第9話 「勇者」から「魔王」へ
事の発端の「魔王」は本当に身勝手だな〜と改めて思いますね(笑)
「勇者」と「魔王」の両立には色々と(無駄に)制約があるみたいですよ.....
とある魔王が暇潰しに始めた『異世界観察』
それは、誰か1人を別世界へと転移させるというものだった.....
転移させられたその者には『2つの役割』が与えられる。
1つ目は『勇者』
平和のために戦い、魔王を討つ事を目的とする者。
2つ目は『魔王』
破壊と征服のために戦い、世界の崩壊を目的とする者。
普通では決して交わる事の無いこの2つの役割。
しかもその役割は、観察している魔王の気まぐれで強制的に入れ替えられる。
これだけでも十分に無茶苦茶であるにも関わらず、その魔王は更なる制約を作った。
『勇者』と『魔王』。この2つの役割が移る時
強制的な記憶の操作が行われる
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勇魔「............えーっと」
冷静になればなるほど状況を理解する事ができない。
勇魔「ここは...........どこだ?.............」
とにかく広い。1番最初に感じたことはそれだった。
だだっ広い空間にただ1つ玉座のような椅子が鎮座しているのだ。
しかもその玉座らしき椅子に自分が座っているのだから余計に訳が分からない。
加えて今いるこの空間は全体的に薄暗く、紫色の不気味な光がまるで玉座の影を伸ばすためだけに部屋全体を薄く照らしているようだった。
勇魔「これじゃまるで........」
と、言いかけたところで扉をノックする音がこのだだっ広い空間に響き渡った。
勇魔「...ッ!?なんだかよく分からないけどとりあえず隠れた方が良い気がする!」
本能的にとりあえずどこかに隠れようとする
.......が、生憎にもこの部屋には玉座以外に目立った物が存在しなかった
隠れる場所が分からずとりあえず玉座の後ろに身を隠す勇魔
身を隠すとほぼ同時に部屋の扉が開かれ、誰かが中に入ってきた。
???「カスデ・ノルイテシ・ヲニナ・マサ・ウォーマ」
聞こえてきたのは女性の声だった......
玉座の後ろから少しだけ様子を覗いてみる....
???「マサ・ウォーマ」
勇魔「.........もしかして.....俺?」
先程から話しかけてくるその女性は一見するとモデルか何かかと思うほど抜群のスタイルの持ち主だった。スラッと伸びる長い足にくびれたウエスト、巨乳とまではいかなくとも十分なサイズを誇るバスト、そしてミディアムショートの髪は濃い紫色でこの部屋の雰囲気に近いオーラのようなものを感じさせている。
そんな中、特徴的だったのは切れ長の目つきだった。ドラマやアニメでたまに見かける『真面目な秘書』みたいな印象だった。その印象を裏付ける要因として、先程から話しかけてくる女性の手には何やら資料のような物が脇に抱えられている。
勇魔「......なんて言ってるんだろう?」
少し見惚れてしまった勇魔は玉座に隠れる事を忘れ、思った事を口に出していた。
理解できないまま話が進んでいく。
???「タシマシ・リョウンカ・イーハテ。」
勇魔「......??」
やはり何を言っているのかサッパリ分からない。
こちらに対して何か尋ねているようだ.....
とりあえず適当に相槌を打ってこの場をやり過ごそう。
勇魔は身振り手振りも加えてとにかく笑顔で頷く。
すると...........
???「タシーマ・リマ・コシカ。ニグス・マイ・ハデレーソ。」
そう言ってこちらに対し一礼してから入口へと向かう。
そして、部屋を出る前にもう1度頭を下げてから部屋から出ていった.....
勇魔「......なんだったんだ?....何を言ってるのか最後まで分からないし.......」
などと、途方に暮れていると.......
???「マサウォーマ!!ヨタキ・ニビソア!!」
突然部屋の扉が強く開け放たれ、先程とは違う女の子が駆け込んできた。
勇魔「うぉ!?今度は何!?」
突然の来訪者に当然だが驚く。
???「ヨダ!!メイム!!!」
勇魔(次から次と何なんだ.....)
勇魔(しかもこの子も何を言ってるのかサッパリだし.....)
???「...?.....ヨダ!!メイム!!」
そして突如として現れた少女はいきなり抱きついてきた!
勇魔「うぉ!?ちょっと待って!初対面の人に急に抱きついたりするのはマズイよ!?」
その少女は本当に「少女」という言葉がピッタリだと勇魔は感じた。歳は明らかに自分よりも年下で、その無邪気というか天真爛漫な性格は見ただけで十分に分かる。外見も幼く、身長は恐らく勇魔の胸元くらいまでしかないだろう。薄紫色の髪はツインテールで、この髪型がこれまたよく少女に似合っていた。
元気一杯な少女をびっくりさせないように気を付けながら、慎重に体から引き離す。
???「....??」
なぜ引き離されたのか理解できない、と言わんばかりの表情の少女の頭を撫でながらゆっくりと話しかける。
勇魔「えっと...俺の名前は『ゆうま』って言うんだ。君の名前は?」
ダメ元で少女に話しかける。
もしかしたら通じるかも、と思ったからだ。
???「マサウォーマ!!キスイーダ!!」
再び少女に抱きつかれ、勢い余って尻餅を着いてしまった。
勇魔(うん、まあこうなる気はしてた....)
もうどうしようもない状況に途方に暮れると同時に、『言葉』のありがたみを深く感じる勇魔だった...
勇魔(夢か?これは全部夢なのか?だとしたら俺はこんな幼い少女に抱き着かれたいと思っていることになるぞ?)
そう考えてしまうのも無理もない程、今のこの状況が謎だった。
勇魔「俺は一体どうすればいいんだ...」
それは今の勇魔が心の底から思う事だ。
部屋の広さに比例して天井の高さも相当なこの空間で...
果てしない高さの天井を眺めながら、大きく溜め息をつく勇魔だった.....
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作者への質問コーナー!
Q. 勇魔にやたらと抱き着いていた少女(幼女?)と秘書風の女性の名前はいつ明かされるのでしょう
A. 名前はすぐに出てきます。感の鋭い方はお気付きかもしれないですが、その2人は姉妹です。