『古武術詐欺師に騙された悪役令嬢は今日も無意味な修行に励む』
最初の犠牲sy……作品はこちら。
確か悪役令嬢モノにハマっていた頃に出会った作品だったと思います。
ちなみに同作者さんの『逃げ足道場』もオススメなのでよろしければ(ダイマ)。
【あらすじ】
少女漫画のような世界観とバトル要素が混じったようなヘンな異世界。
そこで「狂犬」と恐れられる悪役令嬢のグレタは「古武術の奥義」を使うヒロインに決闘で敗れ婚約者を奪われる。
目には目を、歯には歯を。ヒロインの使う古武術の奥義が召喚された異世界人から伝授されたと知ったグレタは、自身もまた古武術の奥義を会得すべくお抱えの召喚士に命じ「古武術マスター」を召喚する。
だが召喚されたのは古武術の事など全く知らないという青年エイジンであった。
しかし多額の報酬に目がくらんだエイジンは召喚をミスった召喚士の弱みに付け込みグレタを古武術詐欺にハメようとする。
異世界召喚と同様に送り返す術も完備されているものの、一度召喚を行うと30日間行う事が出来なくなってしまうため30日間グレタを騙し続けなければならない。
果たしてエイジンは無事多額の報酬を騙し取る事が出来るのか。
悪役令嬢グレタは復讐を成し遂げる事が出来るのか。
どこまでも噛み合わない二人の古武術詐欺(修行)が始まる。
……といったあらすじとなっています。ちなみに本編完結済みです。
あらすじで既にツッコミ所が多いと思うでしょうが実際本文を読むと威力倍増です。
ノリが合う合わないという点はあるでしょうが、平気であれば全編通してツッコミ所満載なのに滑らかな文章でスルスルと読めてしまううえ一話辺りが短めにまとまっている事もあり読み止め時を見失ってしまうかも知れません。
キャラクターとしては主人公のエイジンはごく普通の一般人……となっていますが、召喚されても全く動じず(どころか報酬を提示されて即詐欺を思いつく)、疑いを持たれてもポーカーフェイスで貫き通そうとする不動心を持っており、お前のような一般人がいるかな感じではあります。
ただ言動や思考自体は常識的なため、詐欺(修行)を躊躇わない事を除けば作中随一の常識人と言えるかもしれません。
悪役令嬢たるグレタはよくある悪役令嬢モノの実は良い人なのに誤解されて……とかではなく割とガチの悪役令嬢です。まあ世界観の関係か謀略で裏から嫌がらせを仕掛けて追い込む系ではなく気に入らなかったら即手が出る系ではありますが。しかも強い。
エイジンが主に絡むのが召喚士やメイドな事もあり序盤は結構影が薄かったりしますが、中盤以降のとある出来事から一気に末脚を爆発させ追い上げてきます。大器晩成型ヒロイン(?)ですね。
物語の導入後は、おおよそ
①悪巧みパート(詐欺(修行)の内容決め&物資の調達などの準備含む)
②詐欺(修行)実践パート(言いくるめパート)
③帰宅&就寝までパート
上記流れで1日分となっており、この流れが詐欺(修行)実施期間中続いていく事になります。
①ではお抱え召喚士ことアランくんと詐欺の悪巧みをしたりおちょくったりしながら詐欺(修行)内容を決めたり実践成果を検討したりします。
ちなみにアランくんはどっちかと言うと苦労人&胃痛キャラでありエイジンに協力するのも職を失いたくないという現実的理由からだったりします。うん。そういうキャラの方が弄り甲斐があるって事、あると思います(鬼畜)。
それとこの異世界、中世っぽい導入の割に知識水準は現実世界と大差無く、魔法もあるものの割と召喚が一般的な事のためか携帯電話や車が普通に使える程度には科学技術も発展しています。また異世界からもたらされたという事で現実世界の物は大抵ありますし、現実世界の漫画なんかもあったりします。
この辺詐欺(修行)を行う上で割と重要でその漫画を参考にした詐欺(修行)もあったり。
②では①で考案された詐欺を実践します。
ここでの見所は傍から見て「それはないんじゃないかな……」と思ってしまう様な事を妙な説得力を持って実践させるエイジンの手腕でしょうか。
先に述べたように異世界といえど現代水準の知識は持っているはずなのですが、エイジンは時に煽り時になだめすかしながら最終的に詐欺(修行)に乗せていきます。
平然とした顔で堂々とそんな事をやってのける様はまごうことなき詐欺師(※一般人です)。
③はその日の詐欺(修行)終了後にエイジンが自身の住居たる小屋に戻ってからの話となります。
実の所このパートがこの作品における一番の目玉かも知れません(異論は認める)。
初日からお付きの武闘派メイドが同居する事になるのですがこのメイドとの噛み合わないやり取りが面白い。ただ噛み合わないだけでなく度々熟年夫婦のような一体感を醸し出すのも面白い所。
そして何の思惑があるのかこのメイドが風呂に乱入したりベッドに潜り込んだり(!)と毎晩のように痴女的行動を繰り返すのですが、不能もしくはホ○じゃないのかと疑ってしまうほど冷静に対応するエイジンとのやりとりもまた面白い。
この辺多少下ネタへの耐性が要るかもしれませんが軽快なやり取りがクセになってしまうでしょう。
こうしてドタバタとした日常を送りながら進んでいく詐欺(修行)、徐々に形成されて行くグレタからの信頼(チョロイン疑惑)、毎夜襲い来る痴女メイド、刻々と近付く詐欺(修行)のリミット、痴女メイドとの夜のやり取りを逐一報告され赤面するピュアアランくん。
果たしてこの詐欺はどんな結末を迎えるのか。
これは言ってもネタバレには当たらないと思うのですが、この物語は本編終盤で状況が二転三転する怒涛の展開となっています。
この作者さんは他の作品でもそうなのですが物語を動かす時の思い切りが良いと言うか躊躇せず展開を動かしてくれるので、リアルタイムで終盤の更新を待っていた時はこの先どうなるのだろうとドキドキしっ放しでした。楽しかったです(私信)。
終わり方も読後感の良い実に見事な終わり方であったと思います。
現在は本編終了後のおまけという形でその後のお話が書かれていたりします。
このおまけについては解説すると本編のネタバレに触れかねないので解説できませんが。
(……あれ、そろそろ〆ようと思ったけどよく考えたら好きな事を好きなように書いていただけだから「ぜひ読んで下さい」的な事を言いづらいぞ。どうやって〆たら……いや、ここは素直に行こう)
とても好きな作品で出会えて良かったと思っています。
今後も続く限り楽しみにしていたく思います。
作品名:『古武術詐欺師に騙された悪役令嬢は今日も無意味な修行に励む』
URL: http://ncode.syosetu.com/n6322dn/
作者: 真宵 駆 様
好きなように好きなだけ書けて楽しかった(小並感)。