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第9話:ラブストーリーは突然に

 歓迎会の後、寝ている未来ちゃんに気を遣い、僕と李凛は夜の公園へと来ていた……。




「おじさんとおばさん元気かなぁ……」


 ベンチからブランコに座り直した李凛がゆっくりとこぎながら呟いた。おじさんとおばさん…僕の父さんと母さんのことだろう……。


「定期的に手紙も来るし、元気にやってると思うよ」


 少し心配そうな李凛をそんなありきたりな言葉で励ましてあげた。心配な気持ちはよくわかる…。家族だからといえばそれはそうなのだけれど……。何せあちこち飛び回ってる2人自身はお互いに会ったりしているのだろうか……。


 そんなことを思っていると李凛が口を開いた。


「でも、おじさん達が不在の時にもし月夜に何かあれば……」


「考えすぎだよ。…そんなにテキパキしたような性格じゃないから急いで道路を渡ったりして車に轢かれたりもしないし、一応これでも鍛えてるんだから体をこわしたりもしないよ」


「でも…一度“引き取ってもいいよ”って言ったのに、ロクに協力もできないようじゃ……」


「断ったのは僕だし、男と一緒の生活なんて嫌でしょ……?」


 それはそうだろうな…自分で言いながらにそう思う。年頃の女の子が家族同伴とはいえ同棲なんてそれはいろいろ不満もたまるはずだ。


「月夜なら…別に………いいけど…………」


 え……えぇッ!…………えぇぇぇぇッ!!!!


 なにそれッ!!どゆ事ッ!!僕ならって……。それって…遠回しの告白…?


 ヤバイ、焦ってきた……。イヤな汗かいてきた。それはまぁ嬉しいは当然のごとく嬉しいんだけどそんな急に……いや、でも『ラブストーリーは突然に』なんて言うからこんなもんなのか!?どうしよう……とりあえず叫んどこうか…………。


 そんな焦りの境地に達していた僕に、李凛は補ってきた…。


「べッッッ!!別にそーゆー意味じゃないからねッ!?ただッ!……月夜がいたらあのおいしい玉子焼きとかの料理も毎日のように食べられるんだろうなぁ…………なん、て……」


 李凛は全然意識してないような言葉とは裏腹に、めちゃめちゃ紅潮した顔で、何をどーしていいのかわからないと言ったようににやけながら、激しく言葉をぶつけてくる。あっちも相当焦ってるようだ…。最後の方にはもう聞こえないぐらいの大きさに、言葉がフェードアウトしていった。


「「……………………」」


 2人ともうつむいたまま沈黙…。彼女の顔もそうだろうけど、僕の顔はまるで重病をわずらったように熱を持っていた。


 ただひたすらの沈黙…………。だがそんなとき、公園の入り口から人影がひとつこちらに向かってくる。あれは…陽泉だ。


「おーい、永遠が部屋用意してくれたからさっさと風呂はいッ…ッてどうしたッ、2人とも…?そんなゾンビみたいなうなだれた体勢で……?」


 こんな夜中ならそうも見えるだろうか…。月はほとんど雲に隠れている。これなら紅い顔にも気付かれずにすみそうだったので…僕たちはとぼとぼと、首をかしげる陽泉の後ろをついて行った。




 結局…未来ちゃんは起きなかったようで、李凛と永遠で2階の永遠の部屋に運んだらしい。


 一方僕らはというと…ぼろいとはいかないまでもそれなりに年季の入った部屋にたった2人押し込められていた。まぁ野宿よりはましか。


 僕らはおとなしく悲しい男どうしの談義と洒落込んだ…。


「陽泉は長風呂だね……」


 やっと風呂から帰ってきた陽泉に僕が呼びかけた。陽泉は男には珍しく風呂好きで、長く入ったり、1日に2・3回入ったりするそうだ。


「風呂は格別だぞぉ〜…!気持ちがイイしさっぱりするし」


「おじいさんみたいだな…」


 そんなことを言った後、陽泉がにこやかな笑みを浮かべながら言ってきた。


「そんなことよりお前、あれからなんか変だぞ…?」


「あれから………ッて?」


「公園で李凛といたときだよ…。ケンカでもしたのか?」


 結構勘の鋭い陽泉でも気付かないなんて……そんなに気まずそうに見えたかな…?


「べ、別に……ケンカしてるわけじゃないから…気にしなくていいよ」


「そんなこと言われてもねぇ…お前らがなんとなくギクシャクしてるのはわかっちゃってるわけだし……」


 僕はうつむき続けた…。今まさに顔が紅くなってる…。そんな顔を見られないために必死で下を見続けた。そんな僕の姿に何か感じ取ったのか、陽泉はそれ以上を語ろうとはせず、知らん顔をした。


「わかった…これ以上は言わねーよ。そんな野暮やぼなことはゴメンだからな。ただ、なんかあったときは言えよ…?」


「うん、ありがと…」


 僕は、陽泉の友達を心配する優しい顔を垣間見たような気がした…。微妙にいつものからかうときの顔も混じってたような気もするけど……。




 布団に入りながら…眠気が来るのを待っていた………。さっきの李凛とのことが原因なのか、全ッ然眠れないッ!!……意識しすぎだろうか…。そう考えるとなんだか哀しくなってくるな。


 ふと横を見ると、そこにはいつの間にかさっきまで横になっていた陽泉の姿が見あたらない……。また風呂にでも入っているのだろうか………。


 僕も後で入らせてもらおうかな…と、陽泉に呼びかけに部屋を出た……。




 そしてバスルームの前へと来た僕は、途中通った玄関で気付かなかった……。玄関のところにも、靴棚にも……陽泉の靴が無かったことに…………。





李凛を意識してしまった月夜……さぁ、どうなっちゃうのか…………作者自身もどうなるものやら…。


*次回予告*

陽泉は外!?…そしてバスルームで月夜を待ち受けるものとはッ!?次回、トラブルの予感!!



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