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第41話:黄金と瑠璃

 あの後李凛と別れ、僕は家に戻った。自分の部屋に戻ると、僕は急激な眠気に襲われた。なんだか急な運動をした晩のように疲労感が溜まっていた。




 あれから何時間経っただろう…?


 僕が目を覚ました頃には、あたりはもう真っ暗闇になっていた。でも大丈夫、僕は暗くても視界がきくほうだ。


 見慣れた間取りをすいすいと進み、僕は難なく部屋を出て台所を目指した。


(お腹すいた…)


 眠ったせいですっかり飯時を逃したらしく、僕のお腹はもうペコペコだった。なんだか情けない光景ではあったけど…。


 うーん…何かないかなぁ。そう思って食料を求めて、冷蔵庫をあさる。なんだかゴミ袋あさってる野良猫みたいだったけど…。


 なんだか面倒だったけど、他にこれからやることも見つからなかったので、結構時間をかけることにした…。




「おいしい!!」


 他に誰もいない家の中で、思わずグルメリポーターなみに叫んでしまった。


 それと同時に、さすがは僕だな…とも思ってしまった。ちょっと恥ずかしい。


 でもこれは、もしかしたらシェフ顔負けの絶品かもしれない。“地中海風ブイヤベース”…結構いけるな。自分の才能が恐いくらいに誇らしく思えた。




 まぁ、ご飯食べてお風呂にでも入ればやることもなくなるもので…。僕は再びベッドに寝転んでいた。


(ヒマだなぁ…なにかする事でもないかなぁ……)


 本当は宿題でもすればいいところなんだろうけど…こんな夜中からじゃ集中力に欠けるな。だからといって他にやることもない。


(いや、待てよ…そうだ!小説だ!)


 そうだ、いろいろあって忘れていたが、僕は“日蝕伝説”の歴史書とは異なるもの…小説を今までに読んだことがなかった。


“もしかして僕の小説を読んでいないんじゃないのかい?”


 亮さんのそんな言葉が頭をよぎった。あの時、いろいろとわけのわからない話題を振りまかれて頭が混乱したけど…。もしかしたら、あの小説を読むことで、僕は謎の答えにたどり着けるのかもしれない…そう思って読んでみることにした。


 現在深夜1時。不思議と眠くない…いや、昼に寝たせいで眠くないだけか……。


 そう思って苦笑しながら、僕は小説『黄金こがね瑠璃るり』の表紙を開いた…




 話の流れはこうだ…。世が戦で溢れた時代、あるところに小さな村があった。その村にはそれなりの人口が住んでいた。


 その村には変わった風習と、大きな権威を持った5つの家があった。変わった風習―村が危ういとき、世界が危ういときには『降神の儀』を執り行うこと。


 降神の儀とは、1人の人間の身に神の御心を宿し、神のお力を借りるというもの。神のお告げを頂戴するというもの。


 大きな権威を持った5つの家―宝水ほうすい神守かんもり御石みせき聖壇せいだん真札さなふだの、それぞれの5家。人々は、その5家をまとめて『五供紋』と呼ぶ。


 村は襲われていた。地方の力ある豪族が、次々に土地を自分のものにせんと暴れ回っていた。この村も射程内に入り、何度か襲われる羽目になっていた。


 しかし、この村には強い精鋭部隊がいた。聖壇率いる武装集団だ。その集団は異常なまでに強く、どのような大きな勢力でも、どのような戦法を使う勢力でも振り払い…ほふってきた。


 特にリーダー格の聖壇、真札、神守の強さは尋常ではなく、それぞれが一騎当千の強者だった。


 そして今日も、また明くる日も、そのまた次の日も戦を仕掛けられては討ち取っていく…そんな毎日を過ごしていた村だった。


 五供紋の5人は仲が良く、よく一緒に時間を過ごしては笑いあっていた。その笑顔はとても幸せそうなもので、同じ時を過ごすかけがえのない仲間と言うにふさわしかった。


 そして、その中には恋心もあった。神守と宝水…守り守られる存在である関係の彼らは、明らかにお互いに好意を持っていたのだ。別になんの障害もない、誰も反対などしない。彼らは彼ら同士の間でもまた、幸せなのだった。


 そんな中、不吉な現象が起こった。日蝕ひばみである。この村には、代々受け継がれてきた言い伝えがあった。


 日蝕が起こると、日輪が消え去り…日の光を嫌って地下で暮らしていた妖怪たちが目覚め、地上の人々を食い荒らす…というものだった。


 日蝕が始まってしまい、降神の儀を執り行うことになった時、そんな最悪のタイミングでまた戦をかけられた。


 降神に儀には、、宝水の魂と、御石の肉体が必要になる。


 御石が降神の舞をする。その舞を神に捧げることで、御石の身に神の意識を宿すことができるのだ。


 ただ…そのためには犠牲がいる。宝水だ。宝水の魂と肉体を神の魂へと還元しなくてはいけない。その際、御石の体には一切の負担がかかることはない。


 神の魂が宿るには、御石の肉体と舞、そして宝水の魂と肉体がいるのだ。


 それが、彼女たちの使命…。


 だが、降神の儀が始まった直後、他の勢力と戦っている聖壇が姿を消した―――


 海辺には、2つの人影があった。腰までスラッと伸びたつややかな黒髪…宝水と、前髪は目にかかる程度、そのほかもおとなしめの髪ショートヘアの男性…神守だった。


 2人は愛し合い、すでにお互いの気持ちを確認していた。そして…使命を全うした彼女がもうじき消えてしまうことも知っていた。だからこうして、2人で最後の時間を過ごしていた。


 だが、そこにやってきた人影があった。聖壇だ。神守も宝水も驚いた。なぜなら聖壇は右手に太刀を携えて2人の方へと向かってきていたためだ。


 聖壇は神守へと襲いかかってきた。しかし、神守も負けてはいられない。宝水を守るため…相手がいくら自分と今まで親しかった聖壇だとしても…戦わなければならなかった。結果、神守は左腕を切り落とされ、波間に消えていった。


 ―――そして、宝水は…神守の前で光の結晶となり、消え去っていった―――




 なんだこれは?僕は何を読んでいる?これは本当に過去に書かれた小説なのか?いや、確かにそうなのかもしれない…でも僕はこれを、本当に一度も読んだことがなかったのか?


 僕の夢…愛し合っていた神守と宝水、彼女たちの使命、聖壇という男の反乱、舞を舞う御石、切り落とされた左腕に至るまで全てを僕は夢の中で見てきた…。


 偶然?いや、それにしては一致しすぎるほどのものだ。これは…この感覚はなんだ?


 温かいものに触れているようで、落ち着いているようで、まるで、前から知っている記憶のような…まるで、すぐそこにあるようで実は遙か遠くで2度と掴むことができないような…………そんな感覚。


 “懐かしい”


 不意にそう思ったんだ。僕は、この小説を読んで確かに懐かしいと思った。


 偶然に一致は夢だけではない。今考えれば、もっと前から気付いていてもおかしくないほどの不自然がそこにはあった。


 名前…。僕からしてみたら名字だが、この世に生を受けて本人にとって神に、母につけられた聖なるもの。僕たちは、そんな偶然の一致を遂げているじゃないか。


神守かんもり緘森かんもり


宝水ほうすい峰水ほうすい


御石みせき観籍みせき


聖壇せいだん青旦せいだん


真札さなふだ真札しんさつ





 これはなんなんだ?僕たちは…一体…………





解説中心ですね、本当はこのような文章の話は作らない予定だったのですが、いよいよこの物語の核心部分と言うことでご了承下さい。


さて、この小説から皆さんは読み取れたでしょうか?月夜たちと神守たちとの何か…って、前から見当ついてたとか言わないでさぁ…そこは楽しみのために言わないのが常識…でしょ?


*次回予告*

暗いとこで本なんか読んだら目を悪くするよ!!

嘘らしいですね。でも、無理に目を近づけて読むのはやめましょう。

っとと違った…そもそも夜遅くまで小説を読むのはやめましょう、健康のために(このお話はどんどん読んでくださって構いませんよ!!)


感想、意見、評価、訂正などありましたらどんどん下さい。作者へ一言!!なんてのでもいいですけどね。

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