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第12話:勝利の一閃

 前日の勉強会は…案の定ただの談笑会に終わってしまい、僕達は準備不十分なままテストに臨むことになったのだが……テストそのものの難しさと、問題が解けたかどうかの有無はおいといて、テスト期間という4日間はあっという間に過ぎ去っていき、気がつけば最後のテストが終わっていた…。


「おつかれー、どうだった…?」


 と陽泉が大きな伸びをしながら歩み寄ってきた。それに僕は特に何も考えず、思ったままを返した。


「まぁまぁかな……」


「お前はまぁまぁって言うけどな、俺とお前の基準を一緒にして考えるなよ。お前の“まぁまぁ”は、俺の“絶好調”となんら変わらないんだからな」


 よっぽど僕が成績良いみたいな言い方だな…………。


「数学とかはむしろ赤点をとるかもしれないとか思ってるくらいだよ…」


 僕だってできれば悪い成績は勘弁していただきたい…。でもそんな心配は無用だとでも言いたげに李凛が暗い顔を浮かべて近寄ってくる。


「月夜はいっつもそう言って高得点とるんだからそんな返事にのせられませんよ〜だ」


 李凛はおどけた口調と裏腹に、表情は哀しそうだった。なんだかかわいそうだな…。永遠もそう思ったのか、李凛の頭を撫でてずっとよしよしを繰り返している。なんだかいじけた妹をお姉ちゃんが慰めているみたいで微笑ましい光景だな…。つい口元がゆるんだ。


 そんな僕の表情がおかしかったのか、いつの間にか僕の隣まで来ていた未来ちゃんがくすくす笑っていた…。この仲間内では比較的余裕そうな顔をしている。いつも通りの光景だ…きっとなんなく解けているに違いない…。


「そうだ、今日道場だよね…?」


 ポッと思いだしたようにみんなに呼びかけた。すると李凛が、


「そうだった…!たぶんお父さん待ってると思うから、あんまり遅れるようだと一発ドカンとくるかもよ………」


「や、やめてよ…シャレにならないから………」


 あの師範から本気の力で一撃でもくらったら、頭の1つや2つ割れないわけがない…。


「違いねぇ…さっさと行こうぜ」


「そうだね…」


 陽泉も永遠も、背中に悪寒が走ったのか…顔を歪めてお互いを見合ってうなずいた…。ただ1人だけ、未来ちゃんは遊園地に行く子供のようにウキウキした表情を浮かべていたけど………。




 …と、いうことで僕達4人の戦士と1人の見学者は、緊迫感を顔に貼ったような面持(おもも)ちと、(若干1名)ワクワクしたような笑顔で道場の門を叩いた…。


「「「「入りますッ!!」」」」


 師範と道場に向けて一言みんなで断りを入れた後、先頭の僕は引き戸を開けた。


「遅ぉいッッッ!!」


 僕が引き戸を開けたその先には…竹刀が僕の顔面向けて振り下ろされてきていた。その瞬間、李凛のさっきの一言を思い出した…


『たぶんお父さん待ってると思うから、あんまり遅れるようだと一発ドカンとくるかもよ………』


 その予言(?)通りの展開に、僕は少々驚きながらも己の身を(ひるがえ)しながら振り下ろされる竹刀の右側に移動し、体を一回転して竹刀を握る師範の両手を左手で押さえた…。


 その間(わず)か0.73秒……!!よくもまぁこんなにも上手くいったな………。


「よくかわしたな…」


 みんなが唖然と口を開けたなか、師範がポツリと呟いた。


「たった1〜2週間ぐらいじゃ鈍らないよう鍛えられましたから…」


 僕は静かに…でも敵意剥き出しの目で師範に語りかけた。カッコつけたいわけでも師範の不意打ちに怒ってるわけでもない…。でも、この人の前で隙を見せてはいけないという動物的本能がそうさせるのだと思った。


 師範からは『お前のその虎のような目が気に入っている』…なんて言われた記憶があるけど、この間の永遠の一言といい…僕はどう転んでも猫科らしい…。


 しばらく経って、おのおのが剣術兼弓術着に着替え、今日は剣術の試合を執り行うことになった。


 この道場では、剣術をする者が4人と師範を入れて5人居るが、基本男女の差別もお互いの容赦もない。みんなもう充分一人前の腕だ。昔はそこらじゅうにアザだったり傷だったりたくさんついたが、最近ではもうそんな酷い事態には至らなくなってきている…。


「今日は月夜とかよ…。お前と違ってこっちは鈍りまくってるっつの………」


 陽泉がいじけたような口調で吐いてきた。目線の先には対戦成績表が張り出された壁があった。総当たりを何度もやる僕達の対戦結果が記されている。



1.緘森かんもり 月夜つくよ─15戦14勝01敗

2.青旦せいだん 陽泉ようせん─15戦10勝05敗

3.観籍みせき 李凛りりん─15戦03勝12敗

4.真札しんさつ 永遠とわ─15戦03勝12敗



「お前のその武術の才能はなんなんだか…」


 僕がじっと戦績を見ていると、陽泉がウンザリしたような顔で僕に言葉をほうった。


「ちゃんと鍛錬に集中してれば大丈夫だよ」


 僕だってもし負けてケガでも負うようなことがあったらいやだ。そんな気持ちで一心に鍛錬した。それに、陽泉だって強い方だ…。僕の1敗っていうのは陽泉からのものだ。


 僕達の剣術は基本的にメンもコテもドウもない。相手に“参った”と言わせるか、相手に改心の一撃を打ち込むか、竹刀を相手の手元から弾き飛ばした方の勝ちというなんとも簡単な上…危険なものだ。


 防具は、内側に衝撃吸収素材付きの鉄板が仕込まれたバンダナのようなもの。そして剣道よりは軽めで薄めだが、けっこう丈夫な鎧。それぐらいだ。おそらく動きやすさ重視で相手の竹刀を“受ける”というよりも“避ける”事を念頭に置いて設計されたものだろう。


 半ば無理矢理始めさせられたこの道場での鍛錬だったが…なんとかここまで続けてきた。



 ……そして、試合は始まった………。




「始め!!」


 師範のその声と同時にまず動いたのは陽泉───


「はぁッ!!」


 僕たちの試合に特別なかけ声も技名を叫ぶこともいらない。ただ相手に一撃を加えることだけを考えて陽泉は天高く振りかぶった竹刀を僕の脳天めがけて落としてきた。


 僕はそれをかわして振り下ろされた竹刀の横に移動する。横一閃よこいっせん……僕は陽泉の腹を狙って竹刀を横にいだ―――


 だが陽泉はバックステップで勢いよく下がり、僕の一撃は空を切った。そこから僕は続けて腕を振り切った状態からまた横切りを仕掛ける―――


 一方陽泉は下がった先から僕の横向きの竹刀に縦向きの竹刀を合わせてきた。2人はそのまま鍔迫り合い(つばぜりあい)を続け、(はた)から見たら硬直してるようにどちらも一歩も譲らなかった。


 数秒後、2人とも一斉に退(しりぞ)き、体制を整えた上で陽泉が…今度はアッパースイングのように竹刀を振った―――


 その一撃は(かす)った…下からの攻撃に焦った僕は頭の防具が吹き飛ばされた。だが僕は、陽泉が上へ腕を振り切ったことで懐ががら空きになっていることを見逃さなかった…。


「ッやぁ!!」


 僕はすかさず横切りをする―――陽泉の腹に太刀たちひらめきが走った…………。


「ぐはぁッッ!!」


 一撃を受けた陽泉は道場の真ん中に大の字になって散っていった…。




…………シーン…………




 激闘の末の勝利をかみしめ……僕は竹刀を握る力をゆるめた……





この話にはもしかしたら合わないかも…と思ったバトル編でした


バトルって書いてるだけでも疲れますね…でもちょくちょく書く気でいますので、気に入らないようでしたら遠慮無く言ってください…



*次回予告*

テスト、そして友人との格闘の末、念願の夏休みを迎える月夜達…夏はやっぱり○○!!


感想や意見、評価や辛口コメントなんでも良いのでお待ちしておりますよ!!

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