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第20話:裏切りの刃

 飛び散る鮮血─────紅く染まる腹部─────その腹部に手を当ててみると大きな切れ込みが入ってうっすら中身の輪郭が見てとれる。


(き、斬られたのか…?この人に…?)


 自分の眼前には僕より大柄な男性………よ、陽泉!?


 それは紛れもなく陽泉の顔だった。陽泉そっくりの男が、右手に日本刀を握りしめて不敵な笑みを浮かべている。よくよく見るとそのきっさきは、僕のものと思われるくれないの血で染まっていた。


 横目に夕日が見える。今にも海に沈みそうだ…。ちょうど僕から流れ出るものと同じような色だった。


「悪いな、神守かんもり。俺はここで止まるわけにはいかないんだ…」


 そう言う日本刀を持った陽泉そっくりの男の目には斬ったことを詫びるような意志は見られない。それを感知したのか、僕の口が勝手に動き出した。


「貴様……!!このまま宝水(ほうすい)を殺すとどうなるか、分かっているだろう!!」


 そんな激しいながらも絶え絶えの息で目の前の男を責める自分。陽泉そっくりの男はその声に静かに呼応する。


「当然知っている、妖怪どもが暴れまわる…。だが、オレのねらいはそれだ、神守………みんながお前のように英雄にはなれない…いや、少なくとも俺はなりたくはない」


(なんだか最近、よくよく妖怪とは縁がある気がする…と言っても2回ほどしか耳にもしてないけど)


「お前は混沌(こんとん)の世を望むというのか!?この大地が地獄と化すんだぞ!?」


 僕の口はまだまだ激しく言葉を浴びせかける。それでも目の前の男の顔に変化はない。それどころか、殺気立った瞳はますます意志の強さを膨張させているように見える。


「残念ながら、創造は破壊・滅亡からしか生まれない。大丈夫だ、人類は死滅することはない…何度でも蘇るさ。それが人の強さだからな…」


 目の前の陽泉似の男は、そう言いながら、刀を少し強めに握り直して僕との距離を詰めてきた…。


「俺は………俺の使命は…宝水を守ることだ!!…聖壇(せいだん)!!俺は使命を必ず果たすぞ!!」


 僕の口が言い終わったときに、目の前はよりいっそう紅に染まった。何かが触れた感覚は一切無かった。一瞬…ほんの一瞬で、僕の意識は闇へと引きずりこまれていった。






「…きてよ!つ〜く〜よ〜く〜ん!起きてってば!!」


 ペチペチと叩かれてる感触…。あぁ…感覚がある………。あれは夢だったんだ…。起きて初めてそのことに気付いた。


 僕が目を開くと、そこはいつも通りの僕の部屋だった。いつもは居ない未来ちゃんの姿があるのが疑問点だけど。


「お、おはよう未来ちゃん…。って、なんで未来ちゃんが起こしに来てくれたわけ?」


 僕は寝起き早々の疑問を目の前の女の子にぶつけた。すると未来ちゃんは急にシュンとなって人差し指を僕のベッドの上に立て、もじもじぐりぐりし始めた………ッて、いじけた!?


「ひど〜い…。私じゃダメだった?李凛ちゃんの方が良かったの…?」


 遂に涙目にまでなってしまった女の子に焦ってしまい、早口で訂正した。


「ち、ちちち違うよ未来ちゃん!僕が言ってるのはどうして未来ちゃんがここにいるかってだけで別に…未来ちゃんが起こしに来てくれて、嬉しいとは…思ってるよ…」


 なんだか焦りすぎておかしな事まで口走ってないか僕は…?でもその言葉に反応したのか未来ちゃんは泣くようにうつむいていた顔をちょっぴり上げてくれた。


「ホント…?」


「うん!ホントだよ!未来ちゃんが起こしに来てくれてホント良かった!!」


「そっか…よかったぁ」


 にこーっと未来ちゃんの笑顔が咲いた。なんだかまぶしい…太陽に向かって伸びるひまわりのような輝かしさだ。


 そんなまぶしさとは逆に、僕の部屋のドア付近では暗ぁ〜いオーラが漂っていた………。


「へぇ〜〜〜え、そうなんだぁ…いつもわざわざ起こしに来てあげてるあたしには感謝の言葉も無し、でも未来となると嬉しいんだぁ………」


 そんな暗く、恨みがましい声の主は李凛だった。もの悲しそうにこちらを睨んでいる…怖ッ!!近付いたら襲いかかられるかのような暗く静かな威勢だ!!僕はまだ死にたくありませんッ!!


 そんな中、李凛は何も言わずにスタスタと居間の方に歩いていく…。やばい、今謝っとかないとこれからが怖い!!そう思って、歩く李凛を必死に追いかけた。


「チョッ!ちょっと待ってよ李凛!!」


「月夜くんも大変だねぇ〜」


 陽気な声で後を追ってくる未来ちゃんからはなんだかわざとこの状況にしたかのような悪意まで込められている気がしてしまった………。




(朝の夢…あれはなんだったんだろう?最近は見なかったんだけどな、あんな夢…何かを意味するのかな?)




 李凛に平謝りをしながら入った居間には、既にいつもの仲良しメンバーが揃っていた。珍しくも、永遠と陽泉は一緒にいても騒がしくはなかった。なにかあったのかな?まぁいつもいがみ合うほど子供でもないか…。


「で…これからどうするんだ?」


 いつになく冷静な陽泉が単刀直入に言ってきた。さっきまでこの顔に殺される夢を見ただけに顔を合わせづらい…。


「とりあえず、学校の図書室にでも行ったら良いんじゃない?」


 その陽泉の問いに答えたのは永遠だった。昨日暗闇の中であんな事があったためにこっちはこっちで顔を合わせづらい…。でもそんなことを気にしてるヒマもないようで…言い出しっぺの未来ちゃんが悲しげに入ってきた。


「そのことなんだけどね…昨日行ってみたら、その本…誰かに借りられてたの…冊数も少ないしあんまり有名でもないから他にアテが無くて…」


 そんな報告の後、今度は李凛が未来ちゃんを慰めるように言ってきた。


「そっかぁ…それじゃ仕方がないね…。ほら未来、あなたのせいじゃないんだからそんなに落ち込まないでッ…ね?」


 「うん…」と言いながらもいつまでもうつむいてる彼女を見て皆が静まった。


 ………しばしの沈黙が漂った………


 皆、どうしたらいいものか考え込んでるらしい。僕はというと寝起きであまり頭も働かないわけで…。何も考えていない訳じゃなかったけど、しばらくはボーッとしたいという気持ちもありました…。


 ………沈黙が気付かせてくれたのか、僕は大切なことを言い忘れていた事を思い出した。


(ん…?本が借りられてた…?)


「ちょっと待ってて…」


 そう言って僕は居間の戸棚にしまっていた本…先日図書室から借りた『日蝕(ひばみ)伝説』を取り出して皆に掲示して呼びかけてみた。


「本ってこれのこと…?数日前に借りておいたんだけど………」


「ああぁぁぁーーー!!」


 未来ちゃんは叫び声と共にこちらに俊足の動きで駆け寄ってきて僕に言い放った。


「月夜くんが犯人だったんだッ?」


 イヤ犯人て…。確かに皆に借りたことを伝えてなかったのは悪かったかもしれないけど別にそこまで責められる理由でもないんじゃ…?っていうか、なんでみんなの視線が痛いの!?


 李凛、なんでそんな睨むような目をしているの!?陽泉、なんでそんな(あわ)れむような目をしてるの…!?永遠、なんでそんな落胆したような目をしてるの!?未来ちゃん………そんなにもの悲しそうな目をするのはやめてくださいよ!?




 誰か………助けてください………。





 今回も夢です。最近見てなかったですからね。さて、この話では夢もちゃんと意味があるんですよ!!


 この夢は何を意味するのか…皆さんはお分かりになるでしょうか!(すいません、ちょっと図にのりました)


*次回予告*

 今度こそ伝説の調査に突入!!…のはず。

 そこにきて月夜が気付いたあることとは!?




感想、評価、誤字脱字の訂正から辛口コメントなどどんどん…もう送りまくっちゃってください!!

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