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黄昏超えて  作者: うぃんどみるく
2/5

2.進まぬ状況

突然、知らない場所へ現れて、数分のパニックに陥り…それで現在。


「………誰かー、誰か居ない?」


…声を上げながら、石畳の道に足音を響かせる。

視界の端へ、ゆっくり建物が消えていくけれど、声を返すことは無い。


どうしてこんなことをしているかと言えば、ただ単に、一人だと不安だったって事がある。

誰かここを知っている人はいないのか、そんな願いを心に秘めながら、呼びかけ続けるけれど…


「駄目…かなぁ…」


そう呟いてしまう。

…ボクの声、こんなに震えてたっけ。






「何のうめき声…いや、声か?…流石にここを選ぶのは失敗だったな、金目のものなんぞまるで見当たらない」


遠くから聞こえる、意味の分からぬ声に警戒を固めながら、私は廃墟探索を続ける。


…アンデッドにしては活動が始まる時刻が、早いが…

あぁ駄目だ、夕暮れの端に星が見えて来た。


ひっくり返した瓦礫を倒しながら、空を見上げる。


「……引き上げるべきか」


そう呟く彼は、此処では冒険者と呼ばれる存在だ。

魔術と剣技の両方を会得しており、年季の入った武具を身に着け、

青く長い髪を揺らす長身の彼がここに居る理由、それは単純な廃墟探索。

夜にはアンデッドの闊歩するこの廃墟は近場では有名であり、安全な時間帯に金目の物…遠い昔の住民の遺物を回収する。

今回は、ある腕輪の回収を依頼されていた。

この廃墟以外でも産出されたという情報はあったが…近いからと、怠けた結果がこの収穫0である。

依頼品以外の取り分もありはしない。


「む…」


さて引き上げようと、振り向き数歩進んだ時。

視界の先で虚空が揺らめき、人型を取り始めた。


「ゴーストか?」


ゾンビやスケルトンならまだ良かったのだが…などと言う願望も意味無し。

アンデッドへも有効な魔術などと言う貴重なものは、当然心得てはいない。


そう思案する内に人型は青白い色を持ち、こちらに怨みを込めた視線を向けた。


…それより、もうアンデッドが起き出す時刻か…目の前のゴースト含め、急いで駆け抜けるしかない。






「…この状況ですすり泣くなんて…情けない…」


適当に入った建物の中、部屋の隅に蹲りながら目元を拭う。


…多分、ちょっと赤くなってるんだろうなぁ…


そう思いながら、改めて部屋の中を見回した時、外がもう大分暗い事に気が付いた。

部屋の中にはボロボロの机に椅子くらいしか見受けられなくて、この辺りに本当に、人は居るのだろうかと不安になってしまう。

何処かに穴でも開いているんだろうか、風が冷たくて、何度か身を震わせていた。


あぁ、泣き疲れちゃったのかな…段々…眠く…


瞼に眠気がのしかかる。

雪山で寝たら死ぬって言うし、此処は寒いけど…此処は山ではなさそうだから、大丈夫…だよね?

そう考えていたけれど



───ふいに部屋の中に影が差した時、そんな眠気と考えは吹き飛んだ。

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