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f値小さく、そこに写されたもの  作者: 未月かなた
2/12

離婚式

参列していた大学時代の女友達と、彼女達の入場を待つ間、ユリカはチャペルの椅子に座り話をしていた。港が見え、高台にある式場は、以前その隣の結婚式場で、彼女とその夫が、5年前に式を挙げ、その時もユリカは参列した。

「ルコらしいわよね。離婚式なんて。今時。親世代で流行したしきたりじゃない」

ルコの結婚式以来ぶりに会う、大学時代の同級生のシーナは、当時の個性的な服装や化粧の面影なく、地味目なグレーのフォーマルスーツと、薄い化粧の装いでユリカに話しかけた。

「あの子自身、真面目だから。ルコらしいって、私は思うわ」

ユリカは、苦笑いを浮かべて話した。

ユリカとルコは、大学時代に出会った。学科は別だったが、同じゼミを取っていた、シーナがルコを紹介してくれて、そこからの付き合いだった。

ルコの離婚の話は、随分前に本人から聞かされていた。勤務先の会社社長である夫と結婚したのは、就職1年目の事だった。元は、大学の先輩でもあった男で、当時から2人は将来結婚するのだと思っていたが、男の仕事は軌道に乗りかけていた時点の結婚で、周囲は驚いていた。ルコは、悩む事なく結婚を受け入れ、彼の秘書として支えていた。

仕事に対しては熱く、社員想いの人柄だったが、女癖は悪い事は社員どころか得意先でさえ承知の事だった。ルコは、それを見て見ぬ振りを続けた。そうする事が、自分自身にとって楽な事だったからだと、ユリカに以前話していた。

「あの人、他にもたくさん女の人いるのよ。会社起こして、1年も経たないうちに、その存在に気がついたわ。けど、それでもいいのかと、鉛でも飲み込むように、私は彼の行いを、見て見ぬ振りをしていた。それに、私、仕事でヘッドハンティングされてて、人材育成の為の講演会に今後力を入れようと思うの。だから、いい機会だし、会社からも、彼からも離れたかった。元々は、彼から言い出したんだけど。相手に子供ができたんだって。一緒に育てて行くみたい。私達には、そう言うのなかったから」

もともと、2人は 結婚して子供を持つと言う事は望んでいなかった。お互いがしたい事を尊重しようと、言うスタイルだったと、ルコは言っていた。

大人しい性格だが、自分が考えていることや、やりたい事への意思は強く、芯のある方だとユリカは思っていた。

「ルコがいいなら。私は、ルコの生き方を応援するわ」

「ありがとう。それと、ユリカにお願いがあるんだけど…」

食事をしているテーブルの向かいに座り、ルコは少し言葉を詰まらせ、表情を固めていた。ユリカは、次にどんな事を言い出すのか、想像がついていた。

「リョートの事?」

ユリカが先に、リョートの名前を出すと、ルコは困った表情を見せ無言のまま頷いた。

「離婚する事、言わないわよ」

「ありがとう」

ユリカが例え黙ったままでいても、いつかは知られてしまうのだろうと、ルコのその表情からユリカは察していた。

「けど、暫く会ってないでしょう? 連絡とかもないんじゃない?」

「うん。私の結婚式以来だと思う」

「すごいよね。自分の結婚式に呼ぶだなんて? リョートの片想いのキミさん」

悪戯に言葉を出すと、ルコはムッとしてユリカを見た。

「その言い方やめて。お陰であれ以来、何も無いけど」

リョートとルコは、高校生からの同級生だった。ルコは今と変わらない、ふわりとした可愛らしい容姿で学生時代には、たくさんの男子から好意を持たれた事を、教えてくれた。

リョートもその中の1人。ルコにとっては、その他多勢の1人にしか過ぎなく、リョートはそれでもルコに何度も告白をしたと言う。

「当時、彼氏とかはいたんでしょう? それでも、告白してくるって、リョートもいい度胸ね?」

ユリカの言葉に、ルコは小さく横に首を振って見せた。

「それが、高校の頃、彼氏どころか、好きな人すらいなくて。けど、大学入って、やっと彼と出会って付きあっうことできたけど」

「それでも、リョートめげなかったよね? アイツ、そんなに執念深さがあるなんて、知らなかったわ」

「彼と別れて、僕と付き合ってほしいだなんて言うのよ。どう言う神経してるのかな。それに、如月君て、寡黙というか、何考えているかよく分からなくて」

「まぁ、今は研究に励んでるから。ルコが心配するような事は無いと思うけど。 それに、ルコは、芯がしっかりしてるから。万が一、またリョートが告白でもしてきても、ちゃんと断れる力持ってるでしょう?」

ユリカはルコと視線を重ね、それを確認するかのように見つめていた。

「そうね。如月君とは、そう言う事にはならないわ」

沈んだ暗い表情に、微かに口角を上げたのは、ルコなりの強がりにも見えた。


式は正午に始まった。お互いの親族や友人、知人らが参列していた。

シックな黒いドレスに、黒のレースのベールを纏い、白い薔薇の花束を手にしたルコは、凛とした姿をしていた。

神父の前でルコ達夫婦は、離婚の意思を伝えた。

「決別の抱擁を」

神父が言葉を示すと、2人は軽く肩を抱き寄せあい、ゆっくりと身を引き離した。

結婚指輪を外し、神父へ手渡すと2人は肩を並べて歩く。ユリカは、清々しい表情を浮かべていたルコを見送りながら、2人はチャペルを後にした。

お読み頂き有難うございました。

離婚式と言うものがあった、どうなんだろう?と。

思い浮かんで、タイトルや本文にしてみました。


ストーリーはまだ続きます。

次回もどうぞよろしくお願い致します。

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