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あらためてサンキューな話をしよう

「先日友人から手紙が届いたの」

「うん、マスターに友人と呼べる誰かがいたことに僕は涙が出そうだよ」

「話の腰を折らないでちょうだい。私は昔から狭く深い人間関係を心得ているの」

「客商売には向かない性格だね。ああ、でもそれでこそ僕の知るマスターだ」

「貴方、いちいち何か言わなければ気が済まないのかしら」

「もちろん、黙れと言われれば黙れる人間だと自負しているつもりだよ」

「だから、その言葉自体が不要なのよ。まったく……」

「ごめんごめん、で……手紙が届いたって話だったね。内容としては「幸せの御裾分け」ってところかな?」

「そのくせ目敏いその性格が無性に腹立たしいのは置いておいて、おおよそはその通りよ。「私達、結婚しました」ですって」

「おめでとうと素直に口に出来ないかい?」

「あら、貴方、本当に私を見くびっているのね。これでも人の幸せを喜べる余裕は持ち合わせているつもりよ」

「見くびっているつもりなんかないさ。ただ、事実として確認したかっただけだ。それで、その素晴らしい人柄をお持ちのマスターは何をもって不服そうな顔をしているのかな」

「言い方にやけに棘を感じるわね。あなた、私のことが嫌いなの?」

「まさか、そんな言葉が僕の口から出るわけもない」

「……ストレートな物言いもNGよ、自重なさい。とにかく私が言いたいのはもっと単純なことなの」

「どうぞ、続きを」

「人の幸せが自分に返るなんて、そんな戯言に酔いしれるつもりはないわ。でも、ふと思ってしまったのよね。身近なもので、それでいてそれが当たり前になってしまうものって、実は本当に感謝しなければならないものなんじゃないかって」

「哲学的でもあり理に適った考え方でもあるね。それは、離れれば離れるほど、ありがたみが分かるものと同種の意味だ」


「そうよ。だから何て言ったらいいのかしら……。とりあえずはそうね、あらためて貴方にサンキューってことよ。それだけ!」

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