『お兄ちゃんがお母さんで、妹が甘えん坊なお話』
この作品に出合ったのは日間その他のランキングを眺めていた時の事だったと思います。
読み始めた時はそれほど期待していなかったと思いますが(失礼)、読み始めてみたらあまりの主人公の愛されっぷりに夢中になってしまった覚えがあります。
【あらすじ】
17歳の男子高校生、高宮 涼羽。
彼はある日実の妹である高宮 羽月から耳を疑う様な「お願い」をされる。
事が事だけに躊躇う涼羽だったが、幼い頃に母を亡くし父親は単身赴任で殆ど帰ってこられないという状況下で二人きりの家で親代わりに面倒を見てきた涼羽にとって、その強い想いは否定し難いものであり、結局妹のお願いを断り切れず応じる事になる。
兄妹二人の秘密の行為。
……だったのだが、それをきっかけに平穏だった涼羽の日常は大きく変化していくのであった。
……というあらすじになっています。
秘密の行為については第一話でさっそく語られますのでお楽しみに。
第一話の地の文で語られる主人公紹介では中性的ながらあまり目立たない容姿で成績・運動も平凡、と書かれているのですが、
・クラスメイト等家族以外の他者と親しくなろうとしておらず、その上顔が髪で隠れていたり無表情だったために気付かれなかっただけで、実は10人中10人が振り向くような美少女(!)のような容姿。本人は嫌がる(恥じらう)ものの何度か女装させられていたりもする。そしてその姿に周囲がまたメロメロにされていたりもする。
(※男子高校生です)
・料理含む家事全般の腕は専業主婦レベル。
・成績は上から数えた方が早いくらいにはこなせる。
・独力でもはや趣味レベルを超えるレベルでPC関連の技術を身につけていっている。
・地域最強と恐れられるガタイの良い不良をタイマンで倒せる身体能力。
等、物語が進むにつれ徐々にハイスペックっぷりが露わになっていきます。
物語が進むにつれ他者評価も高くなっていくのですが、主人公は何故か自己評価が低く、容姿も含め自分がハイスペックである事を自覚していません。
しかし「自分はまだまだだからもっと学びたい」「教えてくれる人に心からの敬意を払う」等、その事が逆に良い方向に働いています。
そんな主人公の姿勢がまた周囲を魅了して行く訳ですが。
そしてそんな主人公を取り巻く周囲の人々。自己をどの程度保っていられるかという違いはあれど概ね主人公にメロメロです(ぇ)。
色々心配になるレベルで主人公が大好きな妹ちゃんや子供達を溺愛する父親は元々主人公の事が大好きなので良いとして、
・主人公の魅力に最初に気付き物語が動き出すきっかけを作った女子クラスメイト。
・魅力を知った妹の学校のクラスメイト達。
・偶然出会った幼女にその親・祖母、学校の教師陣、行きつけの商店街の方々。
・主人公を毛嫌いしていた風紀委員、最強の不良と呼ばれる男子高校生。
・とある縁でバイトとして手伝う事となった保育園の経営者や保母さん、そこに通う園児達やその親。
・父の会社の部下達。
等々、ストーリーの展開に伴って多くの人達に愛されます。それはもう清々しい程に。
そういった人達が主人公の魅力を知るに至った経緯や、それを知りどう思ったか・どう魅せられたかという過程もしっかり書いてあるので、読者側としても気持ち良く主人公の愛されっぷりを楽しむ事が出来ます。
ちなみに恋愛的な要素は全くありません。少なくとも主人公が恋愛的な意味で誰かを意識している描写は今の所ありません。
主人公が恋愛関連に疎いのも原因でしょうが、優しく誰にでも分け隔てなく接する主人公の姿勢が母性愛と表現する類の気持ちに由来している原因の一つでしょうか。
そして主人公大好きな気持ちを持て余す周囲の人達がそんな無自覚な主人公に振り回される(主人公視点では自分が振り回されていると思っていそうですが)のがまた面白かったりするので、恋愛要素の無さはこの作品において特にマイナス要素にはなっていないと思います。
この物語はとにかく主人公が愛されている様を見るのが何より楽しいです。もうニヤニヤします。
ストーリーも主人公が愛される・愛されている事を前提として展開されているので、主人公の愛されっぷりを思う存分堪能できます。
愛される事に特化していると言える作品なので好みはあるでしょうが、こういった作品が好きな人にはとことん好みに刺さる作品だとも思います。実際自分には刺さりました。次の更新も楽しみです。
万人にオススメできる作品ではないかもしれませんが、愛されモノが好きな方には強くオススメしたい一作。興味のある方は是非。
作品名: 『お兄ちゃんがお母さんで、妹が甘えん坊なお話』
URL: http://ncode.syosetu.com/n8250ch/
作者: ただのものかき 様
ストレスフリーな愛されものって案外見ない気がするんですよねえ。
ともすればストレスフリー=物語に起伏をつけづらい、になりがちなのもその理由かもしれませんが。
なのでストーリーよりも主人公の愛されっぷりやキャラの魅力を掘り下げる事に重きを置いてくれたこの作品が本当に好きだったりします。