突然の終わり
──ああ、これが死ぬって事なのかな。
僕の名は高崎蓮。
とある地方都市の公立高校に通う17歳の男子高校生だった。容姿も頭脳も普通、何かのめり込めることも、これといった特技もなく自分を代わり映えのない人間だと自覚していた。
そしてこれまでもこれからも普通の人生を歩むと思っていた。
そう思っていた……
現実では一瞬の出来事だった、しかし僕には数秒にも数十秒にも感じられる時間だった。
いつものように学校を終え、季節がらそれなりに早い時間でもかなり薄暗くなってきた下校の途中、横断歩道で信号を待っていたところトラックが突っ込んできたのだ。
そのほんの数秒前、向こうから一台だけ来るトラックの様子がおかしいと感じていた。速度の緩急があったり、ふらついた動きだったり、おそらく居眠りでもしていたのだろう。
しかしそう感じてはいても、突然急カーブをしたその車体を当然避けられるわけもなく僕の体は宙を舞った。
跳ねられた瞬間、自分の骨が割れる鈍い音をはっきりと耳にし、地面に叩きつけられた体から絨毯のように血が広がった。不思議と痛みはなく、意識ははっきりしていたが指先ひとつ動かせず、ただ横たわるのみだった。
やがて冬のアスファルトの冷たさも感じなくなっていき、自分が死にゆくことを予感した。家族や友人、今までの人生がかすかに脳裏に浮かぶ。
……もうそのことを考える気力もなくなってきた。もやがかかったようだった視界が徐々に暗くなり、自分の体が浮いていく気がした。
何か特別なことをしたわけでもない。ただ生きていただけの……僕の人生はここに終わった……はずだった。