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02 「ウソも最後まで貫き通せば真実になる」ってばっちゃが言ってた


 まずは『リアリティ=説得力』についてです。


 フィクション作品内世界においては、二一世紀の地球で確認されている法則に従わなければならないなんて決まりはありません。

 魔法や超能力があってもいいわけです。

 ホモ・サピエンス以外の知的生命体がいてもいいわけです。

 未来や過去の世界でもいいわけです。

 忠実に現実と同じである必要はありません。


 でも、『現実みたいに思えるウソ』である必要はあります

 前の項で書いたように、「ウソつくなら上手いウソをつけ」と。


 それに必要なのは、説得力や信憑性です。

 偽薬(プラシーボ)効果を誘発させる言葉。


 これは漠然とでも、小説の書き方として理解している人も多いのでは?



 ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○



 説得というのは、無理を押し付けて相手を思い通りに動かすことではなく、相手に納得して行動してもらうことです。

 だから説得で一番やってはいけないことは、「結論だけを述べて押し付けること」です。


 「リアリティがない」と批難される作品、よく当てはまります。

 読者の常識ではそうでも、作中世界の常識ではこうだから。

 それで終わり。

 読者は納得しろと言われても、納得なんてできるわけないのです。

 思春期の頃、親にこうしろああしろって言われて、反発したでしょう? それと同じです。

 そういった作品の作者は、致命的な部分を勘違いしているわけです。



 ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○



 上手いウソと下手のウソの違いを考えると、おおよそ『作り込み』という結論に落ち着きます。

 例えば……倫理的によくないシチュエーションでしょうけど、恋人や奥さん・旦那に浮気がバレかけて、「同性の友達と会っていた」とウソをついたとしましょう。


 下手なウソをつく人は、相手も知っている実在の友人を挙げるか、あやふやな架空の人物を思い浮かべます。

 実在する人物は、その人に確認すれば、すぐバレます。

 架空の人物は、質問されると、答えれなかったりあやふやな説明を重ねるので、すぐバレます。


 しかし上手いウソをつく人は、質問を重ねても、架空の友人が実在の人物であるかのように答えます。

 身長・体格・髪形・顔の作り・性格は、質問されてもすぐに答えれます。

 それは『実在する人物』だから。例えばその時テレビに映っていた芸能人のことを話しているから。

 どういう関係性か、問題ない範囲であると、質問されれば説明できます。

 学生時代に実在した、本当の友人との関係だから。

 すぐに連絡ができない理由も説明できます。

 先月ドラマで見たシチュエーションだから。


 このように、『事実』でウソをつくのです。

 真実ではないけど、完全な虚構でもない。

 当然説得力も信憑性も出てきます。



 物語も同じです。

 ただ設定を羅列するのではなく、現実(リアル)を混ぜて作りこむことが、最良のウソ(フィクション)なのです。

 混じり気なしのウソ(ノンリアリティ)で作ろうとするから、「リアリティがない」と批難されるのです。



 ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○



 更に、「リアリティがない」と批難される作品は、明るい要素とそうでない要素が同居している作品に多いです。

 ライトノベルならば特に、日常的な場面はコメディタッチに、そうでない場面はシリアスに、といった作風が多いですが、数の問題という単純な話ではなくて。

 構造的に、リアリティを欠如させやすいのです。文筆初心者なら尚のこと。


 わかりやすい例を作ると。

 ギャグシーンでは、キャラクターはどんなひどい目に遭っても、死にはしません。

 頭蓋骨が陥没骨折する勢いで殴られても、タンコブができるだけ。

 吹っ飛ばされて星になっても、次のシーンには何事もなかったかのように戻る。

 激突死確実な高さから落ちても、地面に人型の穴が空いたり、一時的に平べったくなっただけで無傷。


 死んだら性質(たち)の悪いブラックジョーク以上にはならず、深刻化させればギャグとして成り立ちません。

 「現実にはありえない」なんて言われても、「ギャグだから」で充分です。ギャグに現実を持ち込む人のほうが野暮です。


 リアルではなくても、リアリティはあるのです。

 冒頭で出した『リアリティ成分』が80くらいでも、作中世界がそのように設定されているなら、キャラクターたちの言動も80で「リアリティがある」のです。

 現実離れしてても許される、土壌が作り上げられているからです。

 この辺りは次の項の説明になります。



 しかし、同じ作品内の、後半。

 誰かが頭蓋骨陥没骨折したら?

 敵を宇宙まで吹っ飛ばして塵と化したら?

 高所から落下して死んだら?

 「さっきと違うじゃん」とツッコまれます。


 こうなったら悪いのは作者です。

 前半はリアリティ成分80未満の誰も傷つかない平和な世界だったのに、後半になるとリアリティ成分95オーバー簡単に人が死ぬハードボイルドワールド。物理法則というより、作中世界が都合よく変化しているわけですから。

 どちらがその作品世界にとっての『現実』なのか、読者にはわからないのです。


 ウソ(ギャグ)やりたいなら、最後まで全力でウソ(ギャグ)を貫くべし。

 リアル(シリアス)やりたいなら、最初から常識範囲内の倫理と物理法則で明るい雰囲気を作るべし。

 そこどっちもやろうと半端にするから、「リアリティがない」と批難されるのです。


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