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好きになること

作者: セツナ
掲載日:2019/02/08

人を好きになるってとっても幸せなことなんだと感じた。



私が好きになったのは、二つ年上の上村先輩。

私の所属する弓道部の先輩で、先輩の弓を引く姿に憧れて弓道部に入った。

憧れが恋心に変わるのにそう時間はかからなかった。


先輩はいつも楽しそうで、ニパッと笑う笑顔が好きだった。


先輩が好きだと自覚してから、部活が楽しみになった。

先輩を見てると幸せだと思えたし、とてもキラキラして見えた。

それに、先輩と話すたびどんどん好きになっていく自覚があった。

ふわふわして、回りが見えなくなる。

〝恋は盲目〟ってまさにこの事だと思う。

でも、先輩は贔屓目に見てもとてもかっこよくて、後輩や、同輩からも、とても人気があった。

先輩からも人気があったらしい。

だから、私なんかが出る幕なんてないんだろうなって諦めていた。

毎日毎日目で追うだけの日々。

同級生のなかには当たってくだけた子達も数知れず。

そして、そんな彼女たちから語られるのはいつも同じ言葉だった。

〝先輩、好きな人いるんだって…〟

誰だかも分からない〝先輩の好きな人〟に嫉妬してしまった日を覚えてる。

でもそれも、人を好きになることのひとつの醍醐味なんだと思えた。

苦しくて、泣いた日もあった。

けどそれでも幸せでいられたのは先輩のお陰だと思えた。


そして…時は過ぎ

迎えた、先輩の卒業式。

先輩と別れるのは寂しいけど、それ以上に幸せだと思える日々が数えきれないほどあった。

先輩と話した日、弓の引き方を教えてもらった日、誉めてもらえた日……

どんな些細なことでも、他の人が聞けば馬鹿馬鹿しいと笑ってしまうようなことでも、全部が私の宝物だった。

キラキラ光る宝石のようにそれは私の心を満たす。

だから、笑顔で先輩にお別れしようと思った。

私にとても素敵な時間をくれた先輩に心から感謝をして。

でも、やっぱり、悲しくて辛くて、どうにかなってしまいそうだった。

下駄箱に小さく折り畳まれた手紙が入っていたのに気づいたのはそんな思いを抱えながら、どうしようもなくあふれでそうな涙を押さえていたき。


そこには、綺麗な字で、

〝放課後、弓道場に来てください。〟

と、書かれていた。


トクン、と

心が逸るのを感じた。

あせる心を押さえて弓道場に向かう。

校庭や校舎には、まだ、三年生の卒業を惜しむ在校生や、それに応える三年生が多く残っていた。

もう日は陰り始め、校舎には西日が差し込んでいた。


パタパタと走って弓道場に行くと、そこには見慣れた後ろ姿が太陽の光に包まれていた。


「あ、来た。」

その人が、振り替える。

「ごめんね、こんなところに呼び出して。どうしても、実感できなくて…」

そう言って笑った笑顔はとても素敵だった。

そして彼は、私のことをまっすぐ見つめる。

ぶわっと顔が熱くなる感覚があった。

彼がおもむろに口を開く。

「君に、伝えないといけないことがあるんだ……」


あれから四年。

私は無事高校を卒業して、大学に入学することができた。

カタン、と後で音がした。

誰かがキッチンに入ってくる。

「わっ、うまそーだな。朝陽の作る飯はいつもうまいよな」

そう言って彼はニパッと笑う。

「もうっ、上村先輩、料理してるときは危ないから入ってこないでって言ってるじゃないですか。本当に怪我したらどうするんですか!」

「まぁまぁ、いいじゃないか。…それと朝陽、上村先輩じゃなくて?」

「……っ!!」

ぶわわっと顔が熱くなる。

「り、りり…り…」

「うん?」

首をかしげて顔を除き込んでくる。

「り…陸人…しゃん……っ!」

「ふ、ふふっ、しゃん、って…。まぁ朝陽らしくて良いよね。」

「かっ、からかわないで下さい!」

笑われてむくれる私の頭を撫でながら、まぁまぁ、と一人楽しそうな先輩を恨めしそうに見上げる。


あの日―――…

弓道場にいたのは、人気者の上村先輩だった。

彼は私に向き合って言った。

「ずっと、好きだったんだ。…よければ、付き合ってください。」

ちょっと赤くなった先輩をかわいいと思った。

自分の顔にも熱が集まっていた。

憧れの先輩、大好きな先輩が自分を見ていてくれたことが嬉しかった。

「返事はいつでもいいから…」

いつでも、なんて。

今、この瞬間にもあふれでそうなこの気持ちを…伝えても、良いのだろうか。

頭では冷静に考えているつもりでも、心は素直だった。

タンッと床を蹴り、気づいたら、先輩の胸に飛び込んでいた。

「私も、好きです。だ、…大好き、です…」

ありったけの思いを込めてその言葉を口にすれば、彼は

「俺も」

ギュッと強く抱き締められる。

あぁ、この人を好きで良かった。

そう思えた瞬間だった。


あの日、先輩に恋をして、幸せだと思えた。

そんなこと、きっと一生に何度もない。

だからこそ、今を大切に。


私は今日も大切な人と共に未来に向かって一歩踏み出す――…

お読みいただきありがとうございました

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― 新着の感想 ―
[一言]  人気者は恋愛の芯がしっかりしている印象です。
2019/02/09 20:54 退会済み
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