『何故か学校一の美少女が休み時間の度に、ぼっちの俺に話しかけてくるんだが?』 ※現在なろう版削除
この作品に出会ったのは悪役令嬢モノ繋がりで恋愛系もチェックしていた頃にジャンル別日間ランキングに入っているのを見つけたのがきっかけだったと思います。
話のテンポやキャラ同士の掛け合いが良く、それでいて展開的に決めるべきところは決める。そんな緩急のつき具合が心地よい作品です。
【あらすじ】
席替えで学校一の美少女と評判の朝倉さんの隣の席になってしまったぼっちこと安藤(主人公)。
自分と別次元の存在であると思っている朝倉さんの近くに来てしまった事で憂鬱な気分になる安藤だったが、当の朝倉さんは全く別の事を考えていた。
そう、実はこの朝倉さん「ラノベ好き」だったのである。
安藤もまたラノベ好きである事を知っていた朝倉さんは、ラノベ好き同士交流を深めるべくさりげない(?)アピールを開始するのだが……。
……といったあらすじになっています。
主人公の安藤は一人で居るのが好きな系のぼっち。
観察力が高く人の思惑を見抜くのは得意だが、ぼっちを拗らせているせいでそれを活かせない事もしばしば(例:相手がぼっちの俺に好意を持ってくれる訳が無い、等)。
勉強はそれほど出来る訳ではないが数学のみ学園一レベルなど妙にハイスペックな部分がある。
ヒロインの朝倉さんは才色兼備の美少女。
……と思いきや、外見は冷静でも心の中では結構叫んでいたり割と思い込みが激しく一度思いつくと突っ走りがちだったりと、結構ポンコツな面のある残念美少女。
この物語は主にこの二人のやり取りによって展開して行くのですが……作品タイトルと上記した二人の特徴で察しがつくかも知れませんが、二人のやり取りが噛み合いません。噛み合っているように見えても思惑が噛み合っていません。それはもう見事に。
この作品における地の文がその場面に登場するキャラ視点で語られている事もあり噛み合わなさ具合が実に分かりやすいです。
地の文や解説をキャラにさせると語り過ぎになってしまう事も多いと思いますが、二人の噛み合わなさ具合と相まって妙な一体感を生み出しています。
外見上冷静にやり取りする二人なのに心の中ではお互い大混乱。それでもデートっぽい何かをしたり家に及ばれしたりと何故か見た目上の関係は進展していく。
そんなドタバタコメディ具合が絶妙に面白いです。
またこの物語には恋愛ものにありがちな他者からの悪意や暴力要素といった鬱要素が全く無く、安心して読めるというのも特徴だと思います。
そしてこの物語の魅力の一つとして外せない存在として二人の周囲を固めるキャラクターがいます。
実は結構腹黒く計算高い委員長、実は結構腹黒いけど観察力の高さを活かして上手く立ち回っている朝倉さんの親友、実はお兄ちゃん大好きな(本人は否定)安藤妹、ハゲだが良い奴な吉田、ウェーイな沢渡、ウザい山田、不憫なバイトさん、最近見ないフレンズなクラスメイト、実は良い人っぽいクラス担任等々。
後半になるほど適当になっているのは気のせいです。いいね?
ちなみに物語に関わるキャラのほとんどは安藤と朝倉さんがお互い抱いている本当の気持ちを認識しており、陰ながらそれを支えたり応援したりしています。
が、何せ噛み合わない二人なのでそういった気遣いが空回ってしまう事もしばしば。時々友人の方が朝倉さんより(作品的に)目立ってしまう事も。
それでも何故か二人を見捨てずにくっつけようとし続けてくれる友人達。聖人か。
友人達がいなければ二人の関係が進展する事は無かったでしょう(断言)。
そして一部女性キャラには「安藤に気があるのでは……?」と思わせるような描写がある事もあり、なんと番外編として一部キャラとくっついた場合というifストーリーが書かれていたりもします。
本編では二人の関係を中心にしておりハーレム的展開は無いと明言されていますが、お気に入りのキャラにスポットライトが当たる所も見てはみたいもの。そんな気持ちを汲んでもらえる事もこの作品の良い所だと思います。
それと地味に楽しみにしているのが作中に登場するラノベタイトル。
二人がラノベ好きなため度々ラノベのタイトルが登場するのですが、それがどこかで見た事のあるようなタイトルなのです。
あくまでどこかで見た事があるような気がしなくもないというだけで、実在するタイトルではないのですが、なろうでよく小説を読む人であれば思わずニヤリとしてしまう事も多いと思われます。
個人的には1話の半分以上を使って作品の内容まで描写した「劇場版 ソードア○ト・オフライン」が印象に残っています。実際に見たくなるような凝った内容もポイント。
登場頻度は高くありませんが、次はどの作品が出てくるのかと楽しみにしてしまいます。
そんな具合に魅力的要素の多い作品ですが、コミカルなだけではありません。
とある出来事をきっかけにそんな二人の関係に物語の節目となる大きな動きが起こるのですが、その時の二人は今までの噛み合わなさやポンコツ具合が嘘のように思い切りその想いを表に出します。
最初の出会いからそこに至るまでのドタバタ具合も、その裏に秘められていた想いも、それらを経た上で辿り着いたその節目も。自分は、読者は全てを見続けてきました。
だからこそ節目たる出来事に臨む二人の姿が眩しく映る素晴らしい展開となったのだと思います。
これを書いている時点で本編は1章、2章を経て夏休み編たる3章に入っている所。
現在作者さん多忙にて更新頻度は落ちていますが、1話辺りが短めな事もあり逆に今まで読んだ事の無い方は読み始めるチャンスとも言えると思います。
気楽にストレス無く読めるラブコメ。ぜひ噛み合わない二人を見守る気持ちで読んでみて下さい。
作品名: 『何故か学校一の美少女が休み時間の度に、ぼっちの俺に話しかけてくるんだが?』
URL: http://ncode.syosetu.com/n7381dt/
作者: 出井愛 様
読み返しつつ書いていますが、2章ラストの展開は本当に熱いというか胸にきますね…。
やっぱり何故かのは最高だぜ。
あと何気に同作者さんのマサヤシリーズが結構好きだったり(小声)。
2017/9/20追記
最近アカウントが運営削除されてしまったようでなろうでの作品が無くなってしまわれました…。
個人情報なので詳細は伏せますが、不正や規約違反で無くともそういう理由で削除される事もあるのかと思いましたね…。更新を楽しみにしていただけに本当に残念です。
…と思いきやカクヨムの方でスローペースで(?)上げ直しておられる模様。やったぜ。
バックアップが無い(?)部分があるとの事で復活の難しい部分もあるようですが、この作品については向こうで先を楽しみにしたいと思います。