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目先と未来について話してみよう

「ふー。今日は随分と冷えるね」

「あら、いらっしゃい。その様子だと外は随分寒いみたいね」

「ああ。つい最近までは、まだ秋物でも大丈夫だったんだけどね」

「それにしても着込みすぎよ。それじゃあ本格的な冬が来たらどうするつもりなの?」

「その時になったらその時に考えるよ。あまり先のことは考えても仕方ないしね」

「また興味深いことを言うのね。じゃあ、あなたは自分の未来に興味がないとでも言うつもり?」

「それはまた極端な解釈をするね。僕だって明日の予定ぐらいは考えているよ。ただ、それ以上先の未来には興味がない」

「そう、私としては理解できない考え方なのだけれど。未来があるからこそ、今を生きているっていうんじゃないの?」

「マスターの言ってる事に間違いはないよ。でも、不確定な未来に備えるのも馬鹿らしいじゃないか」

「不安定な未来を安定させるために、私は今を紡いでいるのだと感じているのだけれど」

「それも正しい。でも考えてみてよ。極端な話、明日自分が生きているなんて保証は何処にもない」

「それを言いだしたら、この話自体が成り立たなくなるじゃないの」

「僕の言っていることは基本が極論だよ。あくまでこれは僕の考え方だ」

「だからといって、おいそれと無視できるわけがないじゃない。もっと話を聞かせなさいな」

「僕の生き方に興味を持ってくれるなんて光栄だね」

「ふざけないでちょうだい。ほら、とっとと話しなさい」

「僕はね、自分の生にそこまで執着がないのかもしれない。それほどまでに目先の利点に目を奪われる」

「それは心理として当然でしょうね。手が届くなら、届く間に手を伸ばす」

「そうだよ。僕はそれをこじらせ過ぎた。有り得ないかもしれない未来に空想するよりも、手が届く幸せに価値を見出すんだ」

「分からなくはないけど、何だか嫌な話ね。まるで、自分が明日この世界にいないかもしれないと言う風にも聞こえるわ」

「何だ、マスターは明日、僕がこの世界からいなくなったら悲しんでくれるのかい?」

「馬鹿を言わないで。貴方は私を氷の女だとでも思っているのかしら」

「まさか。マスターが氷の女なら、この寒い時期にわざわざここまで足を運んじゃいないよ」

「はあ。ここまで見事に返してくるなんて。貴方、本当に意地の悪い人ね」

「そう怒らないでよ。とりあえずマスター、目先の利点を選ぶ僕としては、マスターの煎れた暖かい珈琲を飲みたいと思ってるんですが」


「よくそこまで口が回ること。もう少し待ちなさいな。いくら目先の利点に惹かれるとはいえ、そこでお望みの物が出来上がるのを待つのもオツなものでしょう?」

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