第7話 着信相手は........
異世界なのにスマホが繋がる!?
まあ確かに使えたら便利ですよね.....
ピロリロリ〜ン ピロリロリ〜ン ピロリロリ〜ン
なんの前触れもなく王宮内に響くどこか気の抜けたメロディ。
勇魔「うぉっ!!ビックリした!...って携帯繋がるの!?」
ここが異世界である事が分かった時点でスマホが繋がらない事は理解していたつもりだった...
だって電波なんてあるわけがないのだから...
ところがその予想に反し、今まさに勇魔のスマホは気の抜けたメロディを奏でていた!
セリア「(な....なぁ、ユーマ?....その鳴ってるやつって......お...お前のか?)」
いつの間にか数メートル程先に移動したセリアが尋ねる。
普段であれば語尾に感情がダダ漏れのセリアが今だけは普通に話している......
どうやら着信音に驚いてしまったようだ...
勇魔 (.....ビビってるセリアも可愛いな.....)
なんて事を考えながらスマホの画面へと視線を向ける。
そこには...........
『 』
と表示されている。
つまり名前が表示されていないという事だ。
勇魔「..................どゆこと?」
ゲームは始める前に終わってるパターンの人だろうか?
...........それはないな
知り合いでもない、非通知でもない、名前が表示されない
こんな経験は初めてだった。
勇魔「.......もしもし」
とりあえず着信に応じる。
勇魔「......................」
無言。
何も聞こえない。
勇魔 (なんだ?悪戯電話か?)
そう思って電話を切ろうとしたその時...
電話口「.........クメ.........ラメ.........ロセ」
電話口から微かだが何かが聞こえてくる
勇魔「あ!何か聞こえ..................」
微かに聞こえるその声を聞いた途端
勇魔の顔から表情が消えた......
そして体も不規則に前後左右にゆっくりと揺れ始めた...
ルミナ「(ユーマさん?....大丈夫ですか?)」
真っ先に異変を感じ取ったルミナが勇魔のもとへ駆け寄る。
ルミナ「(ユーマさん?聞こえますか?ユーマさん!)」
すると........
勇魔「.....うぉぁ!?ルミナ!?どうしたの急に!?」
いつの間にか表情や仕草が元に戻っている勇魔に逆に驚かれた。
ルミナ「(どうしたのじゃないですよ!ユーマさんが急に.....)」
ついさっきまでの事を説明するルミナだったが.......
勇魔「(え....なにそれ全然憶えてないんだけど...)」
その事を勇魔は全く身に覚えがないと言った....
ルミナ「(そんなはず......)」
と、言いかけた所でサルヴァが間に入った。
サルヴァ「(それでユーマ、その端末からは何か聞こえるのかい?)」
サルヴァの介入により、ユーマの異常に関しての追求は一旦中止となった.....
勇魔「(いや...それが.....何も聞こえなくてさ)」
感じた事をありのまま話す勇魔。
その返事を聞いたサルヴァは.....
サルヴァ「そっか.....ところで...1つ聞いてもいいかな?」
勇魔「(いいよ...俺に答えれる事なら遠慮なく聞いてよ)」
と、サルヴァの申し出を快く了承する
サルヴァ「(今見ていた感じだと....それは通信機か何かかい?)」
どうやらサルヴァは勇魔の持つスマホに興味を示しているようだ。
勇魔「(その認識で大丈夫だよ...遠くに離れた相手とこれを介して話したりメールを.....あ、手紙みたいな物も送れたりするんだ)」
説明し出すとキリがないため、勇魔はとりあえず最低限のスマホの説明をする.....
この時に勇魔は気付くべきだったのかもしれない.....
.................ここが圏外であるという事を
サルヴァ「(へぇ、面白い道具をつかうんだね.....)」
スマホに興味を示すサルヴァの隣には、先程の事をずっと気にしている様子のルミナがいた。
サルヴァ「(...おっと、それじゃあそろそろお喋りは一旦やめにして......ユーマ、君に案内しなくちゃいけない所があるんだ、着いてきてくれるかな?)」
勇魔「(案内?....どこそれ?)」
サルヴァ「(僕達、勇者兵団が生活をしている所さ....今日から君もそこで生活しなくちゃだからね)」
サルヴァに言われて勇魔は改めて自分が本来とは異なる世界に来てしまっている事を実感する.....
勇魔「(....よく考えたら、俺もしかしたら見知らぬ世界で野宿する可能性もあったのか......それ考えたら何か怖いな)」
サルヴァ「(確かにそうなる可能性もあったかもしれないね)」
そうして話しながら目的地である勇者兵団の宿舎へと歩き始める
歩き始めてすぐに.....
ルミナ「(ユーマさん、本当に何も異常ありませんか?)」
ルミナが心配して再び声をかけてきた
勇魔「(うん、特に無いとは思うよ....ありがとう。ルミナは優しいんだね)」
本当に何も異常がない事を伝える.....
ルミナ「(いえ、私なんて....それなら良いのですが)」
ようやくルミナも納得してくれたようだ。
その後も4人で和気あいあいと話しながら目的地へと歩みを進めるのであった.....
セリア「(やっと帰れるー.....あーもう今からベッドが待ち遠しいー..............お腹減ったー....)」
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魔王城最上階
魔王の配下「えーっと、魔王様?1つお聞きしても?」
魔王と並んで、勇魔達をずっと観察していた配下が尋ねる
魔王「なんだ?言ってみろ」
配下「はっ.....魔王様?あのー、我々は見てるだけなのでは?」
配下の言いたい事を理解する魔王.....
魔王「分かっている....しかしあれはやむを得んのだよ」
『あれ』とは、魔王が勇魔のスマホに電話をかけた事だ
配下「やむを得ない.....のですか?」
理由が分からず首を捻る配下
魔王「まあ、今この場で説明してやっても良いが、このまま見ていればすぐに分かるであろう」
配下「さすが魔王様!常に先を見据えるその計画性!流石でございます!」
理由は分からなかったがとりあえず魔王を褒めちぎる配下
魔王「ふむ....この私の期待を裏切らないでくれよ?」
そう言って大きな水晶を見つめる魔王の表情には、不気味な笑いが浮かび上がっていた.....
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作者への質問コーナー!
Q. あなたは見知らぬ相手から着信があった場合どうしますか?
A. 普通に無視すると思います(笑)