3.不死者
衝動故の不定期…大きく期間が開いてしまいました。
描写も、僅かに変化があると思われます。
「っ、だ…誰っ!?」
口から飛び出たのは震えた声。
人影かな、ならば安心する…筈なのに、全身に氷を押し付けた様な嫌な感覚が襲う。
ボクが四肢の先まで震える理由は分からない、もしかしたら、"直感"…かな。
そんな思考を巡らせながらも床を踏みしめ、素早く立ち上がる。
直後、部屋へ差し込んだ影の主が、視界へ踏み入って来た。
「ヴぁああ”ぁぁ…」
…それは辛うじて人型と言える。
だが、決定的にそれは違った。
半壊した頭蓋、ぽっかりと開いた一つの穴。
そこには本来あるべき右の瞳は存在せず、ドロリと赤い涙を垂らす。
視線を下げればその先も異様、身体の所々は抉れ、腐食している。
当然、恐れない訳も無く。
「ひっ、く、来るな!来るな来るな来るな!来ないで!」
壁に背中を押し付けながらも、尚ボクは後退しようとする。
嫌な汗が噴き出て止まらない、思考がグルグルを渦巻いて散っていく。
胸元から響く心拍が、これを夢だと思い込む事すら許さない。
ひたすら流れ出る懇願を、よく見れば男のように見えるその化物は、当然聞き遂げる訳も無かった。
獲物を見つけた歓喜のような呻きを上げ、片足を引きずりながらも跳ねる様に距離を縮める。
化物との距離はそう長くない。
その長くない距離が無くなった時、きっとボクは死ぬ。
悟りながらも、何も出来ない、死しか見えない。
…等と一瞬思考出来た時、後退を拒み続けていた感覚が、突然失われた。
風切音、直後に夜空が視界に映ると同時、何かが背中を打ち付けて、肺の中の空気を幾らか叩き出す。
あぅっ、と情けない声を出しながら顎を引けば、
廃墟の壁に開いた穴に自分の足、その向こう側に化物が映った。
……壁が運よく崩れたらしい。
「運が良か…違、逃げ…っ!逃げないと!」
自分に言い聞かせるようにしながら、急いで立ち上がり、昔は石畳で綺麗に舗装されていたのであろう、
今は所々ひび割れ崩れた道を駆ける。
化物との距離は、離れた。
なのに身体の震えは強まり、膝は崩れてしまいそうになる。
…無理も無い、何せ、立ち上がった際には幾つも目に入ってしまったのだから。
この廃墟を彷徨う、大量の 死 が