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第31話:不思議な森の豪邸

 もうこのまま何分歩き続けただろう…。随分と自然の中での暮らしが大好きな方らしい。一度見た印象としては若い感じだったけど…今時の若者には珍しいくらいのご趣味ですこと………。


 僕と未来ちゃんは、諸葛亮の家があるということで、林の奥深くまで来ていた。


「結構深くまで来ちゃったけど…こんなところに住む人なんているのかな…?」


 思わずそんな疑問まで口にしてしまっていた。そこまで体力がないわけではないものの…ここまで長い距離を歩くとなると相当足腰に負担がかかるもので…。すでに体中のあちこちが痛い……。


「もうすぐの筈なんだけどなぁ〜…」


 未来ちゃんの方は、困っちゃったような顔をしながら何やら小さなメモ用紙とにらめっこしてる。彼女にかかればどんな仕草でも画になってしまうから不思議だ。


「道は間違えてないみたいだから、後はこの辺りを少し探してみようよ」


 さっきとは一転、明るい雰囲気になった未来ちゃんの声は跳ね上がり、にこーっとして僕に微笑みかけた。


 ここまで歩いてきたのは彼女も一緒なのに…なぜそんなに元気なんだ?あちこち痛くはないの…?


 もしかして未来ちゃんって着痩せするタイプなのかな…?脱ぐと実は筋骨隆々だったり…ってそんなわけないか。彼女のほっそりしたボディラインは実際に拝見済みだ。海でもそうだし、そういえばその前にもバスタオル一枚の彼女の裸体も………。


 ッていけないいけない…危うく妄想の領域に入ってしまうところだった…。


 まぁとにかく、僕らはこの林の深部にあるという諸葛宅を探すことにした…。




「あった…」


 そこはさっきの地点から更に林…いや、もうジャングルだ。随分と奥深くまで来てしまったが、そこにはさっきまでの木に囲まれた閉鎖空間とは違い、広大な敷地があった。


 こんな森の中に…こんな空間があるなんて、まるで別の世界に入ってきたかのような感覚だ。


 それと共に、内心この上ない達成感に満ちたのも事実で…。ここまでの道のりは過酷だった…。


 上空に青空が広がる並木道もあれば、すっかりお日様がご無沙汰なジメジメした沼が立ちはだかる道もあれば、乾ききった草むらをガサガサと掻き分けなければ通れないような道もあった。


 要するに人が住むには…外出も帰宅もできれば避けたいところにある邸宅だということだ。未来ちゃんもこの試練の道を甘く見ていたようで…サンダルで来ていたために途中僕がおぶってあげたりしてなんとか到着したのだ。


「しっかし…今までの過酷な道とは違って、すごい空間だねここは」


 森が続く中、急に鉄製の柵型の門が現れたと思うと、その奥には石畳…中央には噴水…またその奥には左右に薔薇園…そして3階建ての豪華な洋館がその姿を惜しみなくお見せしていた…。


「とにかく、建物の前まで行ってみよう?」


 そんな未来ちゃんに文字通り背中を押され、開きっぱなしの門をくぐって石畳の大通りを歩く…。見事なまでのシンメトリーのその中心を堂々と進む僕たちは、100メートルほどの道のりを渡りきり、(そび)え立つ諸葛邸の目の前まで来ていた。


 建物だけでなく入り口も巨大だこと…。


 3メートルほどの…家の扉にしては入り易すぎるほどの巨大門の前に立ち、インターホンを探すが見あたらない…。


(どうやっては入れって言うんだ…)


 電力が通っていないのか…?でも噴水はあるし…もしかしたらあれも自然と湧いてるだけの科学の力が一切いらない代物だとか…?この大自然の中なら不思議と納得できるけど…。


 仕方ないので叫ぶことにした。


「すいませーん!諸葛さん!いらっしゃいませんかーーー!!」


 結構な大声を響かせた甲斐はなく…。辺りはシーンとした空気が流れるだけだった。まぁ、こんなところで叫んでたら不審者扱いされて出て来ないのも当然か…。


 そう思ってどうしようか悩むと、未来ちゃんが門の端に駆け寄っていった。それを見た僕も彼女の後に続く…。


 辿り着いてみると、巨大門の横にひっそりと普通の大きさの扉があった…。さっき思い切り叫んだ僕がバカみたいだな…。未来ちゃんも苦笑を浮かべて、洋風の扉に取り付けられたノックのための金属製輪っかで、“コンコンッ”と扉をたたき、快音を響かせた…。


 だが、誰も返事をしてくれない。これだけ大きい屋敷だから広すぎて聞こえないとか…?まさかそんなことはないよね…。一応住んでるんだし…。


「いないのかな…?」


 未来ちゃんが不安そうな声を出す。すると…


“ガチャッ”


 未来ちゃんを不安がらせた扉が開けられた。いや、開いたんだ…。僕ら2人とも一切扉には触れていないのに“ギギィィィ“と不気味に響く蝶番(ちょうつがい)の音と共に開いていく扉の奥に人影はなかった。


 建て付けが悪いのかな…?それとも、幽霊とか…?有り得ないよねッ………?そんなこと言わないよねッ!?今時幽霊なんてそんな…こんなに森の奥深くだからな…もしかしたらもしかするのかも。


 そう思ったとき、未来ちゃんが躊躇なく扉の一歩奥へと足を踏み入れる。


「ごめんくださぁい…」


 彼女の頭の中にはホラーな想像が一切ないらしく、家主の現れない邸宅中へと遠慮無く呼びかけまくる。


 5回ほど繰り返した後、僕の方に向き直って苦笑を浮かべた。


「さっきこの扉…なんで開いたんだろうね………」


 無人という事実に今頃恐怖したのか、「アハハ…」と引きつった笑いを浮かべながら尋ねてきた。……こっちが訊きたいよ…。


 僕らはこれからどうするかを話し合った。勝手に上がりこむのもいけないだろうし、だからといってこのまま帰るのも気が引けるし…。僕らの今後は考えれば考えるほど行き詰まるばかりだった。


 …まぁこれからどうするのかはさておき…いや、本当は最優先事項なんですよ!?そんなことはわかってますよ、当たり前じゃないですかぁ〜…でも、生理的なものは仕方がないですよね?呼吸・睡眠・食事をしないと人間は生きていけませんもんね…!?


 ………じゃあ、排…いや、なんでもありません………いや、やっぱり我慢できないものは仕方ありません!!トイレです!!こんな時になんですがトイレに行きたいんです!!


「あの…さ、未来ちゃん?」


「なに、月夜くん…?」


「御手洗いくらい…借りられるかな?」


 僕は恥ずかしさと我慢の苦しさによって詰まる言葉を、必死に振り絞って呟いた…。


「…へ?ぁ、あの……」


 みるみるうちに顔を赤くしていく未来ちゃん…。やっぱりこんな事をこんな純粋な子に言うもんじゃないな。


 でも僕としてはそれは大事の前の小事なわけで…今は用を足すことしか頭に残らないくらいにパニックになってるんです……。もちろん普段はこんな下品な人じゃないんですよね僕って…。


「あの、とにかくそんなわけだから僕、ちょっと探してくるね」


「あの、私も…」


「未来ちゃんはここで待ってて…。広すぎて迷っちゃったら困るから…。その時には叫んで玄関の場所を僕に音で伝えて欲しいんだ」


 ここまで広いと本気で迷子になっちゃいそうだし。この歳になって迷子はちょっと辛い…というか情けないものがある。




迷っちゃったら僕の方から叫ぶから叫び返してくれということに賛同し、彼女は居残り…僕は未知の世界へと勇気ある一歩を踏み出すのであった。




諸葛居らず!!

結局そんな結果になっちゃいました。それになんだか最近月夜のコメディ感がだんだん激しくなってきてる感じがします…。

こんなんでよろしいのでしょうか…。


*次回予告*

諸葛亮…それは歴史探求家であり、小説家でもあり、月夜達の運命を知る者…。

再び姿を現した彼が放った月夜への一言とは!?


感想、意見、訂正、評価などたくさん下さい!!

じゃないと私…困っちゃうぞぉッ!!とか言っちゃいますよ?言われたくないですよねぇ…?自分でも言いたくありませんもの!!

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