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第25話:仲間のあたたかさ

 夢を見た…。


 不思議な夢だった。死にそうな僕がいて、優しく微笑みかけてくれる少女がいて…その少女は、僕に生きることの意味、剣を持つことで…生きることで誰かのためになると言ってくれた。


 僕は、その言葉に満足した。僕はこのままでいいんだ。剣で人を傷つけた…でも自分を責めたってなんの解決にもならない。…そう思った。


 そして今、僕は夢の世界から目を覚まそうとしていた。




(…ここは?)


 僕が目を覚ますと、そこは見覚えのない部屋だった。…いや、見たことはある。この間陽泉と闘って気絶させたときに陽泉を運び込んだ部屋だ。


(…僕は何を?)


 たしか…


「月夜くんッ!!」


「なッ!?」


 僕が状況把握をしようと体を起こした瞬間、胴体に何かが大きく僕の名前を呼んでしがみついてきた。


 驚いて声を上げたが、僕の体を熱く抱きしめて放さない何かは、小さな声で何度も僕の名前を呼びながら安堵して涙した顔を一所懸命僕の胸に当てている。


「み、未来ちゃん…」


 しがみついて未だに一向に放してくれない彼女に呼びかけてみた。抱きしめ返した方が安心するんだろうか…いや、周りの目もあるし…。


「心配だったんだよ!?あんなに強く打たれちゃって…ずっと眠ったまんまだったんだからぁ…」


 激しく、安心して泣きわめく彼女に、僕は「ごめん…」としか言えなかった。


 気付くと頭には包帯が巻かれている。それに妙に額の正面辺りがズキズキする。どうやら陽泉は、防具を差し置いて額の方に会心の一撃を決め込んでくれたらしい。


 泣きわめく未来ちゃんの後ろに寄ってきた陽泉は、僕に暗い顔を向けて、謝罪の言葉を述べてきた。


「悪いな、月夜…こんなにまで強く打つ気はなかったんだが…なにしろ慣れないものだったんでな…」


 最後の言葉はなんだか言い訳がましくもあったが、僕はそんなことで怒るほど繊細な心は持ち合わせちゃいない…。それに…


「ううん、いいよ…陽泉。この間は僕が似たようなことしちゃったし…お互い様だよ。それに、しっかり誓いを守ってくれたしね」


 そんな風に言ってもまだ自責の念がこみ上げてくるのか、陽泉の口からは「すまん」の一言しか出てくることはなかった。


「陽泉、あたしが言う事じゃないかもしれないが、もういいだろ。月夜は気にするなと言ってるし、これ以上謝ったら今度は月夜が気遣うだろ…」


 永遠が割って入ってくれた。確かにこれ以上陽泉に謝られてしまったら、僕の方が精神的に陽泉に申し訳ない気がしてくるところだった。


「それに、陽泉だけに責任はないんじゃない?」


「「え…?」」


 いきなりかけられた李凛の辛辣(しんらつ)な言葉に、陽泉と永遠が驚嘆の声を上げた。僕も心の中で李凛のいう“責任”の正体が気になっていた。


「あたしを月夜のなんだと思ってんの…?幼馴染みを甘く見ないでよね。動きがちょっと鈍ってるかどうかなんてすぐにわかっちゃうんだから」


 見事当てられてしまった…。さすが幼馴染みと言うべきか…。僕の竹刀を握る手がわずかに震えていたことを見逃してはいなかったようだ。


 李凛の言葉を聞いた未来ちゃんも、やっと僕の体を解放し、「そうなの…?」とでも言いたげな目で僕の顔を窺ってきた。


 あの…そんなに至近距離で、しかも上目遣いでみるのは結構男として参りますぞ…。そんなにウルウルした瞳で見つめられたら僕の方からも抱きしめたくなっちゃうじゃないか!?


 っとと、いけないいけない…。そんな空気じゃないはずだ。そして僕はKYと言えるほど頭脳も場の理解力も悪くないはずだ。


 …ということで、とりあえず僕は試合中に起こっていた僕の体への変化について、みんなに報告することにした。


 理由はわからないが…竹刀を握った瞬間、僕の体が小刻みに震えたこと。頭の中でいろんな思いや疑問が交錯したこと。皆の質問や発言も許さずに話し続けて…いつの間にかさっきの夢まで話そうとまでしていたので、混乱を避けようと思い、夢の話は却下した。


 皆は、僕の話が終わるなり黙りこくってしまった。僕としてもどう続けていいかわからない。何が原因で震えていたのかもわからないのに、直そうとするアイディアも浮かぶわけがない。


 それになにより、再び竹刀を握る気さえ無いのだ。重症かもしれない…。


 そんな沈黙を破ったのは、この問題を提示した李凛だった。


「そうかぁ…。竹刀を握ると震えがね…。今までにそんなこと一度もなかったしどう対処していいかわからないね」


 あっさり言ってくれた…。でも彼女の表情は至極真剣(しごくしんけん)で、指先をおでこに当てて考え込むポーズを崩さなかった。


「今は何ともないの、月夜くん…?」


 未来ちゃんが先ほどから移動せず僕の横にぴったり居付いている状態で問いかけてきた。


 僕はというとこの近い距離でまともに目を合わせることをなぜか恥ずかしく思っていた。夢の中で激似の少女に身を案じられたばかりだ。少し心の距離感覚が狂ってきてるかもしれない…意識までは……してないですたぶんハイ。


「今は何ともないよ、体の方は大丈夫だから…」


 自分の中の慌てを必死に抑えて答えた。「よかった」とは言うものの、彼女はまだ心配なのか…胸をなで下ろしながらチラチラと僕の方を見てきていた。


「最近、何か変わったことがあったか…?」


 最近…事故に巻き込まれそうになったり、その事故で実は右腕を捻挫していたり、不思議な人物に会ったり、暗闇の中で怯える少女を見たり、殺される…あるいは死にかけている夢を見たり………


 気付かないうちに尋常じゃないことが増えてないか!?


 でも、僕の体調に直接関わりがあるのは捻挫だけど…今はもう何ともないし、もしかしたら…


「精神的なものからきてるのかもね…」


 永遠が僕の考えをズバッと代弁してくれた。


「精神的って………もしかして失恋か?」


 こんな時にそんなことを言うほど陽泉にデリカシーがないわけじゃない。絶対に茶化してる口調だった…。この状況で茶化すのもどうかと思うけど…。


 まぁ、KYなことはしない方がいいわけで…陽泉は女子3人に冷たい目で見られてシュンとしていた。


 まぁそれは放っておくことにして。精神的なもの…夢のことかな?確かに今朝は殺される夢…さしてさっきは死んだ瞬間のような夢を見た…。もしかしたら僕の不調と何か繋がりがあるのかもしれない。


「何か心当たりがあるの…?でも、何かあったら何でも言ってね!?力になるからッ!!」


 彼女の言葉は何の根拠もないような励ましにも聞こえるかもしれないが、僕にとっては何よりも心を明るくしてくれる魔力…いや、魔法があった。


「うん、ありがと…」


 未来ちゃんの言葉に皆が賛同してくれているようで、皆の優しさにすごく温かな気持ちになれた。


 結局僕の不調の原因は知れず、明日もこの道場で稽古や試合がある…。


 来るつもりではいるけど、不調の原因も未だ解明されていない…怪我人ということもあり、参加の有無はその場での判断ということになった。




 僕はこの事を自分個人の問題だと思っていた…でも違うのだ。僕のことを想ってくれている人が皆無なわけではないことを………この後改めて知ることができた。





仲間たちのほのぼのなシーンでした。


改めて月夜の周りの人達が温かくいてくれることがわかったいただけたらいいです。


もしかしたらそろそろ本格的に恋愛を入れていくかも知れません…。(遅ッ!!)

それに、25話なので銀婚ならぬ銀載と言うことで何かできればいいです。


何かやって欲しいことがあったらどんどん意見下さい!!(例えばGLの番外編とか、別の短編とか…)


*次回予告*

稽古には参加するものの、やはり竹刀に拒否感がある月夜…。

そこで弓術に専念してみることに…。

そんな月夜を不安げに見守る人影の正体とは…?


感想、意見や訂正などはじゃんじゃん送ってくれてかまいません。送ってくれただけで励みになります!!


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