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第11話:テスト前は談笑会

 僕たちの慌ただしい歓迎会兼お泊まり会が終了した……。なんだか長い1日だったな。その日は永遠の家に2日もいて迷惑をかけるわけにはいかないと思い、昼での解散になった。


 そして、月曜日からはなんとテストが始まってしまう……。あまりにも李凛がしつこく教えてくれと言ってくるので、僕達は勉強会を開くことにした。それもなぜか僕の家で…。




「おっじゃましまぁ〜すッ!」


 と毎度毎度朝から元気のいい李凛が入ってきて…


「朝からホント声でかいな…」


 と呆れた感じで永遠が続き…


「でも李凛ちゃんらしいじゃない」


 とにこーっとした笑顔を浮かべて未来ちゃんが続き…


「限度も必要だけどな…」


 と陽泉が皮肉っぽく幕を閉じる。


 僕はそんないつも通り平和丸出しのメンバーを居間に促した。そこでは長方形の6人掛けのテーブルで、それぞれの学習を始めた……ハズだったんだけど。


「疲れたぁ…」


 まだ1時間も経ってない段階で李凛が音を上げた…。


「努力という言葉を知らんのか……」


 陽泉が呆れ果てる中で、李凛が続けた。


「だって日頃勉強なんて頑張ってる方じゃないんだから、いざって時にできるわけないじゃん」


「開き直っちゃったらおしまいだよ……」


 僕まで呆れてつい口に出てしまった……。


「月夜と一緒にされたら頭が持たないよ…」


「まぁそれは一理あるのかもな…。お前がなんでほとんど学習時間もとらないまま成績上位に食い込んでいるのかがわからん…」


「陽泉まで…」


 確かに僕はあまり勉強時間がとれない…。もしかしたら勉強ができる方の人間なのかもしれない。……なんだかこんな事まで思ってしまうといやな人間だな僕。


「ふふッ、月夜くんも大変だね。みんなに目に(かたき)にされて……」


 聖母のような優しい微笑みで見守る未来ちゃんが言った。この中で1番成績がいいのは未来ちゃんのハズなんだけど…。


「未来も蚊帳(かや)の外じゃないだろう」


 誰もが認める天才的脳髄の持ち主に永遠がつっこんだ。


「そんなことないよぉ…」


 未来ちゃんが困ったような顔をしながら僕達に目を配ってきた。確かに、その目から察するに努力無しでの結果ではないようだ…。


「あ、そうだ…僕達の夏休みの課題なんだけど……総合学習ってどうするの?」


 今回の僕達への夏休みの課題……“総合学習”とはグループを作り、自分達が決めたテーマについてのレポートを提出するというもの。そのことの相談を僕が持ちかけた。


「そのことなんだけどッ」


 未来ちゃんは僕の言葉に反応し、思い出したかのように手を軽くポンとたたいて目をキラキラさせた。


「これなんてどう…?」


 未来ちゃんは続けてカバンから何やら書籍らしきものを取り出した。…小説かな?そしてその表紙を見てみると……。


「日蝕…伝説?」


「うんッ!」


 僕が問いかけると、未来ちゃんは幸せいっぱいといったような満面の笑みでうなずいた。


「日食じゃないのか…?」


 陽泉が静かにつっこんだ。確かに…太陽と月が重なる現象なら“日食だ”…。でも僕達が知ってるものとは違う字体…“日蝕”。


「これはね、昔のある時代の物語なの。これは日蝕ひばみって言って、その名の通り日輪たいようを蝕むというもので……」


 直前の子供のようなワクワクした笑顔が消え、見たことがないような神妙な顔で語り出した…。




―戦国の時代………世は乱れ、血で血を洗ういくさの中、その現象は起こった。それはこの世界では日蝕ひばみと呼ばれる。…見た目は通常の皆既日食となんら変わりない。だが、地上から見える太陽の形がリング状になった瞬間…本当の日蝕が始まる。文字通りの日輪は、細い光の糸が輪になったような形だ。だが、その輪が時計回りにどんどん光を失っていく…。


 そして地上に太陽の光が全く注がれなくなった時、地中深くで眠っていた妖怪達が地上に出てきて人々を喰らうという…。




「へぇ〜、知らなかった…未来ってそういうのに興味があったんだ……」


 最後の部分に恐怖したのか、李凛が少々身震いしながら呟くように言った。それに未来ちゃんが慌ててフォローを入れる。


「いやッ!違うよ!?恐いのはむしろすっごく苦手なんだけど…この本は小説でね…この日蝕を止めるために闘う人たちの宿命と人間観を描いたものなの」


 そんな恐いような伝説を舞台にした人間達の物語……なんだかわからないけど、ドロドロな予感………。そんな僕の心情を読んだのか、未来ちゃんがまたまたフォローを入れてきた。


「ホントにその人たち自体は、なんていうか……とっても…ピュアなんだよ?」


「で、その伝説を調べるテーマにしてはどうかと…?」


 陽泉が本題に戻した。こういうときはさすがに場のコントロールが上手い…。


「僕はいいと思うよ、その日蝕を止める人間達の含めてレポートを作れば…」


「ありがと、月夜くんッ!!」


 断られるのがよっぽど不安だったのか、彼女は僕に対してすごく目をキラキラさせて喜んで見せた。…なんかかわいい。


「あたしもいいと思うよ、未来がこんなに熱心になってるところも初めて見たし」


 と、永遠が続いてきた。それに陽泉も賛成のようで、李凛だけが渋々参加するような態度を見せた。「小説を見ればその人達の恋愛事情とか見られるから…」といわれた李凛は、とりあえず恋愛ものは好きなようで…読んで惹かれたら積極的に頑張るそうだ………。




 テーマが決まったことで安心した僕たちは、案の定その後も勉強会は中断のまま…ただの談笑会となった…………みんなテスト大丈夫かな?





 まぁよくある高校生達の勉強会の行く末ですよね…談笑会。誰でも心当たりはあることかと…。


 さて、この日蝕伝説がこれからのこの話の主題となります…。

 が、たぶん最終的にそのことに触れるにはまた数話かかると思われますので次話からもほのぼのとした高校生達の仲良し生活をお楽しみ下さい…。

 

 日蝕伝説の中での恋愛モノも番外編で見たい人は意見下さい。できるだけ…いや、必ず書きたいと思います!!


*次回予告*

“テスト”……誰もが戦慄するその言葉に、真っ向から立ち向かう生徒達!!…でもテストはかる〜く流しますのでご注意を……次話は道場(バトル)編です!!


感想、意見、評価、辛口コメント等々受付中ですのでよろしくお願いします!!

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