第23話:剣への恐怖
日蝕伝説……諸葛亮……伝説の発祥地……etc.
たくさんの謎が渦巻くこの調査活動で、僕たちは新たに情報を得ようと計画を立てた。
そのあと一息つく中、、師範の我が儘に促されていきなり道場に行くことになってしまった僕たちは…すでに門前へと辿り着いていた。
僕たちが門にノックをかけようとしたとき、急にスライド式の扉が開かれた…
「おぉッ!!よく来たな!」
「来いって言ったのは父さんでしょ…」
この親子間の温度差はさておき、稽古の時のテンションとは違い、また何倍にも跳ね上がったような調子で僕たちを道場内へと促した。
道場のど真ん中には、未だ開けられていない包みが数個置かれていた。さっきの電話からすると、その包みの中には新品の竹刀やら防具やらが入っているらしいが…。
「なんでまた道具一式を新調しようと思ったんですか?」
皆が抱いている疑問点を陽泉が突いてくれた。今まで使っていたのだって別にそこまでボロボロになったわけじゃないし、気分の変化でもあったのだろうか?
「いや、別にいいだろ?新しい方が稽古にも熱が入るってもんだ!!ナッハッハッ!!」
ちょっと赤面しながら茶目っ気満載の口調で話す師範を見て、あまりいい気持ちをしなかった一同だったが…とりあえず包みを開けてみると…。
「こりゃすごいな…」
そこには永遠のコメント通り、新品と言うだけあってピカピカと光って見える道具たちが顔を出していた。
竹刀、防具、木刀、足袋などいろいろ…それこそ道具一式が詰まっていた。そして子供が宝物を得たかのような笑顔で見ていた師範が言い出した。
「よしッ、月夜!陽泉と一試合やってみろ!!」
すご〜く上機嫌だ…。まぁ軽くならしてみろって事か…。って今からですか………。
僕も陽泉も、“面倒だ…”とは思ったものの、いつもお世話になってる(っていうか単に機嫌を損ねると怖い)師範にそんなこと言えるはずもなく…新品の防具に着替えるため、その場から移動することにした。
使い慣れていなくてなんとなく動きづらい防具に身を包んだ僕と陽泉は、道場の真ん中で対峙していた。僕たちの足下には師範が予め置いてくれていた竹刀があった。これももちろん新品のものだ。
「よしッ!じゃあ、始めるぞッ。2人とも竹刀を持て」
師範のその言葉に僕たちは従った。目の前の竹刀に手を伸ばし、柄の部分を持つ。
両手で竹刀をしっかりと握りしめ、自分の体の前に持ってきて構えると…なんだか妙な違和感を抱いた。
新品だから?使い慣れていないから?いや、そんなことはない。道具を新しいものに持ち替えたことは過去にもある。
じゃあなんだ…?なぜ僕の体はこんなにも竹刀を握ることに拒否感…イヤ、恐怖感を抱いている?よく見ると竹刀を握る手先が小刻みに震えていた。
自分が震えていることに気付いたとき、僕の脳裏にはなぜか今朝見た夢が鮮明にイメージされていた。
僕はこんな風に剣を握っていて…陽泉が僕の目の前でそんな風に剣を振り上げていた。
(………?そんな風?)
僕が疑問に思った瞬間、正面から僕の頭の方に思い切り竹刀が振り下ろされてきていた。どうやら変な方向に意識がいっていたせいで試合開始の合図を聞き逃していたようだ。
(…!?ヤバッ!!)
なんて慌てて上半身を右側にひねり、そのまま床に手を付く。急に動いたおかげでバランスが崩れた下半身を、床を蹴ることで浮かせて、そのまま側転…天地のバランスが取れたところでまた竹刀を陽泉の方に構えた。
周りもそうだろうが、身の危険を感じたときの体の反応速度と俊敏さには自分でも驚かされる。ほんの数センチの距離から竹刀を避けるのは、もはや人間業じゃないだろう…。類い希なる才能らしいが…できれば人間でいたいです。
体は平気なようだが、なぜまだ竹刀を構える僕の手は震えている?そしてさっき浮かんだイメージは…?どうしてこのタイミングで夢のことを思い出す?おかげで死にかけたんですけど…。恐かったんですけど…。こんな思いもうこりごりなんですけど…!!
「あっぶな…もう少しで現世からおさらばするところだったぁ……」
「本当におかしな動きするなお前は…」
あきれかえったように陽泉が言い放った。それはそうだろうな、通常こんな動きは狙ってもそうそうできるもんじゃない…。咄嗟にとった行動とはいえ、バランスの取り方といい、側転の成功といい…これから何度しようと試みたとしてもできないだろうなと思った。
集中………。
陽泉は、余計な疑問やイメージを頭に浮かべたところで勝てる相手ではない。心を静めるんだ…。無心になるんだ…。陽泉の次の行動にだけ焦点を合わせるんだ…。そうでもしないと僕の意識が持たないような気がしてきた。
無心になっている状態でも僕の手は震え続けていた。
まるで僕の体が剣に対して何か拒否するような反応を示しているようでもあり、そこがまた恐かった。まるで僕が実際に剣によって殺された経験でもあるかのように無意識に警戒をしていた。
僕はついこの間まで普通のことのようにこの竹刀を握って闘っていたはずだ。陽泉や、李凛や永遠とまで…。最近は、相手の竹刀を取り上げるだけで、実際に肉体にダメージを与えることはないが。
陽泉とも誓ったはずだ。全力で、相手を…陽泉を倒すつもりでお互い闘うと………。その誓い通り、この間は陽泉を気絶させるまでに至ったじゃないか…。僕は、陽泉を倒したじゃないか…。
なぜ今更になってこんなに剣を握ることに躊躇する…?なぜこんなにも嫌な気分になる…?見つけられない答えを探していると、ある言葉を思い出した。
“なぁに、このまま続けていればすぐ慣れるさ…”
数年前…僕がこの道場に通い始めた頃に師範から言われた言葉だ。僕が李凛に滅多打ちにあって、傷ついたときに言われた言葉だった。
確かに、肉体的な成長のせいもあるだろうが…打たれるうちに皮膚が厚くなり…打たれるのが恐くなくなり、打たなければ打たれることを知り、相手をひたすら打ち続けた…。
“傷”に慣れることが………いつの間にか“相手を傷つけること”に慣れることにつながっていた。
「ウッ!!」
そんな風に思った瞬間、急に自分が恐ろしくなった。
“やらなきゃやられる…だから打つのか…?”
“自分が傷つく前に…相手に傷をつければいいのか…?”
“自分が傷つかなければ…誰が傷つこうがいいのか…?”
自責の念がこみ上げる。自分に対する恐怖と憤りが沸々と沸き上がってきた。そこで初めて、剣を受ける者、そして…剣を握る者にさえも苦しさがあることを感じた。
ただ、そうやって自分を責めるのと同時に…急に目眩が襲ってきた、体がぐらつくのを感じた、意識が飛びそうになってきた。
このまま立ち続けるのは無理かもしれない…。もう楽になった方がいいだろうか?
そう思った瞬間………僕の脳が衝撃によって大きく揺れ、僕の意識は…完全にどこか遠くへと行っていた。
そのまま眠りこけた僕の中で、再び現れた少女の目には淡く哀しげな涙が浮かんでいた………まるで、僕の帰りを待ち続けていたかのような安堵の微笑みと共に………
バトル2回目ですね、まぁ中心はバトルというより月夜の苦悩なのですが。
まぁそういうわけで、わからない恐怖に怯える月夜なのですが、ここからどう乗り越えていくか、そもそも乗り越えていけるのか……。
っていうか、ここまで月夜の運動神経を化け物並みにしてよかったのか…今でも悩んでいるんですけどね
*次回予告*
意識を失ってしまう月夜。その夢の中で再び現れた少女はいったい何者なのか…。その時月夜が悟ったものとは一体…?(う〜ん、自分には次回予告の才能がないのかもしれない…)
感想、評価、訂正…作者は、みんなの意見が無くて寂しいと死んでしまう性質なので、できるだけ聞かせて欲しいです………(まぁそれだけ欲しいってことで勘弁してください)
同作者:NOTEの新連載小説、『YOU―零!!』もお楽しみ下さい!!
※ドタバタ異世界バトルファンタジーです!!