうとしてる…。僕は、次に聞いた言葉が信じられなかった。
「私も…見たの…」
「え…?」
ありえない。
「月夜くんの話したこと…実際に私も全部夢で見たの………」
どういうこと?じゃあ、まさか…僕たちは…
嫌、そんなことが…夢を共有するなんて………
でも現に、彼女は僕が言っていないことまで知っていた。
切り落とされたのが左腕であることも、膝枕をしていたのがボロ家であったことも………。
―――ここから…何が始まるって言うんだ…?―――
今回はちょっと短めでしたね。
でも、中身は詰められた方だと思いますよ。
次は、もしかしたらこの話とは遠ざかるかもしれません…急展開!!みたいな…?(苦し紛れ)
*次回予告*
次回は…!!
未定!!ッて事で…。
すぐ更新します…それまでにはもしかしたら次話も出てるかもしれませんけどね…。
感想、意見、訂正、評価…なんでもじゃんじゃんどうぞ!!なんかここまで全部苦し紛れで…。