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第34話:甘えても…いい?

(…とにかく広いな、このお屋敷)


 正直かつ客観的な感想だ。当をえている。


 そんなお屋敷に泊まることになったなんて………自慢になるかな?


 庶民のささやかな歓びに浸っていると、応接間のような居間のような…まぁ内部のの装飾が違う部屋なんでないけど、どの部屋もとにかく広いことは確かだったから…勝手に決めつけるけど、そんな部屋のソファーへと未来ちゃんが歩んできた。


 フカフカで雲に乗ってるかのような気持ちになるソファーに、未来ちゃんは腰を下ろす。彼女の体重が軽いのか、ソファーの表面は深く埋まらずに低反発を示していた。


 タオルで覆われた彼女の髪はほのかに湿り気を帯びていて、シャンプーのにおいが鼻腔をついた。いい香りが体中を包むような錯覚にまで陥る。


 気がつけばいつも彼女の髪からはシャンプーのいい香りが周囲を漂っていた。それを嗅ぐだけでいつもなぜかドキドキさせられる…。それは彼女の魅力か男のさがか…。いずれにしても僕がその香りに翻弄されているのは事実なわけで…。


「それにしても広いお風呂だったね…」


 彼女が話し出す。僕はその語りかけに自然と応答する。


「そうだね。料理も豪華だったし…本当に贅沢なくらいだよ、こんなところにいるなんて」


 僕たちが泊まるという決断を下して暫くした時、ある部屋へと誘われるままに入っていくと、すでに長すぎるテーブルいっぱいに料理が並べられていた。いくら手を伸ばして届かないところまで連なっている料理の皿は、一切手をつけられることもなく…。


 まぁその光景に唖然としながら食べていたわけだけど…。


 その後はバスルームへご招待…。そこはそこでまた広い…。下町の銭湯でもあそこまで大きくはないだろうと言うくらいだ。あれは、1人で入るにはスケールが大きすぎる…。


 まぁ改めて貧富の差という社会的状況を思い知らされた1日だったものの…今になって落ち着くと、先ほどまでこのお屋敷のどの部分に対しても驚きが隠せなかった状況よりかはゆったりとした気分になっている自分がいた。


「まさか…こんな山奥にここまで大きな邸宅があったなんて…もし昔からあったなら小さい頃から聞かされてると思うんだけどなぁ…。最近建ったのかな?」


「そうだよねぇ…以外だよね、まさか自分が住んでいるところにこんな場所があったなんて。私が引っ越して行った町もそれほど大きな町じゃなかったし…こんなに大きな家もなかったもん、びっくりだよ」


「そう言えば、引っ越し先でのことは詳しく聞いてないよね…聞きたいな、どんなところだったのか…」


「そうだね。後でたっぷりと聞かせてあげる…」


 僕と未来ちゃんのそんな会話に入ってきたのは亮さんだった。


「満足してくれたみたいでよかった…。同じ部屋にお通しさせてもらうけどよかったかな?それとも…ベッドを離したのはまずかったかい?」


「「な゛ッ…!?」」


 いきなりの信じられない言葉に頭の中が真っ白になった…。優しそうな微笑みと清らかな言葉遣いから出るサラッとした言葉は、時に想像もしないほどインパクトのある強調となる。正直ここまで効果のあるものだとは思わなかったけど…。


 僕らが眼を見開く中「冗談だよ」とでも言いたげに不敵な笑みをこぼして、彼は去っていった。僕らに寝室の位置を指し示しながら。




 彼が指し示した寝室へと入ると、そこはどこかのホテルのスウィートルームかとつっこんでしまいたくなるほどの豪華絢爛な造りだった。


 先ほどまでも豪華だったけど、ここはまた違った意味で外とは別空間のように思えた。部屋の反対側の壁にそれぞれ並べられたベッド、その真ん中枕側には淡いオレンジ色で室内を照らす間接照明…。


 今日の僕たちはいろんな事に驚きっぱなしだった。




「ねぇ…月夜くん…?」


 暗い室内…。ほどよくクーラーが効いているのか、暑い夏の夜にもかかわらず汗ばむことのない室温でベッドに横になると、未来ちゃんが話しかけてきた。お互い背中合わせになっているようで、割と遠くから声がしたように思えた。


「何?」


「あの、ね…。なんだか楽しいな、なんて思っちゃって」


「はい…?」


「お泊まり会みたいな感じで…。あ、あの時は男女別だったけど…。こうして、誰かと一緒の部屋で寝られるのも…なんだかいいなぁなんて…思っちゃって………」


 子供っぽいワクワクした話になってるのかと思いきや、なんだか感慨深げに話す彼女の声は、次第に空気に消え入った。さすがに修学旅行のような高揚感までは含まれていないようだ。


「もしかして…寂しかったりする?」


 悪戯っぽく訊いてみた。僕は僕で高揚感がちょっぴりあるらしい。ただでさえ子供みたいな仕草をしてしまう彼女のことだ。もしかしたら…なんて思ったらしい。


「うん…」


「え…?」


 意外な答えだった。僕はそんな返答となんだか神妙な口調に、間の抜けた問い返しで応じてしまった。


「だって…恐いんだもん。このまま朝がこなかったらどうしようとか…朝になってみんないなくなってたらどうしようとか…。毎日、毎日………」


 彼女の声は震えていた。うわべだけではそんな感じだったが、たぶん内心は泣き出したいほどの衝動に駆られているだろう事は予想がついた。


 ―――孤独感。彼女は前にもそんなことで泣いていた。僕たちが未来ちゃんのことを考えてない…?僕たちが消える…?そんなことはあるわけがない。いつも彼女と一緒にいた。すでに彼女は僕たちの中で、居なくてはいけない存在なのだ。居て当たり前の存在なのだ。


 その彼女を見捨ててどこかに行ってしまう人など、僕らの仲間内には存在しない。仲間思い…言ってしまえば、超がつくほどのお人好しの集団だ。


 誰かが困っていたら助ける、誰かが泣いていたら手を差し伸べる…。僕たちはそうして集まった仲間だったんだから…。気付けばいつの間にか、いつも5人で楽しい笑顔を浮かべていた…。


 今度だって見逃さない。置き去りにしない。差し伸べた手は引っ込めない。握りかえされた手はもう離さない…。


 そう思って僕は彼女に精一杯の救いの手を差し伸べた…。


「何か、僕にできることがあったら…何でも言ってね?」


 これが精一杯。情けないとは思う。あれだけ綺麗事を思っておいてなんだとは思う。


 そして、これ以上のことをするとお節介にまでなってしまうから仕方ないと自分の意見を正当化する。こんな言葉にのって相談してくれればいいと淡い期待まで抱く。


―――所詮は無力なんだ―――



 自分を責めるような言葉ばかりが頭の中に氾濫していると…彼女のとろんとした甘い声が聞こえてきた。


「じゃあ、甘えても……いい………?」


 「えっ?」と声にならないような言葉を浮かべると、背中に受ける彼女の気配がどんどん大きくなっていくのを感じた。彼女の一歩一歩がだんだんと近付くにつれ鼓動が速くなる…。


 そして…


 僕が被っていたシーツが軽くなるのを感じた。それと同時に、背中付近の布団に上から圧力がかけられる。背中に触れる温かみは、次第に僕の背面全土を温め出す。


(いい香りがする…)


 背中から香るほのかでゆったりする香り…。未来ちゃんのシャンプーの香りだった。


 はっきりわかった。彼女は僕の隣で…いや、僕の背後で横になっている。しかも僕の背中に額を当てて。


 それが彼女の、誰かの存在を確かめるための儀式だということだ。跳ね上がるような心拍数…彼女にも聞こえているんだろうなと思っても下げられない。


「月夜くんの背中…広くて温かい」


「未来ちゃんこそ…柔らかくて温かい」


「このまま、甘え続けちゃってていいのかな…私…」


「いいんだよ…このままで………」


 まるでおぶわれるように背中に張り付く彼女…。


 まるで僕を追い求めてたかのように肩を手で包む彼女…。


 僕は…そんな未来ちゃんを、離したくないと思った。こんなに僕の背中を追ってくれるなら…こんなにしっかりと肩を掴んでいてくれるなら、僕は絶対に君を悲しませたりしない。…守ると誓えた。


 気のせいだろうか…


「ありがとう」


 そんな声が聞こえた気がして、穏やかな空気の中…僕たちは眠りに落ちていった………。





なんか感動的になってきた気がする。

もしかしたらこのまま…?いや、そんなことないです!!させませんともッ!!

いや、もしかしたら読者はさっさとラストが見たいんでしょうか…気になって眠れなそう。そこんとこのご意見お願いです。感想のみでも構いませんので…。


*次回予告*

再び夢の世界…。

断片的な記憶が行き来する中、不思議な運命がそろそろ姿を現すか…?

(自分でも次話がどんなものか気になるところですよ…)


感想、意見、訂正、評価などなどたくさんのご意見下さい!!

この小説をおもしろくするのは君だ!!

(なんてまた勝手なことを言ってみたりする…)

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