記憶列車(一人Ver.)
気が付けばここにいる。
僕がいるこの列車には僕一人。
窓から見えるこの景色は霧がかった地面が雲のようなもので
それが延々と続く景色が目の前にも後ろにも広がっており、
この列車だけがその空間にぽつりとあるだけだった。
行き先は何処だろうか。
この列車は何処から来たのだろうか。
それが気になって仕方のない僕に、前の車両からの扉が開く。
来たのは車掌さんだろうか?
そのような服をしているだけで、姿は影のようだった。
暗い肌に白い手袋をした、車掌特有の格好をしていた。
黒いというか、暗いというか。
肌の部分がすべて陰でできていた。
その車掌は、僕に手を差し出す。
なぜか切符の拝見だと理解していた僕は、
何故か記憶していた胸ポケットに手が伸びる。
何故か気にならないその工程は何事もなく終わる。
終わった後、僕は後ろの窓へと顔を向ける。
この列車はどこまで続いていくのだろうか。
それを気にしながらも、
終わりの見えないこの旅路を楽しむことにしよう。