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7/9

『スコッパー・モウルのぼうけん +モウルとワナビのおじいさん+』

先に紹介した古武術詐欺師の真宵駆さんの作品です。

古武術詐欺師同様、物語が動く際の動かし方が巧みで思わず舌を巻いてしまいます。


そして危険なネタを淡々と調理し続ける姿勢が実に見事。

ですがこの物語のジャンルは【童話】です。(迫真)

もちろんこの物語の内容はフィクションです。(迫真)

 【あらすじ】

 巨大都市「ツー」片隅に住む少年モウル。

 名無しの人達が溢れるツーの街で毎日面白おかしく過ごしていたモウルでしたがある日とあるニュースを見て小説家を目指す事を決めます。


 そのために住みなれたツーの街を離れ物書きの集まる「ナーロ」の街へやってきたモウル。

 しかし思いつきで書き始めた上に無理に流行を取り入れたりしようとするものでなかなか人気は出ない。

 そこでどう人気を出せばと思い悩んだり……はそれほどせず、自身の執筆活動の逃避としてのスコップ活動を行ったりしながらナーロの街でありがちな色々な出来事に関わったり関わらなかったりして飄々と過ごして行くのでした。




 ……といったストーリーとなっています。

 ツー……2ちゃn……ナーロ……なろ……うう、頭が……!




 主人公であるモウルは良い意味でなんとも掴み所の無い性格をしています。

 長年2ちゃ……ツーで過ごしていただけあり、楽しむ事に一生懸命で独自の美学(?)を持っている。良し悪しをしっかり判断出来る良識(?)を持ちながら楽しむ上で必要とあればそれに拘らない、左右されない。

 そんなネタ板民特有の常に全力で楽しもうとする姿勢はどこか好感がもてます。


  

 そしてこの物語の特徴は何といっても色々と危険なネタの数々でしょう。

 そもそもモウルが小説家を目指すきっかけが「なろう 脱税」なニュースで小説が儲かる物だと思ったからですし。

 ツーからナーロの街に来てからもアンチと信者との争いで燃える作者の家や評価の水増し&相互な関係に関する話題や書籍化に関するあれこれなど、作品自体は2015年に書かれた物ですが現在でもなろ……ナーロで話題に上る事のあるようななかなかに危険なネタが目白押し。消される!消される!(危惧)


 もちろん危ないネタだけでなくナーロでありがちなあるあるネタも完備。

 流行の話やエタりの話やそれに伴う諸々の心理描写や分析など、危険なネタとはまた違った意味で身につまされる人もいそうで、これはこれで危険かもしれませんが。

 


 そんな日々を送る内、いつものようにスコップ活動をしていたモウルはある一つの童話と出会います。

 その作品を書いたのはもう50年は投稿を続けているというワナビなおじいさん。良い作品を書いているものの、長年投稿や賞への応募を行っていても第一選考すら通らないと言います。

 

 賞関連が万年落選状態のためか先に受賞していく後発作者に嫉妬しつつも長くは引きずらない。

 賞に落ちた事に落ち込みつつも立ち直りも早い。

 長年書き続けているだけあり小説を書く事を心から楽しんている。

 

 等々、どこか見ていて応援したくなるおじいさん。これも「書き続けられる作者」の一つの形なのだろうなあと思ったり。

 賞を取る事を目標しつつも、書く事によってもたらされる物に拘らず書く事自体を楽しむ。そんな姿勢が羨ましいと感じる作者さんもいるのでは?

 

 

 

 おじいさんと出会った後もおじいさんと一緒に色々きわどいネタに触れたり触れなかったりと楽しく過ごすモウル。

 しかしそんな二人に物語後半で大きな動きが起こります。

 そこは大きなネタバレになるので言えませんが、衝撃的な展開ながらもここまで読み進めてきた読者ならどこか納得してしまうような流れとなり、ラストシーンでは思わずジーンとしてしまう事でしょう。

 

 散々危険なネタに触れて好き放題に展開しているのに最終的にあらすじ通り何故か心温まる展開になっているのがなんかくやしい(謎)。

 というか本当にすごい。


 



 触れる話題や導き出そうとする結論にもよると思いますが、不快感を伴いそうな話題に触れる際に重要なのはそれをそうと感じさせないユーモアではないかと思います。


 なろうという場に関する問題点や不満点などなろう自体に触れた作品は多く存在しますが、この作品ほどそういった問題を淡々とパロディする作品をほとんど見た事がありません。

 最近だと「なろうが冒険者ギルドだったら」という作品に同じような感覚を持ったくらいでしょうか。あちらも素晴らしいパロディ作品でした。

 

 この作品は割と危険なネタを突っ込んでくるのに巧みな文章力と作者さんの強靭な精神力に支えられたユーモアに包まれていて不快感や嫌悪感は全くといっていい程感じません。

 もし感じる事があるとしたら、この物語によってもたらされたというより元々自身の中に存在する悪感情の影響が大きいのではないか。そう思わせられる程に。


 

 書かれたのは結構前ですが、この作品はなろうに関する風刺(?)やパロディ(?)の傑作だと思います。

 それでいてネガティブな事だけでなく小説を書く事に対する前向きな想いなどもきちんと含まれており読後感も非常に良いです。


 色々な意味でこういった作品としては出色の出来だと思うのですが何で伸びてないのだろう(疑問)。





 作品名:  『スコッパー・モウルのぼうけん +モウルとワナビのおじいさん+』

 URL:    http://ncode.syosetu.com/n7956ct/

 作者名:   真宵 駆 様

最後まで読み終えるとこの物語のジャンルが【童話】である事が納得できるんじゃないかなあと思ったり。

作中のネタが分からない子供やなんとなく分かる大人もどちらも楽しめる作りになっており、ある意味大人も子供も楽しめるのではないかと思います。

ただ子供はお父さんやお母さんに「これってどういう意味?」と聞いてはいけないゾ。

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